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とまり木 常盤木 ごゆるりと

ひねもすのたのた

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二月大降誕祭第四夜

へなちょこけいかく遂行中。
なぜなら二月はお祝いなのですから。


けれど今日はゼノ以外のお祝いだってあるのです。
お誕生日おめでとうございます、エアリスさん。
ゼノはとても大切ですが、エアリスさんはまた別格なのです。
だからイカはさばきたいです。

それはさておき、本日のお話です。
実は、今のところ完成しているへなちょこけいかくの中で。
かなりお気に入りなのが、今日のお話です。
なかなかきちんとまとめられたかなあ、と。
まあ内容は…その……ですが。
ほんとニサン組はどうしたものかと思います。
でも暗めなのは、今日までです。
次回からは頑張ってフォローに回ります。
ここまで暗かった分を取り返します。
特に次回からは、ラスボス回→真ラスボス回となりますので。
凄まじく糖度が上がるため書き手がダメージ食らいます。
暗さを打ち消せとばかりに糖分五倍返し(当社比)な勢いです。

そんな、甘さの前の苦みなお話。

『二律背反キュイジーヌ』(ニサン。エリィ視点)


(セロリ、ポロねぎ。金のブイヨン)
 大きな鍋に、手慣れた調子で様々なものを放りこんでゆく。台所に居並ぶ調理器具の類は、どれも古びてはいるけれど綺麗に磨きこまれて、彼女が慈しむように料理を楽しんでいるのが見て取れる。
(熱いスープを作りましょう。今夜は冷えるというものね。帰ってくるあなたを温められるよう、私はスープを作るのよ)
 ざっと素早く動く指は、ためらわず香辛料やらバターやらの保存場所を寸の間もためらうことなく、過たず取り出してくる。おいしいスープを作ろうとする、今にも鼻歌でも口ずさみかねない彼女の手つきは、どこまでも鮮やかだ。
(セロリ、ポロねぎ。厚いベーコン)
 いつも家で一日絵筆をふるう彼が、今日は珍しく出かけている。なくなりかけた絵の具があるので、色を補充するためにも、顔料を取りに行かなければと言っていた。珍しいことではあるけれども、ありふれたことでもある。結局、彼は帰ってくるのだから。もう少ししたら扉を開けて「ただいま」と、はにかむように彼女へ告げるはず。だから彼女も、ありふれたこととして、じゃがいもの皮を剥き、にんじんを乱切りにする。
(私に料理なんてできない、なんて思う人もいるけれど。実際は、これまで作らなかっただけ。作る機会がなかっただけ。旅の空も長かったのよ、実は得意なんだから)
 彼女をよく知らない人々が勝手にそうと信じこんでいた、不名誉な憶測に、彼女は気を悪くすることもなくただ、くすりと笑う。どこか少し、得意げに。ただの清らかな乙女ではない、ただの穢れなき女ではない。彼女だって、人として生き、呼吸し、時に血なまぐさい場面すら乗り越えて、ここまできた。
(セロリ、ポロねぎ……)
 遠く、声がする。きっと彼に違いない。得意のスープはもうすぐ出来上がり。玄関扉まで駆けて行って、柔らかな光に満ちた部屋の中から出迎えて、おかえりなさいを告げよう。そして決して豪華とは言えない、素朴な、けれど満ち足りた食卓をふたりで囲んで、他愛ない話に花を咲かせ、ちょっとしたことで笑いあう。たったそれだけのこと。
 食後のあまいものに口づけを頂戴、なんて言ったら、あなたはどんな顔をするかしら? などと、悪戯っぽいことを考えながら、彼女は瞼を押し上げた。


「聖母様!」
「ソフィア様!」
「教母様!!」
 とめどなく訴えかけてくる口々、救いを求める声々、熱狂し崇め讃える人々。息も詰まりそうに圧倒的な現実が、彼女の周りを埋め尽くす。一人一人の言葉を聞き取ることも難しく、聖なる女の姿に衝動を押しとどめることができず、殺到する者たちを、護衛の僧兵らが制そうとする。
 瞬く間に騒然とする聖堂の只中で、エリィはふと、ほんの僅かだけ、音を失くしたようにぼぅっと視線を漂わせた。しかしそれも瞬き一つの間。すぐに、いつもの優婉な微笑を浮かべると、彼女を守ろうとした僧兵の腕を静かに脇へ押しやる。そして最前列でもみくちゃにされていた子供と目の高さを合わせようとして、膝を折る。そのさまに、ついさっきまで喧騒に包まれていた群衆は静まり返り、彼女を中心にして遠巻きな輪を作る。
 穏やかに子供と言葉を交わすソフィアのさまに、落ち着きを取り戻した僧兵が、皆へ順番に並ぶよう促す。民衆はその指示へ素直に従い、一列に並び直すと、緊張感を漂わせながらニサン正教教母との謁見を待った。
 尾のない蛇のような列だった。しかし彼女は疲労の色など一切見せず、全ての人々へ平等に接し、痛みを分かち合い、傷を労り、折れそうな心を励まし、微笑み続けた。
(ああ。あの時もそうだった)
 処女雪のように曇りのない微笑をたたえながら、ふとエリィは幼い日を思い起こす。一面が血塗られた日。全身を真っ赤に染めた青年が、彼女の命を奪おうとした日。あの時、彼女は青年の望みが果たされることを喜んだ。それは彼女自身の願いでもあったから。けれど青年は長棍を振り下ろすことなく、ただ彼女を鳥籠から連れ出した。嬉しくもあったけれど、悲しくもあることだった。それは今も同じで。
 女はこの世のものとは思われない、天上にあるような微笑みをたたえて、胸から血を流す。
(私の願いは、いつでも叶わない!)


 無辜の、無知の民は、裏側に流れる血も、女の絶叫も知らない。けれど一方の彼女も、大聖堂脇にある柱の陰で、エリィのためにやはり見えない血を流す絵描きのことを知らない。ソフィアは知らない。
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