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とまり木 常盤木 ごゆるりと

ひねもすのたのた

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そしてなによりはやさがたりない?


刀のお話、一応しまいまで完走。わーい。
あとはちみちみ見直しです。久し振りに、のんびり書けました……。


このたびは、わたしBGM一切かけていないのですよ。
一月末までの猛然と書いてた頃は、必須だったのですけれどね。
書いているものが和のものだから、でしょうか?
自分でもよく分かりません。
ただ、要る、と思わなかったのです。不思議なものです。

ふと、浮かんだ原因は。
BGMを流していた理由の一つに、ペースメーカーがあるためやも。と。
あいている時間に合う、総プレイ時間のアルバムを選んで。
その一枚がおしまいになるまで集中して挑む。
タイミングによってそれは、30分だったり、70分だったり。まちまち。
一応、基本的には60分刻みが目標でした。
それ以上となると、なかなか連続だと集中力が続かないので……。
なのに今回は、さらっと90分とか書いていました。驚きました。
無音の中でひたすら言葉と取っ組みあって、一騎打ちできていました。
ただし、進行は非常に遅いです。
以前ならばもっと一気呵成に書き進めていましたが。
本当にこの刀のは、ゆっくり、ゆっくり。かたつむりのよう。
初ジャンルだから慎重になっていた、というのもありましょうが。
ここまでねちねちするくらいローペースなのは珍しいです。
あ。でもわたし本性は遅筆ですしね。正しい姿に戻った……?

ともあれ。
良い気分転換となりました。書いてて楽しいのは嬉しいこと。
しかしなぜわたしジョジョに引き続きこうおんなのこ出ないジャンルを。
まあ、たべものとこどもが書けたので、よしとしましょう。
残る見直しも、楽しく進めようと思います。
想定よりもやたら長くなったことについては考えないようにします。


そんなこんなの習作百話は三十四個目。
やっとこさ三分の一を越えましたね。
あと少しで、半分はいけそうでしたのに……現在足踏み中です。
この気分転換が功を奏して、再開できれば良いのですけれど。









『敢然と迷宮を征く』

 布団の上へ大の字に転がる少年の体は、ちっとも伸びやかではなかった。掌はどちらも固い拳にされており、その余波なのか肩にも力がこもりすぎている。けれど今は腕も、腹も、太股もふくらはぎも、良橘はどこもかしこもが強張っていた。
 少年の全身を覆う緊張の震源地がどこなのか、見定めることは難しい。何せ頭のつむじから爪先まで、まんべんなく筋肉を張りつめさせているのだから。ただ、音もなく姿を現したこぶたは、黒いビーズの瞳に相手の姿を映し、読み解く鍵は恐らく少年の眉間に深く厳しく刻まれた皺にあるのだろう、と判断した。
「雨が降ったら、地面は濡れる」
 唐突に、低く、良橘が声を漏らす。いささか詩的とも思える短い内容は、お気に入りの一篇を朗詠しているようだった。
 少年が普段、言葉で表現するのをとても不得手にしていることを考えれば流暢に、けれどやはり訥々として独唱は続く。
「日が照ったら乾く、落ちてた種は芽吹く」
 次々と、韻などてんで無視して良橘は吟じる。ためらいながらも途切れることなく流れるさまは、それらが誰かからの借り物ではないと示しているようだった。
 幾らでも、自ら言葉を作り上げてゆく良橘は、こぶたの返事を待ちもせず、ただ口を動かす。
「花が咲いて」
 詩が滞る。一瞬、押し黙った唇が舌打ちの形になりかけて、やがて何かを呑みこむように引き結ばれる。
「実を、つける」
 絞り出された声はどこか重々しく、また苦味も含んでいた。そして、それが最後の一行だったのか、良橘は暗唱を終えると途端に口を噤む。
 天井を仰いだまま、むしろ睨みつけたままでいた良橘は、幾度か深い呼吸を繰り返した後に、目だけを横へ動かした。ここまで相槌どころか挨拶すら発さなかった、円くて黄色い友人を見やる。
 そもそも少年は、これらの独白じみた言葉の切れ端に、最初から返事など求めていなかった。ただ胸の内のみでは収拾がつかず、たまらず溢れるに任せただけだった。そのため、無言を貫いて聞き手へ徹するこぶたのありさまは、何よりも望ましく、そしてありがたいものだった。
 こんな願いを察してくれていたのだ、と欠片の疑いもなく良橘は思った。すると何だか、きりきりと引き絞られていたあらゆるものの中で、胸の奥だけが柔らかく緩んだ気がして。良橘は今夜ぶーちゃんIIが現れてから初めて、相手の反応を求めた。
「――それだけのことだろ?」
 小さなこぶたは物言わぬまま、ころりと僅かに体を傾けた。

 ぶーちゃんIIは詳細を問わなかったし、良橘も詳報を告げなかった。ただひたすらに少年は、誰かに耳を傾けていて欲しくて、けれどもお説教は要らなくて、という非常に都合の良い相手を求めていた。
 なのに、そんな我が侭に対して最良の聞き手が転がり現れた。だからこそ良橘は驚いて絶句するでなく、一度ぐっと唇を真一文字にしてから、更に勢いを増して言葉の羅列を続けようと心に決める。
 例え迷い子のように道を失い、頭を抱えて悶えても、答えは自力で捕まえるという気概が少年を突き動かしていた。だから誰かがそっと、小さな手で構わないから背中に添えてさえいてくれたら、良橘は進むことができる。こぶたの円い存在こそが、手そのもの、だった。
「春が来たら温かくなって、花が咲く。夏になったら緑は茂るし、秋になったら色づいて実って、散って。そうして冬は色んなものが眠る」
 自らの経験を踏まえて、良橘は指折り数える手間すらなく、すらすらと述べる。言葉として形作られてゆくのは、良橘が実際に見て触れて知ってきた、素朴で力強い世界のさまだった。全身全霊で学んできたものたちだった。
 幼い頃から良橘にとって、野山は遊び場であると同時に遊び相手だった。ぶーちゃんIIとはまた性質の異なる、けれど同じく親しみに満ちた旧友。なのに、そんな親愛なる友を話題にしているというのに、少年の表情は喜ばしさから程遠い。本来ならば誇らしさに、うっすらとはにかんでみせてもおかしくはないというのに、今の良橘は眉間の深い皺に顔つきを支配されてしまっていた。
「簡単なはずなんだ。少なくとも、おれにはそう思えるし、そう映る。なのに」
 考えを言葉に託すという苦手な行為へ、どうにか食らいつき続けてきた良橘が、遂に声を詰まらせる。歪んだ目元を隠すよう、咄嗟に顔の上で片方の掌を広げるも、指の隙間から覗く苦渋にしかめられた表情は覆いようがなかった。
「――ああ。ちくしょう、なんでだ」
 整理しきれなかった感情が、つい悪態として漏れる。けれどそこに否定や拒絶の影がないのを、傍らでひたすら耳をそばだてるこぶたは聞きとっていた。文字通り頭を抱えながらも、少年はどこかの誰かを理解しようとして、もがき続けている。寝転がったまま苦悶するように左右へかぶりを振ると、僅かに身をよじる。
「なんでそんなに世界がややこしいんだ」
 分からねえ、と音もなく形だけ唇が動き、やがて食い縛られた歯列からかすれた嘆声が零れた。
 同じものを見ていても、他者と見え方が違うなど、良橘はこれまで生きてきた十余年で考えたこともなかった。身長差による目線の違い程度なら、楽に理解ができる。けれど隣に並んで立って、一緒に見ていたはずのものが、異なって映っていたなど!
「世界は単純なものなのに」
 指に制限された視界の中で、更に薄く細く見開いた目を、良橘は実態のない苦痛にしかめる。けれどその目は閉ざされることも、そらされることもなかった。
 ひたすらに自分の内で悩み、苦しみながらも思考という足を止めることなく、右往左往しながらも少年は立ち向かい続ける。そうしてやがて、迷いながらも果敢に踏み出された一歩を、こぶたは見た。
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