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とまり木 常盤木 ごゆるりと

ひねもすのたのた

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残る指を一つ折れば次に現れるのは輝く十七


ど、どうにか間に合いそうですお誕生日祝い……。
途中でえっらい急カーブ描いたり頓挫しかけたりと無駄に激しい紆余曲折を。


一時はどうなることかと思いました。
オチを途中で変えるとか、滅多にしないのですけれど。
いやしちゃ駄目なのですよこんなこと!
どれだけ設計図の時点から精度が低かったのか、という。
ああ、いけませんねもっとがんばらないと。
アドリブというか、アクロバティックな軌道修正というか。
こんなことができるのはフェイエリィだったからですね……。
長年の慣れに頼りすぎですね。ごめんねありがとうふたりとも。
これから見直しですけれど、明日には大丈夫かと。
……本当は三回以上は見直ししたいのですけれど。
うう、精度が。精度がぐあああ。


一人で気持ちしおしおしながら、習作百話を。
全然続きを書けていなくて、日に日に罪悪感ひしひし。
先月中に半分、五十個まではいきたかったですのに。
いまだ四十九個くらいで止まっていますよ。
難航しすぎて混乱してそして爆発四散というか華々しく頓挫。
己の処理能力の低さと計画性のなさに心が折れそうです。

実は、題名は、お気に入りの一つだったりします。
凝りすぎた気もしますが、多少はシンプルですし許容範囲かと。
いや自分でこれ言っちゃったらもう駄目な部類ですねぐはあ。
そしてまたもやや実話です。










『地下の園のコリン』

 普段から、年の割りにしかつめらしい顔つきをしがちな子供とはいえ、この夜の墨人はそこへ更に不機嫌さも加わり、なんとも厳めしげな膨れっ面だった。肩まですっぽりと布団をかぶりながらも、すぐ傍らにあるべき枕は床へと放り出されている。腹ばいのまま両肘をつき、手で盛んに何かをいじるさまは、本人に眠る気が一向にないことを言外に表していた。
 幼子は手にしたハンカチを器用に折ってゆくと、ついさっきまで単なる平面だったものを、たちまち立体へと整えてゆく。特に三角の形へ興味を抱いているのか、三角錐にしたり、四角錐にしたりと、自由気侭に変化させてゆく手つきは非常にこなれたものだった。
 そして見事に作り上げた金字塔を、墨人はおもむろに振り下ろした拳で、ぐしゃりと潰す。
「世界はふじょうりだと思う」
 崩れ落ちた布製ピラミッドの向こうに座るこぶたへ、墨人は重々しい口調で断じる。保育園児の少年が、自分の存在する時間と空間に対して、下した結論だった。


 ぶーちゃんIIが円い体を据えているのは、本来ならば枕が落ち着いているはずの場所だった。けれど今夜、そこに鎮座していて欲しいと少年が願ったのは圧倒的にこぶたのほうだったらしい。
「ほいくえんでは、おひるねの時間があるんだ」
「うん」
 眠りを支える寝具ではなく気持ちを支えてくれる聞き手に、墨人は胸の内で抑えきれずに燻る苛立ちを、一言一言へ滲ませる。少年を見上げるぶーちゃんIIは相手を仰ぐ体勢をとりながら、高い位置から零れ落ちてくる不満の欠片を受け止める。
「僕らはまだ小さいから、たくさん眠らなくてはいけないって知ってる」
「うん」
「でも、今日の僕は眠くなかったんだ」
「あるよねえ、そういう時」
「そう。よくあることだと、僕も思う」
 幼児という自分の立場を理解した上で墨人は淡々と述べ、それに対してこぶたは緩やかな相槌を打つ。球形の身を乗り出すほど積極的な反応ではないものの、ぶーちゃんIIが親しみを含んだ同意を示してくれているのは、明らかだった。
 こぶたの言葉を噛み締めるように軽く俯いてから、ゆっくりと顔を起こして墨人は続ける。
「だから、眠らないでいようとしたんだ。僕が起きていることでふつごうがあるなら、それはねている人のじゃまをしたり、いたずらをしたりすることだ」
「無防備な相手に対して迷惑なだけでなく、それは卑怯なことでもあるね。まあ、きみはそんなこと、しないだろうけれど」
 からかいのない、信頼に満ちた表情で見つめられ、墨人は照れくさそうに小さく笑う。園の先生たちが危惧していることなど、少年の性質を昔からよく知っているこぶたは、ただの杞憂だとあっさり見抜いている。理解者の温かな眼差しが、今の墨人には快くてならなかった。
 だからこそ、昼間に起きたことを説明する墨人の顔が、やや曇る。
「―…先生たちの手間をとらせないよう、つまりはめいわくにならないようしていれば、起きていてもかまわないと思った」
「うん」
「声は出さないし、音だって立てない。ただ布団に入って目を覚ましたままでいて、ハンカチを使って遊んでた」
 こんな風に、と言いながら墨人は最初から手にしていた愛用のハンカチを再び操り、理想の黄金比を目指すピラミッドに作り上げる。手際のよい一連の流れで立てられた音など、ごくささいなもので、衣擦れにも届かないほどだった。
「子守唄どころか、風に押される揺り籠と比べてさえ、静かなものだね」
「でも、だめだってさ」
 客観的なこぶたの視点から、ぶーちゃんIIは短く感想をまとめる。墨人は彼の所見を喜ぶでなく、憮然とした半眼で言い捨てた。
 荒い鼻息を一つ吹き出してから、溜め息を織りまぜてのろのろと語り始める墨人の口調には、怒りよりも諦めの色が濃く出ていた。
「りゆうはどうあれ、何をしていてたって、とにかく『起きていてはいけない』の一点ばり。ハンカチで遊ぶのも、わるいことらしいよ。取りあげられて、ピアノの頭のほうに置かれちゃったくらいだから」
「おやおや」
 幼い人たちが昼寝をする場所は、いつも遊んでいるのと同じ部屋で、そこには歌の時間に使う小さなピアノが備えつけられている。子供にはとても手の届かない、室内で一番背の高いピアノの屋根へ、墨人の寡黙なおもちゃは流刑に処されてしまった。
「まあ、先生がいなくなってすぐ、取り返したけど」
「取り返したんだ」
「椅子を使って、のぼってね。けっきょく、もっと怒られることになったけど」
 明らかに失望のこめられた息を吐いて、墨人は更に後の始末を話した。
 一人、静かに目覚めて遊び続けようとする少年の意志を、大人たちは著しく反抗的なものだと判断した。加えて、反省の色が見られない点も非常に由々しいことだと。何に対する反省なのかは、墨人によく分からなかったけれども、とにかく罪を犯した子供を矯正するべく下す最大の罰を、大人たちは実行に移した。
 つまりは、子供が非を認めるまで、押入れへ閉じこめることにした。
「ふじょうりだと思う」
 この夜、初めに呟いた言葉を、墨人はもう一度繰り返した。

 幼子の押しこめられた空間は、一畳ほどの広さで縦に伸びており、大人の腰辺りの高さにある間仕切りで上下へ分けられていた。抱きかかえられた墨人が下ろされたのは上段で、体から手が離れた途端、自分をここへ運んできた人物を見上げてみたものの逆光でよく顔は見えなかった。ただ扉を閉められる前に投げつけられた声は苦々しげで、その口調から何となく表情を察することはできそうだったな、と墨人は思い返す。言葉の内容については、よく覚えていないというのに。
 何せその時の墨人には、大人の叱責より何より、もっと重要なものがあった。
「押入れって、初めて入ったばしょだったんだ。だからとても、きょうみぶかくてね」
 ぴしゃりと音を立てて、容赦なく閉ざされた岩戸じみた空間に、墨人は一向に怯えなど抱かなかった。昼の明るさから遮断され、自分の指先すら見えない暗闇に体も視界も覆い尽くされ孤立しても、泣き喚く気配など欠片も表さず、けろりとしたもので。むしろ涙よりも好奇心で、少年は瞳をきらきらと満たしていた。当然のことながら、そこに睡魔の忍び寄る隙は、ない。
「だってあそこは、くらいだけだ。くらい、と、こわい、はイコールで結ばれるものじゃないって、僕は知っているから」
 場所の説明をしていた墨人がふいに悪戯っぽく目を細めると、つられたようにぶーちゃんIIも小さく笑む。墨人が暗がりの中ではっきりと掴んでいた答えは、子供とこぶたが初めて出会った夜にはもう、獲得していたものだった。
「それで、ちょうさしたんだ。何もかもがめあたらしくて、知らないものばかりだったから。確かにまっくらではあった、でもそのうちに夜目がきいてくるものだし、むしろ逆にくらいおかげで、指先だの鼻だのは、いつもよりとぎすまされていた気がするよ」
「視覚が鈍ったぶん、他の感覚が鋭くなったんだね」
「うん」
 探求の心に突き動かされて、最初に指が慎重になぞったのは足元の床板だった。ざり、と目の粗いやすりめいて繊維の毛羽立った木の質感が、鮮明に伝わる。表面を繰り返し辿りながら墨人は、もし泣きながらここをいざり回ろうものなら酷くすり傷をこしらえるのでは、と押入れの先輩たちの膝を冷静に案じた。しかし何より墨人の興味を引いたのは、床から壁へと指が移ってすぐ、その先端を呑みこんだものだった。
 ざらついた床板とは違い、ニスでの加工が施されているのか、壁板はとても滑らかだった。その感触に薄く笑みを浮かべかけた墨人の指は、予期しない陥没へあっという間に滑り落ちた。咄嗟のことに闇の中で目を丸く見開くも、指先は驚きに硬直することはなく、墨人はすかさず状況の把握に走った。
「穴があってね」
 目には見えないまま遭遇した未知の存在に、墨人は語りながらじんわりと口角を上げる。平然とした物言いの中に、うっすら熱が含まれ始めていた。
「床に近い、とても低いいちに、穴が開いていたんだ。僕の手首まで、すんなり入ってしまう大きさで……指の歩いていた道が、いきなりなくなったみたいだった」
「それはまた」
「おもしろかった」
 こらえきれず、小さな笑い声を少年は零す。志も高く探求の旅に出た五本指探検隊が、何者かの仕掛けた罠に陥り危機を迎えている、といったお伽話じみた光景を、つい思い浮かべてしまったためだった。
 けれど、墨人が直々に指揮を執る探検隊は、そのくらいでは挫けない。
「一体どこへつながっているのかと思って、更に突っこんでみたけれど、手首まで入ったあたりで別のかべに行き当たってしまう。奥行きはさほどなかったね。何人もの子供が触ってきたからか穴のふちは傷んでいて、ささくれた木の断面もすりへってしまっていたから、指でなぞっても怪我の心配はなかった」
「なら安心」
「ああ。せんぱいたちの、努力のたまものだ」
 思わぬ出来事にも怯むことなく、むしろかえって探究心を掻き立てられて調査を続けた結果を、墨人は生き生きと報告する。穴の位置や大きさからその由来を推察するうち、押入れがその体内に呑みこんできた数多くの子供たちと繰り広げてきた、長い戦いの歴史を垣間見た気がして、舌の回る速さを緩やかに増しながら墨人はますます笑みを深めた。

 押入れの足元は、いかにも肌を傷つけそうなざらついたもので、決して過ごしやすい環境とは言えなかった。けれど広さの点では申し分なく、保育園へ通う年頃の子供ならば、足を伸ばしてゆったり横になれる。あと問題にされそうなのは室温についてで、これに関しては季節によって差が出ることは簡単に予期できるものの、少なくとも墨人の入った日は快適だった。
「布団をしけば、あそこはすばらしいベッドになると思うね」
 数時間に及ぶ調査を重ねた墨人が、辿り着いた結論だった。
 一睡もせず、しかも笑みを絶やさず、ひたすらに文字通りの暗中模索を続けていた子供を開いた扉の中にみつけた大人の表情を、光に目の眩んだ墨人は知らない。特に知りたいとも思わない。だから少年は、子供の声へ真摯に耳を傾けてくれるこぶたへ、熱心に語る。
「有名な猫型ロボットだって、そうしているし。昔から押入れは、ベッドとしてゆうしゅうなのかもしれないね。あと穴もあることだから、アリスがいても良さそうだ」
「アリスが入るには小さいかもしれないねえ」
「例の飲み物があるさ」
 押入れ活用方法についてあれやこれやと意見を交わすのは、墨人にとって非常に意義深いものだった。短い時間ではあったけれど、あの空間に滞在することで幾つも未知なる発見があった。それについて新たな視点から触れなおすことは、まだあちこちに隠された小さな気泡じみた未知をみつけだし、ぱちんとはじけさせれば再び新鮮な驚きが溢れだす。
 知らないものを知ることを、探検隊の隊長は胸の奥で、密かに喜ぶ。奥の奥で澱んだように漂っている、不条理に対する諦めと怒りをそれで解消するのではなく、いっそ覆ってしまおうと少年は決めた。たちの悪い棘のような痛みが後に残っても、それは仕方のないものだから呑みこもうとする墨人へ、こぶたが言葉を投げかけた。
「何があろうと、お昼寝しなくちゃいけない、というのはさ」
 誰かがいつの間にか定めていた世界の決まりを、納得はしないものの受け入れようとした、悪く言えば自分をごまかそうとした胸の内を見透かされたようで、墨人は一瞬ぎくりと顔を強張らせる。しかしそんな少年の静かな動揺を知ってか知らずか、ぶーちゃんIIはのんびりと続ける。
「きみの、体の成長を促すため、という考えも、あるかもね」
 墨人は、聡い少年であったから。小さな子供が、昼間に何時間か眠らなければならない、というのは勿論知っている。けれど、その理由までは深く考えたことがなかった。漠然と『眠るもの』だと思っていただけなのを、さらりと横目で見やってきたぶーちゃんIIに気づかされ、墨人は今更のように目を丸くする。それと同時に、少年は胸に巣食う霧が、朝陽と朝嵐に吹き払われた気がした。
「―…花が、夜の暗さがなくては、眠らなくては開かないっていう。あれ?」
「そう、それ」
 家の物置で埃をかぶっていた本棚から奪ってきた本を読んで得た知識を、そろそろと例えで用いると、あっさりこぶたは頷く。その返事に、己の認識に間違いはないと裏づけされて安心すると同時に、墨人は複雑そうな面持ちで眉を寄せた。
 ごく僅かな例外を除いて、墨人は基本的に大人を信じていない。諦めている、と言ったほうが真実に近いのやもしれない。墨人よりも長く生きてきた人々は、その大半が年齢や外見で全てを判断し、少年と同じ目線で対等に話を聞くつもりなどない。子供だから、と酷く甘ったるい声で言葉を異常に噛み砕いて話しかけてくるさまを、例えそれが気遣いから生じたものだとしても墨人には単なる侮りに思えた。そして、たまにこちらの意見に耳を傾けたかと思えば、即座に否定してきたり下手をすると憤慨してくるありさまで。そんなことを、墨人は両手の指では足りないほど経験してきた。
 墨人は墨人なりに、真摯に、一生懸命に話をしてきた。それでもことごとく返されるそんな反応に、やがて深く失望した。そうして、もう大人に対して期待をしないようになった。「あの人たちは分からないし、分かろうとしない」というのが辿りついた結論だった。けれど。大人は大人なりに、考えがあったと、こぶたは示す。
「花も人も、同じなんだねえ」
 興味や関心を失い、最早いっそ空気のように感じていた大人たちへ向け続けていた、ぴしゃりと閉ざした扉の態度が少し揺らいだ。相手の事情や理由について腹の底から納得したわけではないけれど、うっすらと理解を始め、すり足でにじり寄るように、近づこうとする。分かろうとしない相手を、こちらから分かろうとする気持ちがほのかに湧いたためだった。
 根深い疑念をまとわせた歩み寄りには、「ああはなりたくないから」という反面教師じみたものが原動力として働いていた。その点において、保育園教師たちは立派な教師としての役目を果たした、と言えるのやもしれない。
「…………いちり、あるのか」
 一度きりの判断で結論をくだしてしまう前に、何度でも何度でも、別の視点から鑑みる、という教訓を胸に刻みながら、少年はぽつりと呟いた。
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