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とまり木 常盤木 ごゆるりと

ひねもすのたのた

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わたしの計画はきっと風に乗ってはばたかない


はふ。今のうちに、書けるだけ書いておかねば、ですのに……。
予期せぬ事態やら何やらで、すっかり感覚が狂ってしまって。


母がカゼで寝こんだため、全ての家事をこなさなくてはならず。
ほんと四人分の食事とか量の加減が分かりません。
あれやこれやとてんやわんわでした……やれやれ。
数日ぶりに、きちんと、自分の時間を持てた気がします。
なんて贅沢なのかしらと改めて感じ入っています。

断たれてしまうと、繋がりたくなる不思議。
つまり、書けないでいると、書きたくなります。
おかしなもの。あまのじゃくですね。
けれど、体の内からじわじわとしました。
ああ。書きたい。と。

もうあまり時間がありません。
そろそろわたし別のことにかからなければならなくて。
いえ、時間の捻出なんて、努力次第でどうにかなるもの。
ようは挑むにあたっての心構えなのでしょう。
書くことと、並行して頑張ることは、できるはず。
……そうでなくとも来月末からは惑星ミラの開拓が始まります。
もう多分わたし削れる時間て睡眠時間くらいなのでは。
ううん大丈夫。意気軒昂としていれば、眠気なんてこないのですよ。
初日はどうにかお休みもぎとったので久方振りに徹ゲーの構えです。
どうぞ、かかっていらして。迎え撃たせて頂きます。

とにもかくにも話のそれかたも酷いですね。
ええ今に始まった話ではありませんね。
ミラの開拓までに、五十個までいけているべきでしたのに。
この習作百話ときたら、まだ、三十五個目。









『揺り籠を発つとき』

 畳に横たわる座布団は、敷かれているのか投げ出されているのか、実に絶妙な配置がされている。少なくとも、その上へぽすんと落ちてきたこぶたにとっては、そう見えた。しかし座布団に限らず、ぶーちゃんIIが訪れた少女の部屋は全体的に、広げているやら片づけているやら判断に悩む状況になっていた。
 机の上にはびっしりと細かい文字の書きこまれた覚書が、両手の指では到底追いつかないほどの枚数で、散らかっている。その傍らには電源の入ったノートパソコンが開かれているものの、キィを叩く指の主を正面に欠いており、文章ソフトが白紙の画面を晒したまま佇む。マウスを取り囲むように置かれているのは、こちらも白紙の原稿用紙がきちんと重ねられて数枚、ほっぽらかされた万年筆や鉛筆といった筆記用具類。そして分厚い辞書の側には、なぜか小壜へ几帳面に小分けされている、多量のチョコや飴やキャラメルたち。
 雑然と整然が仲良くまじりあう机の上は、一言でまとめると結局のところ、乱雑だった。室内の無秩序な気配に拍車をかけるのは、開けっ放しになっている押入れのふすまや、半分だけ中身を現しているタンスの引き出し、そして畳に敷かれた布団の上で、多数の本に埋もれる桃代の姿だった。
 円い友人の来訪を、座布団の音から察したのだろう。少女は目元へ乗せていた腕をのろのろと下ろし、覗いた両眼でこぶたを見やる。
「……これはこれで、どこに何があるか分かってるよ」
「ああそれ、片づけられない人の常套句だねえ」
 ぼそり、と。声へ僅かに後ろめたさを漂わせて、重々しく桃代が告げるのを、ぶーちゃんIIは軽やかに一刀両断した。
 ぐうの音も出ない少女は、口をへの字に引き結んで黙すと、本の海に沈んだまま再び目を瞑った。


 見るからに気乗りしない様子で、桃代は不承不承ながら身を起こした。そして敏捷とはとても言えない手つきで、布団の上へだらしなく散らかったマンガだの小説だのを、枕元へ作品別や巻数順に並べなおしてゆく。その間も、一応休むことなく口を動かしてはいるものの、言い訳じみた内容も相俟って、まとわりつく歯切れの悪さと縁が切れていなかった。
「頭の中では、整理できてる。ただちょっと、気になっただけ」
 ふと気になったのに思い出せないマンガの台詞だとか、途中で飽きたけど急に興味の湧いた小説の続きだとか、そろそろ衣替え用に出しておきたい服だとか、と。いかにも気まずそうな口調で、桃代は次々に例を挙げてゆく。混沌とした室内の様子について、こぶたは別に叱責などしない。ただ片づけへ取りかかる少女のさまを見つめているだけで、それ”だけ”だからこそ、桃代は余計に言外の圧力をおぼえてならなかった。何も発さないこぶたの、黒いビーズの瞳に己の後ろ暗さを映して、靴の中の小石じみた居心地の悪さを勝手に見ている。
 結局、錯覚を振り払えるのは自分自身しかいないと判断し、桃代は覚悟を決めて口を開く。
「……集中できなくなった。あんまり難航するもんだから、とうとう糸が切れちゃって」
「うん」
「気がそれたのを幸いに、つい本とかマンガを読み耽っちゃって」
「うん」
「そしたら今度は、タンスとか押入れなんかの中身を、むしょうに片づけたくなるのも道理でしょ?」
「ああ、あるある」
 集中力を失った者が陥る思考と行動の変遷を、力強く桃代は語る。するとぶーちゃんIIも身に覚えがあるのか、こぶたは妙に実感のこもった同意を漏らしながら盛んに頷いてみせた。
「片づけたくなる、謎の衝動に駆られたんだね。確かに実際、タンスの中はきちんと整えられているようだし、散らかしてるだけじゃない。まあ、”どうして僕がそんなことを知っているのか”という点については、触れないけれど」
 ゆったりした口調で、笑みを含んでこぶたは桃代を見上げる。少女の視界の端には、だらしなく半分だけ抜かれている引き出しの姿が否応なく映り、桃代はぎくりと口元を引きつらせた。引き出しの中身自体は綺麗に畳んで収められているため、その野晒しめいた外側との対比が、一層際立っていた。
 きまり悪さに思わず視線を明後日の方向へ投げながらも、こぶたのからかいに対して特に反感は抱かなかった。それは非難ではなく、確かな親しみに裏打ちされたウィンクのようなものだったから。桃代が目をそらしたのも照れ隠しに過ぎない。
 頬に集まる熱を意識したまま、桃代は改めて部屋の中を見渡した。

 室内は、悩み悶える桃代の心情を反映したような、非常に落ち着きのないありさまだった。
 整理整頓という言葉を体現したようなタンスの中身は美しく、あとは入れ物である引き出しが元の位置へ戻されさえしていれば、文句のつけようがない。白紙の原稿用紙へ寄り添う筆記用具たちは規則正しく並べられ、”ものを書く”という行為に形から入ろうとしたのか、どれもが妙に真新しい。シャープペンの使用未使用を見分けるのは至難であったけれど、真四角のまま屑一つついていない消しゴムがおろしたてという何よりの証拠だった。まっさらの品々を取り囲むのは、所々が折れたり皺の寄ったりした、メモの山。集めに集めたくせ順番などそっちのけで、適当に散らかされたさまは、どこかちらし寿司めいていた。
 やるべきことが、ばら撒かれている。眇めた目で、桃代はそう思った。やるべきことも取っ組みあうべき相手も、対処法についても、何もかも少女は分かっていた。先にぶーちゃんIIへ告げた「頭の中では整理できてる」という言葉は嘘でなく、後は実行に移すばかりだった。けれど漢字でたったの二文字でしかない”実行”が、どれだけ長くいかに重く、そして気が滅入るほど遠大な作業であるかも、少女は理解している。
(だって、あたしみたいな小娘には、荷が勝ちすぎるんじゃあないの)
 だから、つい。挑む前から道程の遥かさにしりごみして、うじうじと現実から目を背けてしまう。そんな己の欺瞞に、誰より桃代は気づいている。手にしていた数冊の本を揃えもせず、ばらりと取り落とすように伏せ、自身も布団へ突っ伏した。
「あー…」
 長々と唸り声じみた息を吐くと、急激に意志の輝きが薄弱になった半眼で、溢れ出す気怠さを隠そうともしないで呟く。
「この、”やんなきゃいけないものへ直面してる時に限って片づけがしたくなる現象”に名前が欲しい」
 テスト勉強中とかにやたら発生するこれを、と更に付け足しても、解答や相槌が打ち返されることなく、桃代の声は空中へ放り出されたままになる。何とも気まずい沈黙が場を満たし、やがて耐えかねたのか、少女はうつぶせのまま顔だけをこぶたへ向けると、ばつが悪そうに告げる。腹を括ったのか、頬の赤さは維持していても、もう視線はそらさなかった。
「……言ってくれて良いよ」
「じゃ、お言葉に甘えて」
 低い声で促され、こう話を振られることをとっくに予想していたのか、待ってましたとばかりぶーちゃんIIが球形の身をいそいそと乗り出す。わざとらしく、えほんおほんと芝居がかった咳払いを幾度か繰り返すと、こぶたはひたりと桃代を見据えた。
「これじゃあ、いつまで経っても、原稿用紙は埋まんないよ」
「……………………うん」
 現実逃避をぴしゃりと指摘され、耳に痛い事実の宣告を容赦なく受けて、桃代は弱々しく漏らした。けれど頼りないのは返事だけで、少女はぐっと唇を真一文字に結ぶと両腕をつき、全身の力を振り絞って寝心地の良い寝床から体を引き剥がした。
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