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とまり木 常盤木 ごゆるりと

ひねもすのたのた

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『比翼は止まり木に幸いをくちずさむ』


ゼノギアス、『十七』回目の二月十一日、おめでとうございます。
どうにかこうにかお祝いが間に合って良かったです。


……後日、高確率で手を入れなおしているでしょうけれど。
ああもうほんま先月末から今月にかけての計画性のなさに頭を抱えそうです。
けれど、こんなでも、精一杯のお祝いです。
あなたがうまれてきてくれて、わたしは本当に嬉しいの。
そして例によって例のごとく題名が決まらなくてもう。
取り敢えず決まりましたが、完全に納得はしていません。
ただ、この言葉を使うのは、わたしにとってかなりの覚悟です。
とても、大事に、してきたものなので。
内容についてはこっそりシュルクとフィオルンありがとう。

うんうん悩むうちにうっかり色々思い出してかなしくなってしまいました。
いけませんね。お祝いの日ですのに。
なので今日は前置きは(きもち)短くしておきましょう。
続きにお祝いを、置いておきます。よろしければどうぞ。
ええ当然ながらフェイエリィです他にわたしが誰を書くと。
仕掛けともいえないほどささやかなものを仕込んでいます。
いきなりネタバレも風情がないので……。
下のかぎかっこ内に、ヒントを反転で入れておきますね。
読後にでもお確かめください。
数は、『十七』です


お誕生日、おめでとう。
あなたと、あなたに携わられた全ての方々に幸いを。









『比翼は止まり木に幸いをくちずさむ』

 囁きじみて低く言葉を交わしていたふたりが、時折漏れていたくすくすという声を切り上げる。口の端と目元に、まだ振り払いきれない微笑をまとわせたまま、エリィは手にしていた分厚いマグカップを卓へ置いた。
 温かなココアの芳醇な香気が立ちのぼり、零れ落ち、ふたりの周りをゆったりと満たしてゆく。
「宵闇のような、宇宙のような、私と全く正反対の彩りをした瞳。磨きあげた鏡みたいに、つやつやした髪。骨ばっているのにどこか優雅で、長い指はとても器用、繊細な色を作り出すかと思えば力仕事だってできちゃうの」
 目を細めて相手の出方を伺うエリィが、音もなく唇の動きだけで「はい、次」と彼へ促す。それを受けて、フェイは薄く笑みを刷いて、軽く頷くと後を引き取る。
「しとやかな菫の時もあれば、きらきらしく燃えあがる紫水晶、落ち着いた紫苑だったり……角度や感情の昂ぶりに応じて趣を変える、描きがいのある瞳。風になびいていると更に典雅さの増す、暁色の長い髪。白木蓮を思わせるなめらかさなのに、上気すると見事な薔薇色に染まる頬」
 指折り数える必要もなく、相手を構成するものについて、彼はすらすらと挙げてゆく。そうして今度はフェイが、緩く掌を上向けて「どうぞ?」と余裕に溢れて続きを誘ってくるのに、エリィは真っ向から悠々と受けて立つ。
「私の名前を呼ぶ時でなくても、怒っている時でさえも、胸の裏側まで触れてくるベルベットみたいに快い声。意志の強さにどきりとさせられたり、困りきったふにゃりとしたさまに笑ってしまったりもする、表情豊かな眼差し。触れられないものの中だと、あとは食欲なんかもあるわね。ぺこぺこおなかで、毎日それは美味しそうに食べてくれるものだから、腕のふるいがいあるわ。レシピで私が悩んだ時は、一緒に考えて、あれこれ案を出してくれるのも、食欲に含んじゃうわね。いつだって大助かりなんだから。さあ、次の三つよ!」
 一つ示すたびに、拳の状態から伸ばす指の本数を増やして、エリィは分かりやすく数えあげてゆく。やがて人差し指から順番に三本立てるところまで言い切ると、振出しへ戻すように手をほどくと広げきり、掌をひらひらと蝶めいて揺らめかせながら、彼へ差し向けた。
 妙に自信たっぷりな面持ちで応答を求める彼女に負けず劣らず、フェイも泰然とした態度を崩さない。
「小さな貝みたいに、凄く形の良い耳朶。すっきりと整った鼻梁。苦手な針仕事にも挫けず立ち向かう細い指は、寒い季節には荒れてしまうけど……美味しいものに対する探究心に満ちた働き者で、応援したくなる」
 形のないものを並べていたエリィに対し、彼は絵描きの目で、確かな形を取る、地に足のついたものを列挙してゆく。宿した鷹揚な微笑を揺るがしもしないで、ひたりと相手を見据えていると、彼女は一瞬だけ目を見開いてから視線を明後日の方向に投げ、大きく声を張る。
 僅かにフェイからそらされた面は、大輪の薔薇には及ばずとも、その頬を咲き初めの桃めいてうっすらと色づかせていた。
「やっ、山や野原へ一緒に出ると実感する、草花だけでなく木の実なんかも含めた豊富な知識! こけももだのあけびだの見つけると、まっしぐらよね。そんな狼みたいな敏捷さ。風を切って颯爽と駆ける姿は、見ていてとても清々しいわ。あと……あ、大きな掌は、最初のほうに挙げた指とは別扱いでも良いかしら? 指は絡めるものだけれど、掌は包むものだから」
 話すうちに、胸の水面に訪れていた微小な細波も落ち着いたのか、婉然と笑みを深めてエリィは彼へ流し目を送る。またも三つ挙げられて、投げ返されて、それでも動じることなくフェイは新たな手札を迷わず繰りだす。
「静脈が透けて見えるほど、白くて細い手首。いくら指が荒れても、これだけは譲れないとばかり、いつだって綺麗に整えられている爪。それと―…喧嘩になると一番油断ならない、警戒すべきしなやかな足」
 最後の一つを述べる際に、悪戯っぽく口角を上げた彼へ、エリィは不平そうに唇を尖らせる。すかさず反撃に転じるためか、これまでの穏やかな遣り取りから素早く陣容を変え、刃の輝きも鮮やかに、舌鋒鋭く切りかかった。

「健康的なバター色の肌! 太陽に愛されているけれど、決してとろけはしないのよ!」
「瞬きのたびに羽ばたきが聞こえそうなほど長くて、鳥の和毛みたいに柔らかい睫毛」
「元気な尻尾! 私の髪は量が多い上に重いから……一つに結んだって、ああも軽やかには跳ねないわ」
「丸い額。たまに前髪を上げる時にしか見られない、珍しいもの。子供のようにぴかぴかで小気味良い」
「真珠みたいな歯! 大きく口を開けて笑ったって、奥歯までつやつやなの」
「ご機嫌な日の鼻歌。高らかな笑い声も捨てがたいけど、たまに調子っぱずれになるこっちが、僅差で上かな」
 先とは様相の異なる、短い応酬が盛んに繰り広げられる。
 けれど、いくらエリィが達者な舌で威勢良く踏みこんでも、フェイは流れるような足捌きでいなすように、切り結ぶことなく彼女のきっさきをそらしてしまう。ただそれは相手をからかっているのではなく、誠実に応じているからこその態度だった。そうでなければ、淡々と応じながら、瞳の真ん中へひたすら彼女を映してはいない。
 その真摯なさまにエリィがへそを曲げるわけもなく、丁々発止とやりあう覚悟を決めていた刃が、先端を緩やかに鈍らせる。
「―…子供で、大人なところ」
「強くて脆いところ」
「美しいものも醜いものも抱いているところ」
「狭間で揺れ動きながらも貫こうとするところ」
「悲しいくらいに優しいところ」
「苦しいくらいに優しいところ」
「あなたがあなたとして、いてくれるところ」
「きみがきみとして、いてくれるところ」
 並んでくつろいでいたソファで、お互いを正面に捉えるため、彼と彼女はいつの間にかどちらからともなく座りなおす。そうして真っ直ぐに向かいあいながら交わす言葉が、やがてほぼ同じ場所へ辿り着くと、ふたりはとうとう揃って噴き出した。
 ふたりのしかつめらしい表情が一気にほどけ、エリィが声に出して笑うと、どこか厳かだった空気が宙へとけて掻き消える。歌うように響くそれは、先に彼が口にした通り、音程を外した鼻歌に比肩するほど上天気なものだった。
「終わらないじゃない!」
「ああ。これは百までいったって、しまいになるか怪しい」
 それぞれに意見を述べながらも、おかしみがまだ薄れないのか、なおもふたりは内緒話めいた小さな笑い声をくすくすと撒き続ける。

 ほんの戯れだった。先に言い出したのは彼だったか、彼女だったか、それさえふたりはろくに覚えていない。そのくらい他愛もない、お茶請け代わりのお喋りで不意に現れた、気紛れな思いつきだった。
 『相手の好ましいものを三つずつ、順番に挙げてゆく』。詰まったほうが負けだとか、長く遣り取りを続けるだとか、そんな決まり事や目的すらない。ただひたすら、ふたりの間で往復を繰り返すだけの手遊びだった。
 きりがなかった。

 始まりの幼子は、煌々と黄金色を撒き散らす光輝というものに、望みを問われ、『彼女』を求めた。
 遥かなる歌姫は、赫々と不可知の雫を滴らせる向こう側にあるものへ、手を伸ばして触れ、『彼』を喚んだ。
 どちらも、どちらもが願ったものなのだから、お互いにとって好ましいのは当たり前なのやもしれない。ふたりの始まりは『そういうもの』であったのだから。けれど結局、それぞれがはめられていた型枠のような枷のようなものは、次第にたわみ、一万年以上の時をかけて緩やかに自ら形を変えていった。
 全ての母は暁の紅に染まった娘へ、小さな端末は百億の鏡の欠片であるヒトへ。

 たとえ、かつて強固に定義づけられていようと、鎖はやがて錆びるもの、檻はいずれ崩れるもの。しかもふたりは、幾度も生を巡らせながら歩き続けた道を、彷徨いつつも踏破した上で、もう一度お互いを自らの意志で願った。
 尾を咬む蛇の戒めを断ち切って、再び恋をしたのだから。
「次ので、そろそろ終わらせない? 多分、同じことを考えていると思うけれど」
「そうだな。じゃあ」
 不毛というわけではないものの、果ての見えないお遊びへ穏やかに終止符を打つべく、エリィが場を仕切りなおそうとする。その提案にフェイは一も二もなく頷くと、てきぱき行動へ移す。即ち、改めてふたりで顔を見合わせ、『お互いに共通している好ましいもの』最後の一つを披露し、分かちあうための準備だった。
 どちらも、秘密を明かしたくて仕方のない子供の顔をして、柔らかにほころんでゆく微笑は絶えることがない。不意に、エリィが自身の顔に片手を伸ばすと前髪を掻きあげ、フェイの讃えた美しい額をここぞとばかりにさらけだす。真っ直ぐに射抜いてくる紫苑の瞳の煌きと、悪戯っぽい表情の意図を察して、フェイはつい相好を崩すと、上半身を彼女に近づける。距離が縮まるにつれ視界を埋め尽くしてゆく相手と、鼻先が触れるほど顔を寄せあうと、世界が微笑で満たされた。
 こつん、と優しく額と額を合わせて、ふたりは同時に「あたたかい!」と笑った。
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