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とまり木 常盤木 ごゆるりと

ひねもすのたのた

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四月はうららな焼け野原


少しは調子が戻って……きた、の、でしょうか?
もだもだしつつも見直し作業くらいはできています。


あとは、ちゃきちゃきと新規に書き出せるかどうか、ですね。
ほんとこのなまくらと化した指どうしてくれましょう。
書けないなら書けないで、別のことをしていれば良いものを。
設計図引いたり…ネタをためておいたり……。
いやその確かにさにわっていますがさにわばかりではなくてあの。
はい。ほつほつと遊んでいます、刀。
こういった類のゲームには初めて触れるので、色々新鮮で。
興味深くさにわったり考えたりしています。
そのうちうっかり書いていたら笑ってやってください。
おんなのこがいない腹いせのようにたべものばっか書いているはずです。
あっ、そうそう薔薇のコーディアルできましたー!
コーディアル作った後の花弁でジャムも作りましたし。
手製ジャムは日持ちが心配なので、ちゃっちゃと使ってしまいましょう。
マフィンにするかパウンドケーキにするか…うーん……。


ゼノに連なるあの子がくるまでに。
色々と、きちんとしておかなくては、ですね。
わたしの四月はモノリスさんに蹂躙される予定です。
のぞむところです。


そんなこんなで、一応見直しが済んだ習作百話を。
これまでのお話の中では、かなりアクティブ寄り。夜ですのにね。
けれど動きがなければ、百個も続くと飽きてしまうでしょうし。
まあアドバイスを頂くまで全く考慮していませんでしたが。
とはいえ、もうちょっと動きも意識しなければいけませんね……。
さあ。かんがえてかんがえて。









『軍記 夏草夜戦』

 いくら季節が季節とはいえ、夜になれば、しかも山の裾野にある畑ときたら、冷えないわけがない。流石に凍えるほどではないものの、黄昏時の夕下風に連れられやってきた肌寒さは、無視できるほど甘くはなかった。タンクトップの上に羽織った薄手の長袖シャツへ密かに感謝の念を抱きながら、良橘は息を潜める。
 畑から少し離れた、けれど大股で数歩も駆ければすぐ到着できる草むらに身を隠して、青年は畑全体に目を光らせる。
 長期戦は覚悟の野伏せりだった。だからこそ、陣地は昼間にさんざ周囲の地形を見て回って選び抜いたし、畑側からは分かりづらいよう草を上手く絡みあわせて偽装も施した。それでいて居心地の良さも確保するべく、こっそり座布団を持ちこんで、待機中に軽くつまめる菓子類や、お茶がたっぷり入った水筒も用意している。
 それに何より、傍らで聞こえる熱っぽい呼吸の確かさが、静かな夜を温かく安らぎで満たしてくれる。青年は僅かに口角を上げると、自身のすぐ隣に座ったまま油断なく前方を睨む、愛犬の頭を軽く撫でた。
 環境は整い糧食は手元に、そして安心して背中を預けることのできる相棒もいるとなれば、迎撃態勢は万全だった。まだ先触れすらない眠気をあらかじめ撥ね退けておくため、水筒の蓋に残っていた、うんと濃く淹れてきた緑茶を一気飲みする。そうして口元をぐいと粗く手の甲で拭いてから、良橘は再び闇の中で前方へ神経を集中する。
 しかし、その矢先。
 突如、相棒が低い唸り声を上げるのに、さっと緊張を走らせる。けれど勇ましい猟犬が身構える先は畑ではなく、良橘の背後だった。あまりの近距離に思わず顔を強張らせながら、振り返った青年が夜に慣れてきた目で捉えたのは、小さく、そして、円い影で。
 夜だろうが屋外だろうが、決して見間違えようのない親しい輪郭に、良橘がきりきりと引き絞っていた警戒の糸は、一瞬にして弛みきって地面へ落ちた。その一方で、まだ歯を剥き出しにして臨戦態勢にある愛犬を片腕でやんわりと制し、畑の監視へ戻るよう促して自身は彼へ向きなおる。
 現在の状況を思うと、ついつい微苦笑が浮かぶ。けれどその笑みは困っているように見えてその実、隠しきれない嬉しさが滲み出ていた。
「また、えらい時のご登場だな」
 何となく背筋を伸ばして、相手を迎える。昔と変わらず低い位置から見上げてくる、慕わしい旧友の数年ぶりとなる邂逅に、喜びの湧かないわけがなかった。


 夜の帳と雑草に覆われた畑近くの陣地、という風変わりな場所での再会に、華々しさはない。ならばお喋りにでも盛大に花を咲かせたいところではあるものの、現状がそれを許してくれなかった。とはいえ、せめてこれくらいはと良橘は暗がりの中でにっかと口角を上げ、親愛を込めてこぶたを軽く小突く。そのさまは、悪友同士が握った拳を打ちあわせて笑み交わすのに似ていた。
 長い言葉など不要で、たったそれだけの動作で長年の空白は埋められる。大柄な体を狭い空間に合うよう縮めている青年は、足だけでも楽なように、と片膝を立てて待機していた体勢をやや緩めた。それでも全体的に、四肢が窮屈そうに折りたたまれている印象は拭い去れないけれど。
 周囲の警戒はひとまず相棒に任せて、自身は少し居住まいを正すと、ようやく落ち着いてこぶたに向きあえた。
「よ。せっかく来てくれたのに、取りこみ中でさ。悪いな」
「いやいや、お構いなく。それにしても、優秀なバディだね」
 詫びの言葉に迎えられても、ぶーちゃんIIは対して気にした様子もなく、鷹揚にかぶりを振って応えた。そして話しながら良橘はふと、彼がやってきたということは、こちらの状況など全て把握した上なのではないか、とも思った。
 しかし青年がそんなことに気を取られている間にも、こぶたは感心と好奇心に溢れた眼差しを、良橘の傍らに送り続ける。視線の先には、先が鉤型になっている尻尾も凛々しい、地面に腰を下ろして一心に辺りの索敵を続ける中型犬の姿があった。
 家族を褒められて、気を悪くするものはいない。良橘はつい相好を崩すと、ぴんと立った耳を持つ弟の頭に大きな手を伸ばして撫でた。
「会うのは初めてだっけ? 話くらいはしたことあるよな? ……と、思うけど。まあ、いいや。こいつは良太、血統書なんざ持っちゃいない雑種だけど、立派な猟犬の血筋なのは確かだ。頼れる、助かる、おれの相棒」
 超然とした涼しげな横顔だけをぶーちゃんIIに見せていた良太が、良橘の温かな手に触れられて、大きな目をくすぐったげに細めた。それでも顔を前方からそらさず警戒を怠らないところから、優秀な血統というのは間違いないと思わせる。
 撫でるついで、とばかり良橘は良太の頭に手を乗せたまま、低い声でこぶたについての説明を囁く。彼が古い友人であること、信頼のおける相手であること、緊張など一切しなくて良い間柄だということ。などなど。
 家族に促されたこともあり、初対面で思い切り牙を剥いてしまった対象へ良太は顔を向け、前に投げていた視線を向ける。背を曲げると黒くつやつやとした鼻をこぶたへ寄せ、胡乱げに匂いを盛んに確認する。しかし、いくら近づいても相手はただ興味津々に見上げてくるばかりで、敵意など微塵も感じ取れない。やがて良太は溜め息じみたものを一つ吐いてから、ぺろりとぶーちゃんIIの顔を舐めた。尻尾を持つ仲間として、和解の意思を示したようだった。
 うひゃあ、と情けない声を上げるこぶたに、良橘は小さく笑った。

「畑泥棒が出るんだよ、最近」
 手にした夜食用の細長い菓子を荒っぽく歯でへし折りながら、忌々しげに良橘は呟く。
 夜も深まった畑に面した陣営で、なぜこうも身を隠しているのかという理由を、青年は潜めた声でこぶたに語る。説明の間も、借りてきたという簡易暗視スコープを片手に畑全体を見渡しており、その隣では同じように監視を続ける良太がいる。
「きみのところ?」
「いや、うちはまだない。ただ、ご近所さんが幾つか被害に遭っててな」
 口内に残る菓子を怒りもこめて噛み砕きたくなるものの、音が響くのは望ましくない。注意深く奥歯へ意識を集中しながら良橘は咀嚼し、手に残った大きめの欠片を幾つか良太の口元にも運んでやる。すると名犬は、丸呑みという万全の対策で騒音問題を解決した。
「やり口が雑なくせ、被害の規模が広がってる。ちっともとっ捕まらないから、調子に乗ってんだろうよ。だから、今度こそ、おれがぶちのめす」
「それで臨戦態勢なんだね」
「おう」
 納得しきりに頷くぶーちゃんIIへも菓子を勧めて、丁寧に辞退されると、良橘は手の中の食料をそのまま自身の口へ放りこむ。
 雑穀入りのショートブレッドは腹持ちが良いように、と長期戦に備えてこしらえられたものだった。本来ならばさくさくとした小気味良い食感が売りの菓子だというのに、今回は雑穀を加えることで咀嚼音が障らないよう気が遣われ、また硬すぎても良くないため焼き加減も注意深く調節されている。鼻腔にまで立ち上ってくる快い香ばしさと、じんわり口の中を満たすほの甘さに背を支えられた気がして、青年は決意をこめ菓子を飲みこむ。
「この畑は罠だ。ご近所さんたちにも頼んで、近くの畑は軒並み、取り急ぎ収穫を済ませて貰った」
「次の標的になるならここ、ってわけだね」
「仕掛けも結構、凝ってるんだぜ?」
 会心の悪戯を胸に秘めたガキ大将の顔で、良橘はにやりと笑う。手首に回されたわっか状の紐、その先端に揺れる小さなものを見せびらかすように、こぶたへ掲げた。マッチ箱ほどの大きさをした長方形のものが何なのか、一目で見抜くことは流石に慧眼のぶーちゃんIIにも難しい。
 それでもしばらく、ぶーちゃんIIは謎の物体と睨めっこを演じるものの、やがて僅かに体を傾げる。
「……秘密兵器?」
「ご明察」
 こぶたの辿り着いたざっくりとした答えは予想していたものだったのか、青年は機嫌良くまた低く笑う。軽く手首を返すと、美しい弧を描いたひみつへいきが無事に掌へおさまり、良橘はそれをこぶたのすぐ前へと持ってゆく。そうして初めてぶーちゃんIIは、その物体にスイッチがついているのを見て取った。
「畑のあちこちに、気づかれないよう幾つか照明装置を隠してある。このスイッチを押したら、一瞬だけ最大出力で点くんだ」
 質問をされるのに先んじて、どこかはずんだ口調の良橘が解説をする。その端的な言葉から素早く意を察して、ははあ、とぶーちゃんIIが声を漏らす。
「狼藉者の目を眩ませるんだね」
「その通り。タイミングはこっちで完全に操作できるからな、あと光が何秒続くかも分かってるから、おれらはその間だけ思いっきり目を瞑ってりゃいい」
 良太の目はおれが覆ってやるし、と付け加え、相棒への配慮も忘れない。
「照射が終わると、後は消えちまうんじゃなくって、うっすらと灯りが残るように調整して貰ってる。敵の視力を奪った後は、当たり前だけど身柄の確保だからな。良太とおれが一気呵成にかかる時、暗視スコープがなくても足元が見える程度には明るくなってる、って寸法」
「へえええ」
 一朝一夕で用意ができるとは思えない、なかなか手のこんだ罠の機構に、ぶーちゃんIIが感嘆の声を上げる。すると良橘は「機械に強いツレに話を持ちかけたら、作ってくれたんだよ」と友人の仕事を誇らしげに告げる。しかも良橘が打ち立てた作戦についても再考を加え、より成功率が上がるように新たな案まで出してきて、仕掛けに磨きをかけてくれたことも余談として足す。
 しかし語るうち、つい緩みそうになった顔を良橘はすぐさま引き締めると、決意も新たに幾度目とも知れない監視の目を暗視スコープと共に畑へと投げる。

 こんな夜中に、弟や旧友と共に身を隠す良橘は、孤独な戦いに臨んでいるわけではなく、この場にはいない多くの人々に支えられている。お膳立てへ協力してくれた近所の農家や装置をあつらえてくれた悪友、作戦の実行へ許可を出してくれた家族や、荒事の心配をしながらも糧食を届けてくれたひと。今夜、実行に移されるだろう捕り物の集大成という位置にいるのが良橘、というだけだった。
 大なり小なり作戦に関った全ての人々へ報いるためにも、青年は必ず勝ってみせる、という意志をはっきりと固めている。
「露骨なくらいの罠だね」
「くる」
 どこかひやりとした気配を含む、平静なぶーちゃんIIの意見へ良橘は鋭く返す。それは武功を急くあまり盲目になっているためではなく、れっきとした根拠に基づいて発されたものだった。
 今日という日のため、良橘は良橘なりに調査と準備を重ねてきた。被害に遭った人たちから聞きとりを行ったり、実際に現場を見せて貰ったりした青年は、犯人らの加減を知らない手口の荒っぽさや己の痕跡を隠そうともしない無頓着なさまから、ある答えを導き出した。
「バカならくる」
 確信に満ちて、良橘は言いきる。
 愚かであると断言した犯人に対する怒りは、ひとまず胸にしまいこむと、良橘は肩に力が入りすぎない程度に使命感を背負う。暗視スコープを握る手に力をこめ、油断なく畑を見張る。しかしその唇は厳格に引き結ばれることもなく、敵に対する感情が少しずつ零れ落ちる。
「ぜってぇ、とっ捕まえて、ふんじばってやる。現行犯なら一般市民でも取り押さえていいからな」
「うん。令状は要らないもの」
「百姓を舐めんなってんだ。思い知らせてやる。十字架っぽく組んだ木へはりつけにしてやる」
「ほどほどにね」
「木は漆な」
「うわあ」
 自分は全く問題なく沈着である、という態度を、良橘はこぶたにも愛犬にも見せていた。しかしその実、内側では憤怒と闘志を荒々しく燃え盛らせているのが、絞り出された言葉から滲む。どこまでが本気でどこからが冗談なのか、咄嗟に判断することは難しく、ただそれでも恐らくぶーちゃんIIは黒いビーズの瞳でそれを見抜いている。


 容赦のない制裁内容に、ぶーちゃんIIが思わず声を漏らした、その矢先。
 青年の傍らに座す良太が、耳の向きを動かしたかと思うと立ち上がり、身構える。猟犬の反応に、はっと顔に緊張を走らせた良橘の耳にも、ほどなく良太が捉えたのと同じ、草を掻きわける微かな音が届く。一人と一頭と一匹が揃って息を詰めると、とうとう声すら暗闇から聞こえ始めた。二、三人分のものと良橘は判断した。
 青年は左右の仲間たちへ素早く一瞥を投げると頷きあい、片手を良太の目元へ、もう片方の手をスイッチへ伸ばし、自身もきつく目を瞑った。
 そうして。

 良橘の指が捌きの鉄槌を下し、瞼を越えて貫いてなお目映く感じた閃光が、夜の畑を蹂躙する。幾つもの叫び声が上がり、光がその効力を弱め始めると良橘は低い命令と共に相棒の背を叩いた。限界まで引き絞られた弦から放たれた矢のような速さで飛び出す良太に続いて、良橘も地面を蹴る。草むらの秘密基地は、設営者の足により崩れ落ちた。
 夢の跡となりかけた陣地に一匹だけ残るこぶたが見つめる中、遠く、哀れっぽい複数の呻きと猟犬が猛々しく吠える声と青年の怒号が、夜の畑に響いた。
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