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ひねもすのたのた

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『ヴィクトリアの小路をきみとオムニバスで(前半)』


でーきまーしたー!
ヴィクトリアンなお話四つ、まとめられました。


書きながら、幾度「……わたし何書いてるんやっけ?」となったことか。
ジョジョですのに。ジョジョのはずですのに。
なぜわたしはアフタヌーンティー作法にはじまり階級による文化的な違いやら爵位の成り立ちだの継承に関する決まりやカントリージェントルマンの正しい意味とその暮らしぶりについてなどなど調べていたのか。
そして調べるたび「この国めんどくさいな!」と漏らしていたのはひみつ。
や、でも今も書いたり読んだりしながら思います。
あの国めんどくさい。英国めんどくさい!
とはいえ。なかなか楽しく、書くことができました。
一人タイムアタックも、なかなか面白かったですしね。
多少は粗くても良いなら、三日でいけるものだと判明しましたし。
指の速度の現時点限界が、少しはつかめてきたでしょうか。

ヴィクトリア朝資料、読むのとても楽しかったのですよ。
……まあ、全ての本がそうでは、ありませんでしたけれど。
幾つかは大変楽しめたのです。
自覚がないだけで、あの時代に関る本を、そこそこ読んでいたようで。
さらっと読んだ時は気づかなかった細かな点が色々と判明して。
やっとのことで正確な意味に気づけたのやもしれません。
オルコットはどんぴしゃであのあたりのようですし。
モンゴメリはもう少し時代がくだるのでしょうか?
でも参考資料なんかにもありましたし、繋がっているのですね。
そして更に驚いたのは、ド・モーガンでした。
わたしここ数年で知った作家さんですけれど、モーガン大好きで。
そしたらとっても有名な家系だそうじゃないですか。
何気なく読み返したモーガン作品の後書きに、記述がありまして。
ヴィクトリア朝の作家とも繋がりのある有名人と知りました。
改めて知る予想外な事実に、すっかり嬉しくなってしまって。
ついつい、今回のお話にも加えてしまいました。
だって、もしかしたら紳士たちと出会っているのやもしれません!

短編集のつもりが予定よりやや長くなり「ああ…」となりましたが。
次のお話へ繋がる、種も幾つかしかけられました。
ただ題名のつけかたにはやや不満が残りますが。
こんなものかしら、と全体は納得しつつあります。
また後日、単語の解説つけますね。
解説などは、無粋になるかなあと思うのですけれど。
ええ、いちいち後で説明するより、きちんと本文で語れということです。
ただ今回に限っては、ヴィクトリア朝由来の言葉も多いので。
蛇足やもですが、後日、こそこそ書いていようと思います。

例によって例のごとく前置きが長くなりました。
紳士と淑女のお話。続きにありますので、よろしければどうぞ。
……と思ったのですが、忍者さんに「続き多すぎるよ!」
と悲鳴を上げられました。うんごめんなさい長かったです。
しかも本文に載せても「無理!」と言われました。
ので。やむなく前編後編で分けました。二つずつ。
今度こそ、よろしければ、お進みください!







『物言わぬ狼はおしゃべり』

 かつん、こつん、と石畳に二種類の音が響く。靴の踵が鳴らす音と、杖の石突が叩く音。どちらもロンドンの街ではごく当たり前に聞こえてくるものであるけれども、その人物が撒く音は他に比べて、どうも奇妙に強張っているようだった。もしかすると、緊張のあまり口をへの字にまでしてしまっているスピードワゴンの心情が、体の内側を伝わり、手や足から音という形で滲み出ているのやもしれない。
 おのぼりさんじみて、つい周囲をきょどきょど見回したくなる衝動を、青年は必死に堪える。油断すると、すぐにでも動いてしまいそうな頭部を気力で固定し、今はただ、前へ足を動かすことのみ考えようとしていた。ただひたすら、目的地へ到達することだけを。
 どこかぎこちない歩みを進めながら、自分自身を相手に一人孤独な戦いを繰り広げていたスピードワゴンだったが、やがて、とある建物の前へ辿り着く。こうして無言の取っ組み合いはひとまず、一時休戦となった。

 青年は思わず、あんぐりと口を開いて、その邸宅を見上げた。見上げなければ、見ることは、できなかった。
 偉大なる女王陛下に導かれ、輝かしい繁栄の日々を謳歌する大英帝国、その都の只中で。名のある通りへ面しているにも関わらず、たった一軒で番地を二つ三つばかりまたいで、屋敷は建てられていた。驚くべきはその規模だけでなく、全体の設計についても、非常に手がこんでいる。特に、磨き上げられた多くの窓を飾る枠や、二階に広くしつらえられた露台の手すりに施された彫刻は、スピードワゴンには不必要とさえ思えるほど細密なものだった。
 たっぷりとした豊かさの気配を溢れさせてはいても、漂う品の良さから、見る者に嫌味さを感じさせない瀟洒な館だった。とはいえ、数時間前に暗黒街を出立したばかりの青年にとっては、肝が冷えるほどの威容に他ならない。押し寄せる圧倒的な存在感に、じわじわと顔が引きつってゆくのを、スピードワゴンは押さえることができなかった。恐る恐る懐から取り出した手紙へ、確認のため目を落とし、眼前の豪邸と番地を照らしあわせてみる。何度読み直しても、見紛いようもなく、目的地は、そこだった。
 青年は、その名が畏怖と共にイギリス中へ知れ渡っている食屍鬼街の顔役とは思えないほど、見捨てられた子供じみて玄関前で途方に暮れる。しばし立ち尽くしたままでいたものの、多くの部下を従える闇家業の人間として、いざ腹を括ると決断は早い。圧しかかってくる巨大な壁を、拳一つで打ち砕こうとしているような錯覚に襲われながらも、覚悟を決めて扉を叩こうと手を伸ばした。
 が。艶やかな飴色の木目にあと少し、というところで、緩く握られた手は動きを止めてしまう。内心で酷く葛藤しているのか、迷いに囚われた拳が、中空で微かにわなないている。しかし、再び思い切って奮い起こすと、今度こそはと扉に向けて下ろす。
 と。
「スピードワゴン!」
 ノック音が立てられるより僅かに先んじて、内側から扉が開けられ、それと同時に耳慣れた声が青年の名を呼んだ。温かな親愛に溢れた、何よりの歓迎が、穏やかに顔をほころばせたジョナサンからもたらされる。手紙の差出人にして、この邸宅の主である若きジョースター卿に出迎えられ、ようやくスピードワゴンのいかり肩から、ふっと力が抜けた。
 不慣れな街角の、見慣れない世界で待ち受けていたのは、友人の朗らかな笑みだった。


 「窓から姿が見えたものだから」と、にこやかに話すジョナサンに導かれるまま中へ通され、客間へ辿り着き、すすめられた椅子へ腰を下ろした途端、スピードワゴンは長い息を吐きながら背凭れへ寄りかかる。
「もしかして、迷ったのかい? 随分と疲れているようだけど。番地が分かりづらかったかな」
 友人の顔に疲労の色があることへ気づき、向かいにゆったりと座りながらジョナサンが漏らす。いたわりを含んだその声音に、スピードワゴンはのろのろと力なくかぶりを振る。
「いやあ…まさかおれの人生で、ウェスト・エンドからお招きされることがあるたぁ、思いもしなかったもんで……」
「そんな。ロンドンは、きみの庭みたいなものだろう? ぼくよりよっぽど、地理には明るいだろうに」
「ジョースターさん、確かにおれぁロンドンっ子だけどよお、街一番の暗黒街と屈指の高級住宅街じゃあ世界が違いすぎますぜ……」
「そんなものかなあ」
 腑に落ちかねる、といった表情で、さも不思議そうにジョナサンが首をひねる。どのような場所であろうと、ジョナサンの鷹揚としたさまは変わらない。常と同じ慕わしいものを前にして、スピードワゴンは張り詰めていた心がほぐれてゆくのを、はっきりと感じた。しかし同時に、ここへ至るまでの過程がじわじわ思い出されると、また眉を頼りなく八の字にしてしまいそうだった。

 山あいの町で長い長い死闘の夜を乗り越えたジョナサンが、新たな生活を送るのに選んだのは、焼け落ちたジョースター邸のあったリヴァプールではなく、ロンドンだった。広大な土地に建てられた累代の壮麗な屋敷とは異なる、街での暮らしに特化した別宅があるためだった。後ろ盾や親族のいない貴族の跡取りが一人で家の再興を図るには、最適な出発点だとジョナサンは考えたらしい。またそこは、貴重な家伝の品々や親しい人々、また青春の残滓など、ありとあらゆるものを失ったジョナサンにとって、今や唯一と言って良いほど、残された思い出を感じることができる場所でもあった。
 そんな大切な拠り所へ、邸宅の新たな主はスピードワゴンを招いたのだった。
 格式ばった招待状ではないものの、触れただけで質の良さが分かる象牙色の封筒が届き、そろそろと中身に目を通すや、青年は椅子から引っ繰り返るほどの動揺に見舞われた。まさかの、ロンドンが誇る有数の高級住宅街よりの手紙だった。同じ街とはいえ、自分とは一生縁がないと思っていた場所から「まだこちらへ移ってきて日が浅いので、色々と教えて貰えたら」と、伸びやかな文体でお誘いの案内が綴られていた。
 これには、さしものスピードワゴンも頭を抱えた。食屍鬼街ならば、悠々と肩で風を切って歩けるものの、ウェスト・エンドが相手では話が違いすぎる。どのような態度で、また服装で行ったものか見当もつかない。当初スピードワゴンは取り乱した様子で、周囲の人間を片っ端から捕まえては訊ね回ったものの、場所が場所だけに勝手を知ったる者など当たり前ながら皆無だった。
 己が恥をかく分には、いささかも構わない。しかし。もしその、ある意味特殊な住宅街に自分が入りこむことで、通りの調和を乱し、暗黙の作法を破ろうものなら、招いた主人であるジョナサンの顔に泥を塗る結果になってしまう。それだけは何があっても避けねばならない、とスピードワゴンは強く誓った。覚悟した青年のとった手段は、エリナに助けを求めることだった。
 最早、泣きついたといってもおかしくはないほど、追い詰められた心情を赤裸々に書き送る。便りを受け取ったエリナは即座にスピードワゴンの窮状を察し、すぐさま愛用している寄木細工製の書き物机へ駆け寄り、蓋を開くとペンを握った。
 医者の家系という、上層中流階級に属するペンドルトン家の令嬢でありながら、自らの手が荒れるほど働く機会さえもっていた彼女は、病院であらゆる階級の人間を見てきている。切迫した状況に陥っているスピードワゴンへ、エリナは青年の求める答えを、てきぱきと記して返事を出した。柔らかなエクリュ色の手紙が届いた途端、スピードワゴンは封筒を破らんばかりの勢いで便箋に飛びついた。
 食い入るように読み進めたその文に曰く。正式な招待状でないなら、さほど構える必要はないこと。紳士として訪問するならば、帽子と杖を欠かしてはいけないこと。杖の意匠が気になるようなら、とにかく簡素なものを心がけること、材質に関しては背伸びせず手近なもので無理をしないこと。手持ちの衣装で悩んでいるのなら、こざっぱりとした黒ならばだいたい乗り切れるので気負いすぎないこと。お茶をふるまわれる段になって、もしスコーンを出されても、決してナイフで割ってはいけないこと。態度については、普段のように堂々としていれば一切問題はなく、とにかく落ち着くこと! などなど。
 声援じみて送られたこれらの助言に、どれだけ救われたことか、正確に表しきる術をスピードワゴンは持たなかった。
 ただ、その便りを、さながら天からもたされた福音のように感じていた。そのお陰でこうして、どうにかこうにか心穏やかに、友人と言葉を交わすことができているのだから。

「しっかし、ジョースターさんがロンドンに住むって聞いた時は驚いたもんですが……こんなに立派な屋敷があるってんなら、納得だぜ」
 少しは余裕が生まれたのか、室内をきょろきょろ見回しながらスピードワゴンが口を開く。
 先祖代々の本拠であったジョースター邸とは雰囲気も大きさも異なっているものの、ロンドンの邸宅も調度は洗練されたものが揃っている。特に暖炉は見事なもので、色彩豊かなタイルが施されており、マントルピースには写真立てや東洋風の小さな磁器の壷、そして釣鐘型の硝子に覆われた置時計のグラス・シェイドなどが飾られている。思い出の品々らしいこれらのものは、重厚さの代わりに親しみやすさを室内にふわりと与え、それらの隙間にそっと据えられた小さな花器から顔を覗かせる待雪草が、『雪の雫』の名に相応しい清新さも加えている。
 一人きりの御曹司が再出発を志すには、いかにも似合いの城といえた。
「このタウン・ハウスは社交の時期や、父が仕事でロンドンに出る時なんかで使っていたんだ。でもぼくら―…ぼくは、寄宿舎にいたから時々来るくらいで、あと社交にもさほど熱心ではなかったし。実のところ、ぼくはあまり長逗留したことがないんだよ」
 まさか、こんな形で住むことになるとは思わなかったけど、と微苦笑まじりにジョナサンが話していると、部屋へ淡々としたノック音が響いた。一旦、言葉を区切ったジョナサンが客人に視線と表情で軽く断ってから席を立ち、入り口へ向かう。そして開いた扉の向こう側と短く言葉を交わしてから、何かを受け取った。
 盆を手にして踵を返し、自分の席へ戻りつつ、ジョナサンは続きを口にする。
「ええと、どこまで話したかな……そうそう。ぼくはこっちの家に詳しくなくてね、だから、実際にどんなものが残っているのかも、今一つ把握していないんだ。新しいものを揃えるにしても、主が手持ちの品を分かっていなくては、指示も出せやしないし……執事が目録を作ってくれていたので、しばらくは首っ引きで確認作業だよ」
 自身が座っていた席の傍らにある卓に盆を置き、音もなく器に銀の茶こしを乗せると、静かに茶を注ぐ。そうして準備ができるとスピードワゴンの卓へ歩み寄り、菓子皿を置きながら、ジョナサンは向かいの卓へあごをしゃくる。
 そこには細かな文字でびっしりと書きこまれた書類が何枚も重ねてあり、これから行われる作業の膨大さを物語っていた。弱ったように眉尻を下げながらも、どこか楽しげなジョナサンから差し出された茶器を受け取りつつ、相手の言葉にスピードワゴンは一瞬ぎくりと顔を強張らせる。しかし、すかさず天啓めいて脳裏に閃くエリナの箴言に支えられ、どうにか踏みとどまると、密かに深呼吸を一つして息を整える。
 すると、自分へ必死に言い聞かせた成果か、多少は落ち着きを取り戻せたらしい。傍らの、とある存在へやっと気づくと、自然な笑みがつい零れた。波紋でないただの呼吸でも人間へこうも影響を及ぼせるのだから、息とはたいしたものだと考えると、おかしみは更に増した。
 ゆっくり伸ばした指が触れ、磁器の皿が、かちゃんと微かに音を立てる。

「……スコーン……」
「丁度、焼きあがったところだよ」
 まだほのかな温もりを宿しているお茶のお供が、二つ、皿の上に仲良く並んでいる。席に戻ったジョナサンは慣れた手つきで割ってみせると、大きな指で小さな銀のナイフを器用に操り、木苺のプリザーヴとクリームを丁寧に塗ってゆく。一連の澱みない所作にスピードワゴンは、これはもう身にしみついたものなのだ、と受けた印象を強くした。
 生まれてからずっと属し続けてきた、上流階級という世界で磨き上げられた品性は、いかなる状況にあろうが決して誰にも奪い取れない。それがまるで、ジョナサンの内側で光を放ち続ける輝石の群晶じみて、スピードワゴンには感じられた。エリナの予測通りとなったスコーンの登場に、内心で腰が引けるやら、むしろ笑いがこみあげるやらのスピードワゴンとは大層な違いだった。
 複雑な視線をスコーンに送っていた青年だったが、ここにきて、ふとあることに気づいた。確認のため、思わず皿を手に取る。
「うん……? ジョースターさん、このスコーン、種類が違ってやしませんか?」
 皿に盛られた二つのスコーンは、どちらも見事な黄金の焼き色を見せている。綺麗に入ったひび割れは、狼の口そのもののように、タウン・ハウスの台所を預かる料理人の腕前を高らかに告げていた。しかし完璧な焼き加減は同じでも、表面の滑らかさといった質感や艶の出方、また全体の形などは、それぞれ微妙に異なっている。似て非なるものたちについて指摘されると、ジョナサンはにっこりと表情を和らげて、手にしていたスコーンを皿へ一度戻す。
「そうなんだ。ぼくの故郷である北部のほうは、少し硬めのが普通なんだけど、ロンドンは柔らかいのが好みなんだってね。イートンで食べたことがあるから、馴染みはあるはずなのに。こっちの家のみんなに言われるまで、すっかり忘れてしまっていたよ」
 卵やバターを惜しみなく、たっぷりと用いてふわふわに焼き上げられたロンドン風スコーンを手に取りながら、ジョナサンは慈しみに満ちた目を細める。
「普段は、ぼくの好みに合わせて北部風にしてくれている。けど、今日はぼくの大事なロンドンの友人が来るからと伝えていたら、きみの口にも合うようにって、両方作ってくれたみたいなんだ」
 先程と同じようにスコーンを割り、今度は何もつけずに、はく、と噛み締める。柔らかな食感を楽しむように頬張るジョナサンを前にして、スピードワゴンは大きく目を見開いて、言葉を失っていた。
 ジョースター邸の焼失から現在へ到るジョナサンの事情を聞いていれば、その過程で行動を共にしていたスピードワゴンのことを、その素性も含めて、知らないわけもない。特に、ここの使用人たちはロンドン住まいなのだから、ジョナサンよりも余程正確に、悪名高い食屍鬼街について理解しているはず。なのに、さっきから姿を見せようとしない人々は、それを承知の上でスピードワゴンを賓客としてもてなそうと心を尽くしてくれている。
 代々、お人好しなほど心優しい主の教育が行き届いている影響なのか、彼ら自身の特性なのかは判然としないものの、最早その真心は疑いようもなかった。

 ここまで自身を捉えていた枷じみたものが、ぱん、とはじけたような気が、スピードワゴンはした。
 上流階級の暮らしに近しく接する使用人たちに対して、どう見られるのか、侮られるのか見下されるかと身構えるあまり、いつの間にかスピードワゴンは反感じみたものを抱いていた。長く暗黒街に身を置いてきたがゆえの、自己防衛を根とする敵意みたいなものだった。特に執事などという立場の輩は、きっと澄まし返ったいけすかない奴だと、ろくに知りもしないのに決めつけていた。なのに今は、面と向かって話がしたいとさえ思う。
 お互いに立場が違い、言葉を交わすどころか、まだ顔すら合わせていない。しかし他の何者にも変えがたい、世にも稀なほど高潔な人物を慕い、従っているという点において、仲間なのだという理解がスピードワゴンに訪れた。ついさっきまで、張り詰めた警戒心もあって接し方が全く分からず、玄関先でもし執事に出迎えられたらどうしたものかと悩むあまり、扉を叩くことさえためらっていたとは、とても考えられない思考の変遷だった。しかし、今そこには確かに、親しみが芽を吹いている。
 緩く口角を上げると、スピードワゴンは、はっきりと口にした。
「ジョースターさん。もし、あんたさえ良かったら、この屋敷の人たちに、おれを紹介して貰えねえですかい」
「勿論。彼らも、ぼくの家族だからね。そしてきみは、大切な友人なんだから」
 意を決して放たれたスピードワゴンの願いを、ジョナサンは当たり前とばかりに受け取って言い切る。しかしカップを傾けかけたところで、ふと手を止める。
「あ。でも、すまないけど、明日まで待って貰えるかな。エリナにも言われているんだ」
「え?」
 何故ここで唐突に、スピードワゴンにとって天の御使いじみた人物の名前が出るのかと、目を丸くしているとジョナサンは更に続ける。
「手紙がきたんだよ。品物の整理や確認に手間取っていると送ったら、女性ものの勝手が分からないなら手伝いに行く、と言ってくれて。……その、いつか、彼女が、住む場所でもあるし。是非お願いするよと、ぼくが頼んで、ね。ロンドンの病院にお使いへ行く、っていう名目もペンドルトンさんがこしらえてくださったそうで、つまり旅行の許可は無事に下りて、明日、ここに来るんだ。それで、せっかくこっちのみんなと顔合わせをして、全員と挨拶をするのなら、きみと二人揃ってからのほうが、二度手間にならなくて良いだろうって。家のみんなの手を、いちどきに止めてしまうわけだからね」
 話すうち、やや伏し目がちになると、愛しい婚約者の来訪を思ってか、頬がほんのりと朱を帯びる。しかしそんな緩んだ表情を打ち消すように、ジョナサンは慌ててカップを口元へ運ぶと、照れごと中身を飲み干して、声を張る。
「だ、だから! 今日の出迎えだって、本来なら使用人の誰かがするのだけど、明日までは顔を合わせないように、ぼくが自分で出たほうが良いって、便りに書いてくれてたものだから。実際にしてみると、招いた側が心からの歓迎を表すなら、主が直接迎えるのも良いものだね」
 流石はエリナだ! と、新たな経験を楽しみながら、ほくほくと淑女を讃えるジョナサンは、明日のことを思ってすっかり胸を弾ませているようだった。すっかりご機嫌な紳士を見やりながら、暗黒街の青年は思わず慣れない祈りの文句を小さく呟いた。
 階級の差により発生する世界の違いに、スピードワゴンがたじろいでいるのを、手紙の内容からエリナは把握していた。しかしそこから更に読解を進め、暗黒街の青年が使用人を相手に身構えてしまうだろうことや、いざ対面するにしても場を整える必要があることさえ、エリナは見抜いていた。その千里眼じみた明敏さに、スピードワゴンはもう胸の内で聖なる淑女を拝まんばかりだった。


 そして、翌日。
 リヴァプールからの旅を経て、名目上は父の使いで、本当は新たな邸の整理を手伝う、という密かな役割を帯びて、エリナは応援に駆けつけた。馬車から降りた彼女を、待ち侘びていたジョナサンは玄関先で出迎えると、しばらくはお互いに微笑みながら、短く言葉を交わす。しかしやがて、押さえきれなくなったか、ジョナサンはたまらずエリナを抱き締めた。既に邸内へおり、ジョナサンの後ろに控えていたスピードワゴンが慌てて回れ右しようとするも、恋人たちの喜ばしい邂逅は一瞬のことで、二人は淡く頬を染めたまま寄り添いあい、扉をくぐった。
 ずらりと居並ぶロンドンの家族たちへ、ジョナサンは満を持して大切な人たちをお披露目した。若きジョースター卿のすぐ傍らには、そう遠くない未来のジョースター夫人がおり、彼ら二人の側には、昨日にも邸を訪れていた青年の姿があった。
 ジョナサンが使用人たちの名前を一人ずつ呼び、紹介してゆくのに、スピードワゴンは落ち着いた態度で僅かに笑みさえ浮かべて、ゆったりと応対する。挨拶を終えたスピードワゴンが振り返り、絵に描いたような幸福に満ち溢れた恋人たちへ視線を向けると、さも嬉しそうに微笑んで青年を見守っていたエリナと目が合った。二人はそっと、悪戯の共犯者じみた、意味ありげな視線を交わす。
 そこにもまた、同士をいたわるような親しい繋がりがあった。





『輝石と沙礫の時計に針はない』

「わあ」
 かたん、という軽い音に続いて、漏れ聞こえてきた素直な感嘆の声に、エリナは視線を落としていた手元の目録から顔を上げた。

 長年に渡り、ジョースター家は、女主人を欠いていた。しかし、かつて社交の時期には華やかに交歓が繰り広げられただろうタウン・ハウスには、高貴な花たちを艶やかに飾ってきた品々が、今なおたっぷり秘められている。銀器やワインの類なら、信頼できる執事がきちんと管理をしてくれているので、問題はない。しかし何分、女性の装飾品などについては、それなりの審美眼を持つ淑女でなければ、取り扱いに関して最終的な判断をくだすことができない。
 そんな、致命的なまでに貴婦人のたおやかな手を持たないジョースター家に、エリナは招かれた。自ら控えめに名乗りを上げた所為もあったが、彼女の提案に若きジョースター家の主が、どれだけ喜び、また切実に救われたことか。それは懇請を受けてやってきたエリナが、太陽のように晴れやかな微笑みと力強い腕に出迎えられことからも明らかだった。そして彼女は今、愛しいひとと共に、眠りへついていた品を揺り起こしては顔を確認して回っている。
 ジョナサンが小さく声を上げたのは、そんな時だった。
「ジョジョ?」
 衣装棚の扉を開けたり、あちこちの引き出しを触ったりしていた婚約者を柔らかに呼ぶと、返ってくるのは宝石よりもきらきらしい笑顔だった。幼い頃からちっとも変わらないそのさまにつられて、ついエリナも顔をほころばせる。
 ジョナサンは天青石の瞳に熱っぽい好奇心を宿して、声を弾ませる。
「エリナ、これをご覧よ!」
 大きな体から、うきうきと落ち着かない喜びを溢れさせるはしゃいださまから、何か特別なものをみつけたのだと彼女は即座に察する。しかし、ここは確かに貴重な品に満ちた部屋ではあるけれども、男性であるジョナサンが格別に興味を抱くようなものなど、ないはずだった。念のため、ざっと目録の内容を頭の中でさらってみても、やはりエリナには何も思い当たらない。不思議に感じながらもジョナサンの隣へと歩み寄ると、ほら、と秘密を囁くように何かを指し示される。そうして促されるまま目を向けて、その品を視界に入れるや、彼女は思わず言葉を失った。
 まるで海賊の隠し財宝でもみつけたように、ジョナサンが心を躍らせるのも、無理はなかった。
「まあ」
 ようやく捕まえた言葉は、先程ジョナサンが零した嘆声と大差ないもので。その後に短く続けるのが、やっとだった。
「なんて、美しい……!」
 口元へ添えられた指をすり抜けて、甘い溜め息と共に落とされた感想へ、ジョナサンは同意するように笑みを深める。
 天空の瞳と、露草の瞳と。二対の青い双眸に映るのは、大粒の葡萄ほどもある色とりどりの宝石たちが、精緻を極めた金細工の装飾と共にちりばめられた、目も眩むばかりに豪壮華麗な首飾りだった。


 目録を手に取ったジョナサンは、何枚かめくると、ほどなく求めていた項に辿り着く。まだ昂揚がおさまらないのか、感心しきりに声を上げる。
「そうか、ここに書いてある『Regard』って、この首飾りのことだったんだ! 最初に目を通した時は何のことだか、ちっとも分からなかった。父さんから話には聞いたことがあったけど、実物は初めて見たよ……こっちの家に保管してあったんだね。ぼくが知らないわけだ」
 人差し指で紙の上をなぞりながら、一人で興奮気味に呟くと、一人でいかにも得心がいったとばかり盛んに頷く。ジョナサンのしみじみとした言い回しに、ここまで首飾りにすっかり目も心を奪われてしまっていたエリナが、ようやっと我に返る。
「リガード?」
 ジョナサンが口にした首飾りの名称は、随分と風変わりなものだった。尊敬や好意、といった意味の単語に、それ以外どのような含意があるのかと、エリナはおうむ返しにしながら小首を傾げる。ただうっすらと、聞いたおぼえがあるような気もした。ジョナサンに問いかけながらも、一体どこで、と思案を巡らせて記憶の底から掘り起こす作業も並行して続ける。
 恋人から答えを求める眼差しを受け、新たな発見に胸を高鳴らせている学者気質の彼は、うずうずと堪えかねたように語り始める。
「うん。これは、リガードの首飾りと言ってね。昔、父さんが母さんへ贈ったものだそうなんだ。色んな贈り物をしたけども、中でも一番、母さんが気に入っていた品だと聞いているよ。―…ロンドンの家に置いていたということは、母さんを亡くしてから、見るのがつらくてジョースター邸からは遠ざけていたのかもしれないね」
「お母様の……」
 あまりの絢爛さにあてられて、自分のものでもないのに心浮いてしまっていたエリナは、語られる来歴に、すう、と冷え冷えするほどの落ち着きを取り戻す。
 幼い息子を遺してゆかなくてはならなかった若い母親、そんな妻を生涯に渡って愛し続けた父親。首飾りにまつわる夫妻の濃やかな心や思い出も知らず、はしたなく接してしまったと、エリナは羞恥に顔を赤らめてしまいそうだった。
 恐縮してしまったのか、今にも俯いてしまいかねないエリナの心情を、ジョナサンはさらりと見抜く。だから彼は、気高く己にも厳しい淑女をいたわるように、話の方向を別に持っていこうと、やんわり誘導を試みる。

「さて、エリナ。どうしてこれが、『リガード』なんて名を冠されていると、貴女は思いますか?」
 わざとおどけを含ませた声音のくせ、今から講義を始めるような、しゃちほこばった口調で首飾りを指差す。突然がらりと空気を変えられて、一瞬エリナが面食らった顔をするが、すぐ側でジョナサンがにこにこと微笑んでいては、いつまでも暗い様子などしていられない。ほらほら、と急かされると、咄嗟に視線で追ってしまう。
 その素直な反応に、ジョナサンはくすりと表情を和らげてから続ける。
「この首飾り、よく見てみると、おかしくはないかな。確かに宝石はたくさんつけられているけど統一性がなくって、全体として法則が見出しにくいよね」
「あら、本当」
 全体の煌びやかさに気を取られていたものの、ジョナサンの指摘に従って眺めてみると、輝きの中にある奇妙な点へやっと目が留まる。
 非常に奢侈な作りをした首飾りであることは、疑いようもない。しかしその意匠は、様々な宝石類を見てきたエリナでさえ、お目にかかったことがないものだった。一般的に好まれる左右対称の形状にはなっていないし、またジョナサンの言う通り、石の種類がまちまちで、どのような理由で選ばれたのか判断することが難しい。一つ違和感に気づくと、糸を手繰るように次々と、不可思議な箇所が浮かび上がってくる。
 表層的な華やぎではなく、その裏に隠されたものへ興味を引かれ、ついつい真剣に見入りだすエリナのさまへ、ジョナサンは満足げに相好を崩す。そんな彼女の手を引いて、更に探求の園へと連れ出すように、ジョナサンは新たな謎を撒いてゆく。
「石の大きさは揃えられているのに、彩りについては、てんでばらばらだ。配色の均整がとれているとは、ちょっと言えないね。もし良かったら、端から順に、挙げていってみてはくれないかな」
「勿論、構いませんわ。ええと……」
 ジョナサンに優しく誘われるまま、そして自らの内側に込みあげる好奇心の赴くまま、エリナは大粒の宝石たちを一つずつ呼び上げようとする。細い指先は、手袋の下で綺麗に整えられているその爪よりも大きな玉を相手に怯むことなく、また卑屈になることもなく、堂々と向かいあう。そっと奥に、敬愛の念を含ませて。
 窓からの陽射しに煌く輝石たちを静かに眺めやり、エリナはゆっくりと唇を開く。
「紅玉。それに続いて、翠玉。柘榴石に、紫水晶。赤色が二種類もありますのね。次は…もう一度、紅玉。そうして最後は、金剛石」
 横たわる首飾りの側を、ゆるゆると指で辿りながら、口にする。しかしこうして実際に、音として発してみると、ますますもって共通点の所在が分からなくなる。何せ赤系統の色が二種類もある上に、同じ石が二つはめられているのに決して対称をなしてはいないことが、謎の深さに拍車をかけていた。
 名前を呼び終え、それでも謎は解けず、麗しい眉と眉の間に皺を寄せてしまいそうなエリナの横で、ジョナサンは楽しげにペンを走らせる。その音に引き寄せられて隣を見やったエリナは、彼が隠し切れない微笑みをそのままに、目録の欄外へ書きこみをしているのに気づいた。
 何を、と彼女が問うのを制するように、ジョナサンは自信たっぷりに、書いたものをエリナの前に広げてみせた。
「エリナ。これらの頭文字に気をつけながら、もう一度、首飾りをご覧」
 彼女は再び小首を傾げそうになるが、輝くばかりの笑顔で頼まれては、僅かばかりの疑念など容易くとけていってしまう。ゆっくりと、さっき口にしたばかりの単語を、繰り返す。
「? Ruby…Emerald、Garnet、Amethys……!」
 指も、声も、最後まで辿る必要はなかった。読み上げきる前に意図を理解したエリナは大きく目を見開き、息を呑む。そうして同時に思い出す。
 『リガードの装飾品』という存在を初めて知ったのは、小さい頃に友達から借りた雑誌だった。ガールズ・オウン・ペーパーが語るに、それは紳士が淑女に贈るという特別な品で、石に込められた熱烈な愛の誓いに幼い彼女はうっとりと頬を染めたものだった。少女の夢見たロマンスの宝物が今、そこにある。
 はじかれたようにエリナが見上げた先では、燦々と降り注ぐ太陽の微笑が、彼女を待ち受けていた。
 しゃらん、と涼やかな鎖の音を鳴らしてジョナサンは首飾りを持ち上げ、慈しむように見やった。
「首飾りを贈ると同時に、父さんは、心も贈ったんだね」


 宝石の一粒一粒へ、溢れるばかりに持っていても伝えきれない感情を託して、捧げた。彼の知らない家族の歴史を知る証人を、そっと眼前に掲げるジョナサンの隣で、エリナも淡く笑みを刷く。
「そして、お母様はそのどちらも喜ばれて、愛されたのでしょう」
 寄り添うようにエリナが言うと、ジョナサンは手にしたものをそのままに、くるりと彼女へ向き直る。どうしたのかしら、とエリナが思うより早く、ジョナサンは小さく「きみに」と口にしながら、掌中にある遺愛の品を恭しげに淑女の首へ回そうとする。しかし、その手は突然、動きを止めた。
 ジョナサンはしばし難しい顔をして、何やら考えこんだかと思うと、呟いた。
「……ぼくがきみに贈るなら、『Dearest』がいいな」
 さらり、と。何一つ気負うことなく零された、大胆この上ない発言に、エリナの頬が鮮やかな薔薇色に彩られる。しかし放ったとうの本人は、さも名案を閃いたとばかり、生き生きと表情を輝かせる。
「そうだ! 一度、このリガードの首飾りをほどいて、新しく作り直してみようか! 文字数が増えるけど、共通しているものも多い。少し足したらDearestにできるよ! 壊すんじゃあないんだ、受け継いだものへ次の世代の息吹を与えて、改めて輝きを増させるんだ。父さんや母さんから託されたものに、ぼくらの石を幾つか加えて、そしたら古いものと新しいものへ同時に敬意を表することができるよ!」
 熱く力をこめて語られるジョナサンの計画は、新たなジョースター家の再出発を飾るのに、まさしく相応しいものと思われた。考えれば考えるほど素晴らい青写真にジョナサンはすっかり夢中となり、エリナの返事を待ちもしない。こうしてはいられないと、首飾りを両手に捧げ持ったまま、衝動に突き動かされて部屋を飛び出す。
「スピードワゴン! どこか腕の良い職人を抱える装飾品店を知らないかい!? スピードワゴン!!」
 歓喜に満ちた声で友人の名を呼びながら、足音も高く駆ける。そしてすぐさま、別室で執事と話しこんでいたスピードワゴンのもとへ辿り着けたのだろう。廊下を挟んだ向こう側から、うきうきと弾むジョナサンの声と、いきなり目映いばかりに豪奢な首飾りを見せつけられたスピードワゴンの素っ頓狂な叫び声が響くのを、エリナは耳にした。

 どうにか呼吸を整えて、少しは頬の熱が引いてから、エリナはゆったりとした足取りで声の根源へ歩き出す。微笑すれば良いのか、苦笑すれば良いのか、表情の選択に悩みながら、彼女はなぜだか泣きたいような気持ちにもなった。
 あまりにも幸福すぎて。そのひとは、心に決めたことを迷わず貫き、真っ直ぐで、気取らず飾らず。穏やかな物腰の内側に、子供の頃と変わらない朗らかさを抱き続けている、誰より愛しい婚約者。そんな彼と他愛のない話をしたり、穏やかにお茶を楽しんだりして、平凡な日常を過ごす。側にいることができる。ただ、それだけのことで、我が身がはちきれてしまいそうなほどの幸福を、彼女はおぼえていた。
 彼と過ごす日々の一秒一秒すら、聖なるものに祝福されているような気がした。だからその愛おしくも輝かしい砂時計を、一粒ごと数えるように噛み締めようと、エリナは胸に秘めて誓った。
 ようやく追いついて部屋の中へ入ると、真っ先に彼女の鼓膜を揺らしたのは「最愛のひとに『最愛のひと』を贈るんだよ」と、はにかみながらも決意をこめて語る、ジョナサンの声だった。
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