とまり木 常盤木 ごゆるりと
ひねもすのたのた
さかまわしでやりなおせそうにもないけれどそんな計画
少しのんびりすると、ひどい罪悪感に見舞われます。
がんばらないと。がんばり、つづけないと。
とはいえ、細く長くが目標で。
そもそも体力そんなにありませんからね……。
スタートダッシュで燃え尽きてしまっては、お話になりません。
時間を決めて、予定を立てて、きっちりと。
油断、怠慢、することなかれ。
しかし今日はちょっと時間ができたわーいと思ったのですけれど。
そうだった姉のところのあかちゃんさん春から保育園だった! となりまして。
生地を裁ったままのお食事エプロンのため慌ててミシンを踏んで。
先日、バイアステープやら糸も揃えたところでしたのに。
もう日がありません。いそいでいそいでー。
七割がたほど縫えたので、あとは脇まわりを処理したら出来上がりです。
この作業で二時間半が消えました。嗚呼。
手際の悪さどうにかならんかしらと思いつつ、お話は三十九個目。
なかなか本文に手をつけられないので、設計図見直しを始めました。
長くなりすぎて迷走し頓挫してしまった、お話を……。
がんばらないと。がんばり、つづけないと。
とはいえ、細く長くが目標で。
そもそも体力そんなにありませんからね……。
スタートダッシュで燃え尽きてしまっては、お話になりません。
時間を決めて、予定を立てて、きっちりと。
油断、怠慢、することなかれ。
しかし今日はちょっと時間ができたわーいと思ったのですけれど。
そうだった姉のところのあかちゃんさん春から保育園だった! となりまして。
生地を裁ったままのお食事エプロンのため慌ててミシンを踏んで。
先日、バイアステープやら糸も揃えたところでしたのに。
もう日がありません。いそいでいそいでー。
七割がたほど縫えたので、あとは脇まわりを処理したら出来上がりです。
この作業で二時間半が消えました。嗚呼。
手際の悪さどうにかならんかしらと思いつつ、お話は三十九個目。
なかなか本文に手をつけられないので、設計図見直しを始めました。
長くなりすぎて迷走し頓挫してしまった、お話を……。
『扉そちこち駆け上がり』
がらんとした寒々しい食卓に頬杖をついて、女性は夢と現の狭間をうろうろと行き来する。顔色が悪いわけではないものの、うっすらと面を刷くように覆う疲労の色は、無視するにはいささか濃すぎる。
寝巻きに薄い上着を一枚羽織り、やつれた様子でまどろむ女性は、こんな火の気もない台所で眠るつもりなど全くなかった。それは女性の前に置かれたマグカップからも明らかで、最初は温かな湯気を立てていただろうに、つい瞼を下ろしてしまった少しの間にぬるくなってしまっている。とはいえ、今の女性はホットミルクの名前を失いつつあるミルクのことに、ちっとも気づけないでいた。
幼い子供を寝かしつけるのに、今夜はすっかり苦戦してしまった。なかなか眠ろうとしない小さな男の子へ寄り添い、囁くように語りかけ、ぐずりだしたら子守唄を、それで駄目ならお伽話を。あらゆる手段を尽くして夢の国へと誘い出そうと試み続け、ようやっと静かな寝息が安定してくるのを確認して、やれやれと女性は息を吐いた。
重大な仕事をやっつけた気分で、一休みしようと女性は音を立てないよう細心の注意を払ってドアノブを回し、階段の軋みにひやひやしながら爪先立ちで下りた。子供部屋から台所へ移動して温かな飲み物を確保し、硬い椅子へ腰を落ち着けた途端、どっと疲れが押し寄せてきた。
日々はとても充実している。家族や周囲の助けはあるし、幼子は愛しくてならない――常に天使というわけにはいかないけれど。ただそれは当たり前のことだと理解している、全てが大人の思い通りになる子供がいるのなら、是非お目にかかりたいものだった。
とはいえ、一日中元気に立ち働いて家の中を動かし、育児に買い物ご近所づきあいとあらゆることへ気を配り続けていれば、疲れの溜まらないわけがない。たとえ、へたりこみそうな心を元気づけてくれる、満足感や達成感があるとしても、盛んに動き回れば体は疲れて重くなるのが道理だった。
自分自身の時間など、ここ数年ろくに取れていないし、そもそも睡眠時間の確保すら難しいときている。常に誰かのため、と働いているようなものだった。だから、つい。日常の中で、ふと生じた小さな空隙を軽やかに縫って眠気が忍びこんでも、抗うことは難しい。より深みへ女性を誘おうと、睡魔がずるりと手を引き、眠りの縁へ足を踏み出させようとする。
と。
「起きてるよー」
何か柔らかい、鞠のようなものの落ちる音が、背後の階段から響いた。同時にどこか間延びした、聞き覚えのある気がする声も。
角のない、どこまでも円い口調にはっとして、女性は意識を急速に手元へ引き戻すと睡魔をなぎ払い、頬杖から顔を起こす。遠い記憶のどこかを、甘く引っかかれるような感覚に見舞われながら勢いよく振り返ると、階段をのんきに跳ね落ちる黄色く円い影が一瞬見えた。
その姿に女性は思わず目を大きく見開くものの、階上から微かに聞こえた細い泣き声に、慌てて立ち上がる。誰が漏らした、どういう意味あいの声なのかなど、考えるまでもなかった。室内履きを蹴り飛ばしそうなほど足を急がせ、階段を駆け上がる最中、ふと思い出して女性は階下へ振り返る。
「ありがと!」
最初に誰かの声が聞こえてから、ものの数秒とは経っていないのに、親愛なる夜の友人はもう、影も形もなかった。
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