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とまり木 常盤木 ごゆるりと

ひねもすのたのた

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ただ、うつくしいものをみたということ

わー気づいたらもうこんなに日が経ってます。
お話も日記も、一日でちゃちゃっと書けたら良いのですけれど。


ええぶつ森しなけりゃ良いんじゃというツッコミは禁止です。
ピラルクは釣らせてください…ドラドは釣らせてください……。
あとできればナポレオンフィッシュも釣らせてください……!

まあそれはさておくとして、時間の使い方が下手なのでしょうね。
もっと効率的に割り振れたら良いのですけれど。
あと体力のなさもあって、疲れるとすぐ眠くなりがちで。
最近は睡魔を追い払えるほど気力があるので助かりますが。
紐育という名の東京から帰って以来、書きたい気持ちが強いのです。
楽しいから、とか、喜びだから、とかではなく。
ただ書こうと思う。そんな意志があるだけです。

例によって例のごとく前置きが長くなりがちです。
だからすっぱり、美術館であった、とあることだけでも書いておこうかと。
そう、美術館。
三鷹にある、森に囲まれた、かの高名な美術館です。
それこそ建物全部含めて書き始めたら、感想なんて終わりはしません。
かつてゼノオンリ感想で数時間書いても会場に着かなかったわたしです。
入り口をくぐるまで、扉を開くまで、チケットを渡すまで……。
そこまできっちり書いてたら、干支が変わりそうです。
なので、際立って印象的だった、ある出来事だけを。


かの美術館には、ミニシアターがあります。
中央ホールを有する階にあるので、とても入りやすい位置です。
けれど、わたしが行った時間はやや混んでいて……。
もう少し空いてから行こうと、映画は後回しにしたのです。
お陰でたっぷり、館内を見て回ることができました。
心行くまで展示を満喫し、そろそろ歩き疲れだした頃
今ならどうかしらと思い、ミニシアターへ足を向けました。
すると、予想どんぴしゃで、かなり余裕のある状態でした。
ああこれなら安心と中へ入り、背の低い椅子にすとんと腰かけました。
こちらのミニシアターは「はじめてのえいが」がテーマなのですね。
勿論、後で知ったことですが。
真っ暗になる映画館は、小さな子にとっては、怖くさえある場所。
そんな恐怖感を取り除こうと、あらゆる工夫が凝らされていました。
低くて柔らかい椅子、彩り豊かな壁画。
潜水艦のように閉じる窓。最後まで明かりを残す月と太陽の照明。
全ては、小さい人が初めて出会う映画を、楽しめるように。
明かりのことは上映前に、係りのお姉さんの説明がありました。
にこにこ顔で前に立って、気分が悪くなったら…などについても。

上映される月替わりの作品も、短い中に丁寧な手仕事を凝縮した上質なもの。
素晴らしく、「はじめてのえいが」に相応しいもの。
とても誠実で、真摯で。けれど新たな試みに挑もうという気概も忘れず。
短いながらも、たっぷりとした満足感にふくふくと包まれます。
……まあ、一つだけ言うことがあるとしましたら。
わたしのすぐ後ろの席にいた若いお兄さん。
作品の内容に、いちいち嘲笑まじりの声でツッコミいれてた人。
何度かねじりきってやろうかと思いましたがまあそれはもういいです。
もう会うこともないでしょうし、ね。
今度やらかしやがったら無言でねじりきりますが。

上映終了後、感想を言い合いながらわいわいと出て行く人たち。
わたしもその流れに乗って、出口のほうへ向かっていたのですが。
出口の近く…と言いますか、客席の背後にあたる位置。
そこに上映用機材の入った部屋があります。
閉ざされてはいますが、大きな硝子窓があるので、中がよく見えます。
そういえばお姉さんも上映前説明で言っていました。
うろおぼえですが「よければ機械も見て行ってくださいね」みたいに。
先に館内の展示内容を見ていたこともあったのでしょう。
上映用の機材、フィルムに命を吹きこむものを、よく見たくって。
窓に近づいて、中を覗きこんでいました。
そしたら機材以外のものをみつけたのです。
小さな部屋の中、壁のあちこちに書かれた多くのサインとイラスト。
「あ。」と、なりました。

あれはウォレスとグルミット。
そっか前にアードマンの展示もしてはったそうやものね。
監督がお友達やそうやし。
こっちはカーズ…こっちはトイストーリー……ピクサーさん。なかよし。
あとは、あとは。
身を乗り出してみつけた名前に、目を見開いて。
ミッシェル・オスロ? ミッシェル・オスロ監督?
そうそうこちらの方ともなかよしでいらした!
わたしプリンス&プリンセスが好きで!
なのになんで代表作ともいえるキリクと魔女みてないのかしらね!?
その下にもまだお名前があるー! でも達筆な筆記体でよめないー!
イラストから判断つかないかしら…どなたかしら……。

窓にぺっとり両手をついて。
もしかしたら、おでこがひっつきそうなくらいだったのやもです。
まじまじと覗きこんでましたら、ふと声をかけられて。
あわわ入れ替え制の邪魔をしてしまったかもと内心慌てつつ振り返ると。
美術館の制服に身を包んだ、おひげも素敵なおじさま。
サインたくさんあるでしょう、と柔和な表情で。
すみません、覗いちゃってましたと言うと。
何気ない手つきで、扉を開けて。
えっ、と思っていると、ほらここに足をかけてと促され。
言われるまま、開いた扉を押さえる位置へ両足を。
さっきまでわたしと部屋を隔てていた扉を脇へやって。
シアターと部屋を区切る桟の真上に、わたしは立っていました。
身を乗り出すと、機材も、サインも、すぐそこ。
内側の世界。
肩に載っていた三つ編みが宙に浮く。
みつけたはりねずみの姿に、ある名前が閃いて。

あれはミッシェル・オスロ監督ですよね。
そう、宮崎さんは苦労した人が好きでね。
オスロ監督のお名前が見えて、ついて覗いてしまっていて。でも、その下のお名前がどなたか分からなくて。
ああ、あれはソ連の……。
ユーリ・ノルシュテインさん?
そうそう。
霧の中のハリネズミですね。

色んなものが繋がってゆく。
わたしがうつくしいな、と思っていたものが、繋がってゆく。
細い糸で結ばれた小さな豆電球が、一つ、一つ、灯ってゆくように。
いつしかそれらにぐるりと囲まれているような錯覚さえおぼえて。
遠く離れた場所から、うつくしいな、と眺めていたもの。
それが、こんな近くにあって。お互いに寄り添い合っていて。
本当なら近づけるはずもないうつくしいものがすぐそこにあって。
わたしなど手も届かないはずなのに。
触れることもできないはずのものに、呼吸さえ届きそうで。

なんだかむしょうに泣きたくなって。
お礼を言いながら涙が滲んでしまって笑ってしまって。
素敵なおひげがとってもお似合いの、おじさま。
少しだけご自身のお話もしてくださった。
定年退職したら宮崎さんに誘われてね。
このひげも、宮崎さんが言ってね。
わたしは、本来ならありえないようなご親切に、お礼を言うのが精いっぱい。
他のお客さんからうんと遅れて、シアターを出て。
出口すぐの、外へ向かう窓へ歩み寄って。
硝子越しに射しこんでくる、そろそろ落ちそうな夕方の光の中で。
ぐっと唇を噛んで、嗚咽をのみこんで、目元を拭いました。

物語がそこにありました。
夢中で猫の後を追った雫さんが、体も心も弾ませたように。
物語のはじまる時に立ち会うことができました。
後で気づいて、ちょっと笑ってしまったのは。
雫さんが物語と出会った場所は地球屋さん。
わたしが物語と出会った場所は土星座さん。
どちらも宇宙に関わるもの。
しかも、物語の導き手は、どちらもおひげの素敵なおじさまで。
ああ、あそこへ行けば、誰でも物語の主人公になれるのねと思い知りました。

ほんの少しに見えて、実はたっぷりな魔法で、あの中は満たされています。
その魔法はたぶん、ジェーン・エリザベスが父と探したのと同じ。
トロントのジェーン・エリザベスがランタン丘のジェーンになる切っ掛け。
新居を選ぶ最大の判断材料とした、魔法と同じもののはず。
魔法のかかった家があるとしたら、あそこは魔法のかかった美術館。
その魔法で肺の奥まで満たされてきました。

ですから。こんな。
こんな素敵なものをみせられたら、何か書かないではいられないでしょう?

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