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とまり木 常盤木 ごゆるりと

ひねもすのたのた

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食のローカライズって大切だなあとしみじみと


ニューヨークスタイルのスコーン作ってみたのですが。
何…この、分量、何なの……。


詳しくはまた後日書きますけれど。
分量おかしい。正しいけれど分量おかしい。
取り敢えず、一点だけ書くとしましたら。
レシピ本には『8個分』とあった分量で。
実際に、食べやすい大きさで作ると、『15個』になりました……。
アメリカンサイズなの。アメリカンサイズということなの。
侮りがたし、紐育。
ともあれ今日のわたしはスイカでしあわせです。
ふふふ、おそらくは今シーズンファイナルスイカ。
ちょっとちんまりですが、おいしいー。わーい。


こんな流れのままですけれど、昨日に引き続き習作百話です。
はー、これでやっとこさ十話ですー!
何て遠い一割だったことでしょう。
昨日のお話と、対になれたらと。
よろしければ、続きからどうぞです。


『決戦前夜(百夜白夜)』


(うおおおおおおどうすりゃいいんだよおおおおおお!!)
 頭を抱えて、左へ右へじったんばったん、ごってんごてん。夜とは到底思えない、賑やか至極な音を立てて、良橘は痛みを伴わない七転八倒をする。けれど一応、近所迷惑、という言葉はきちんと意識しているらしい。部屋全体を横縦断する勢いでのたうち回りながらも、理性はちゃんと機能していた。本能のまま喉をふるって叫ぶでなく、抑えた声で音も控えて、かすれた咆哮をあげるばかりだった。所々決壊していそうな感情の本流を綺麗に河川整備し、何事もなかったように胸の奥へしまいこむには、無理がある。なので、これが今の少年にできる精一杯だった。
 そんなさまを、ぶーちゃんIIはいつも通りのさまで、のんびりと受け止める。
「いやあ、何というか煩悶だねえ」
(知らねえよわけ分かんねえよ分かる言葉で言ってくれよぶーちゃんIIううぅぅぅ!)
「もだえ苦しんでるなあ、って、思って」
(見りゃ分かるじゃねえかよおおおおお!)
「ごめんごめん」
 良橘は古い馴染みが久し振りに、しかも突然現れたことを気にかけず、ぶーちゃんIIは相手の口の悪さを気にかけなかった。知らない者が聞けば、すわ喧嘩かと身構えそうな物言いだが、ぶーちゃんIIは昔からの付き合いで、この口振りには慣れていた。ぶーちゃんIIが最も印象深く覚えている、野山を遊び回って擦り傷だらけの小さい頃から、良橘は説明というものが下手だった。言葉が少ないため誤解されて、結果として他者に対して口が重くなりがちな性質は、いくら体が大きくなっても、そう簡単に変わるものではなさそうで。ぶーちゃんIIの説明を受け、また声を殺してもだえ転がり苦しみだす。

 そうして良橘は縦横無尽に転がり尽くしていたが、ある程度経つと、その動きに鈍りが現れ出す。これまでは一人で悩み続けていたけれど、よくよく考えてみれば、話し相手が現れてくれるということは、かなりの救いだと気づいたのだった。胸に吹き荒れる嵐をおさめる方法は、体を動かして追い散らすしかなかったというのに、今は誰かに吐き出すことができる。言い回しの巧拙は別として。
 そう思えば、体内の大波暴風も、多少はましになってくれたらしい。布団を中心として部屋中を転がり続け、いつの間にか掛布団も枕も吹き飛ばされている床の上で、良橘はのろのろと腹ばいになる。そして、疲れ果てた表情でぶーちゃんIIに向かうも、その困憊ぶりは全て先程の転がり体操の所為、というわけではなさそうだった。力なく、溜め息混じりの声が落とされる。はっきりとした音を伴ってはいても、ひそひそ話程度の音量でしかなかった。
「……明日、さ、女子と、二人で、出かけなきゃなんねえんだよ」
「おめでとう」
「めでたくねえよ! …って、いや、めでたい……ん、だけどさ」
「やっぱりおめでとう」
「そうじゃなくってええええぇぇぇ!」
 なかなか思うように話が進まないことに焦れてしまい、良橘は横たわったまま反復横跳びじみた動きで、またも左右へ転がりもだえだす。ぶーちゃんIIの相槌が的を射てくれないことと、自身の説明下手への苛立ちが重なり、わけの分からないむず痒さに心身ともに襲われているようだった。
 しばらくの間、派手に転がることで、そのどうしようもない隔靴掻痒感は解消されるらしい。ぜえはあと息を荒くしながら、もやもやを発散して、律儀にもわざわざ元の位置に戻る良橘のさまは、どことなく砂浴びをして全身を掃除する犬の姿に似ていた。随分と神妙な面持ちをした犬ではあったけれど。
「……前々からさ、男子と女子、同じ頭数で出かけたりはしてたんだ」
「うん」
「けど明日は、何か話の流れで、二人だけで行くことになっちまって」
「うん」
 転がりながら、ちゃんと話の要点は整理していたようだった。訥々とした口調ではあったけれども、ぶーちゃんIIに伝わりやすいよう、一つ一つ言葉を選びながら苦手な説明に挑む。その間、器用にも七転八倒中に拾ってきた掛布団を、今更ながら頭にひっかぶる。ただし、その寝具は既に相当乱れ捻じれて、くちゃくちゃになっているため、全身を覆い隠すことができない。しかし、上半身しかかぶることができないままでも、良橘にはそれなりに頼もしい砦らしかった。しっかり、皺になるほど端をきつく掴む。
「確かに、俺とそいつは、皆で出かける時、よく組になってた」
「うん」
「前のほうでさ、他の連中がぎゃあぎゃあ盛り上がってるのを、後ろから俺ら二人でついてくんだよ」
「しんがりを務めてるんだね」
「? なんだそれ。まあいいや。で。まあ。向こうを、知っちゃあいるんだけど……」
「うん」
「……ろくに話したことねえんだよ! 俺もあっちも、あんま喋んねえし! そんなやつと、どーやって一緒に過ごせばいいんだよ!」
「嫌なの」
「嫌じゃねえよ!!」
 ころ、と今度はぶーちゃんIIが僅かに転がり、訊ねてみる。転がり方に関しては一日どころではない長がある、むしろ大御所であるぶーちゃんIIが見せた動きは、人が小首を傾げるさまに近かった。そうして放たれた質問は、瞬き一つの間もなく、即座に全力で叩き落される。
 良橘は思わず掛布団の奥から身を乗り出してまで否定するも、口に出したすぐ後に、すごすごと後退し柔らかな穴倉へ引きこもろうとしてしまう。ほの暗い場所へ落ち着き、しかもうつむくことで、不平っぽく尖った唇を見られまい、としたようだった。それでもぶーちゃんIIにはすべてが見えていたけれど、彼は敢えて何も指摘しようとしない。そのまま、良橘が再び話し出すのを、ただ、待っている。
 そしていくらか穏やかな沈黙が続いてから、言い出しにくそうに、良橘が口を開く。
「嫌な相手なら、そもそも出かけるのに、流れのまま承知しやしねえよ」
「うん」
「どんな流れだろうと、どうにか拒否って、機会さえ作らねえ」
「うん」
「だから。その…ただ……」
「うん」
 言葉を重ねるうちに、どんどん歯切れが悪くなってゆく。ついさっき、忍者のような反射神経で、ぶーちゃんIIの問いを撃墜してみせた機敏な姿とは、似ても似つかない。声すらも先細りしてゆき、今にも消え入りそうになってしまうが、口の中で形にならない言葉をぐねぐねとこねくり回しながらも、途切れさせることはなかった。
 刺繍糸より頼りない命綱をぎこちなく手繰り寄せるように、白い洞窟の奥から、そろそろと迷いがちな視線だけが這い出てくる。
「……何、話しゃいいんだ?」
 心底分からない、と言いたげな弱り切った表情で、自分より遥かに小さなぶーちゃんIIを上目遣いにする。どうしても一人では、解決策を見つけることができなくて、全身全霊をかけて悩み抜いても答えに届かない。しかし一人と一匹ならば。
 救いを、助言を、あるいは背中を押されることを待っている。それと全く同じ眼差しをつい最近、眠れぬ子供の友人である彼は、別の場所で、違う言葉で、見ていた。

 落ち着いた円い声が、すんなりと良橘の耳に届く。
「これまで、あまり話したことないんだよね」
「そーだよ。でなきゃ、ここまで悩まねえよ」
「話さなくても、組にはなってたんだ」
「まーな。あぶれ者同士っていうか…お互い、そんな喋んねえし」
「特に関心がなかったの」
「いや、そうじゃねえんだ。うーん。何て言うんだろ?」
「うん」
 ぶーちゃんIIが淡々と状況をまとめ、整頓してゆくのを、今度は相槌を打つ側に回った良橘がぽつぽつと補足する。自分でも説明をしていたはずが、ぶーちゃんIIによって丁寧に訊ねられてゆくことで、良橘自身気づかないでいたことが、ゆっくりと形を取り始める。ぱさぱさに崩れていたパン生地が、一塊に練り上げられてゆく。
「喋んねえから、ってことを抜きにしても、嫌なことをしてこなかったから」
「嫌なこと」
「うん。甲高い声で、わけわかんねえこと聞いてきたりとか、横目でちらちら見てきて、くすくす笑うとかさ」
「ああ、それは嫌だもんねえ」
「……だから、組になっても構わなかった」
 不快なことでも思い出したのか、良橘が布団に埋もれた顔を苦そうにしかめる。けれど、ぶーちゃんIIはその表情に敢えて触れることなく、別の箇所に指を伸ばす。彼の短すぎる手足では、指の形すらよく分からないけれど。
「嫌なことをしないから、いいんだ」
「まあ、そうだな」
「マイナスがないから、構わないんだね」
「んー…そう言われると、やっぱ、違うっぽい」
「プラスがあるってこと」
「ん……あぁ。そっか」
 少しずつ間を詰めてくる、ぶーちゃんIIの短い質問へ答えるうち、盛んに首を捻って返事を絞り出していた良橘が、はた、と動きを止める。ずるずると、だらしなく引きずり続けていた声が一瞬途切れると、少年はゆっくりと口角を上げた。
「”いただきます”って、言うんだ」
 ぴん、と中心に鋼の糸でも通ったような、はっきりとした声音だった。
「外で、何か食うだろ。昼飯でも、おやつでもさ。そんな時、”いただきます”って言うんだ。ちゃんと、手ぇ、合わせてさ」
「へえ」
 少しずつ顔をほころばせて、この夜初めて見せる、楽しげな表情で良橘は生き生きと答える。それをぶーちゃんIIは遮ることなく、緩やかに先を促す。流れる方向を、流れやすい大河へと導かれて、少年はどこか熱っぽさすらたたえて話し出す。
「他のやつらの中には、からかったりするのもいた。笑うのまでいたんだぞ? それでも、やめねえんだ。むきになってるとかでもなくて、あと言い訳っぽい説明もしないでさ。ちょっと笑って、やっぱり”いただきます”言って、手も合わせる」
「笑いどころが分かんないなあ」
「俺も。何がおかしいんだか。でも、そーゆーやつ、結構いるんだぜ」
「へえぇー」
「ああいう連中はいっくら言って聞かせても、聞きゃあしねえし、俺もとっくに諦めてる。あのひとも、そういう心境だったんだろうな。でも、いちいち突っこまれるのがうざいから、俺、外で食う時は言わないようにしてたんだ。なのに、あのひとは言った」
「うん」
「強いんだなあ、って思った。それと……何か嬉しかった。俺んち、百姓の家だからさ、ああいうのは、嬉しいんだ」
「快い」
「うん」
 いつの間にか頭から掛布団は取り払われ、丸めこんで胸元へクッション替わりに詰めこむことで、ふわふわの要塞は姿を消した。後に残るのは、朗らかに笑ってみせる良橘の姿だった。ぶーちゃんIIの、黒いビーズの目が相手の満ち足りた笑顔を映す。

「それで良いんじゃないかなあ」
「……はあ!?」
 話の流れが一瞬飲みこめなくて、少し間を置いてから、良橘はそれがずっと求め続けていた問いへ返された答えだと悟った。と、同時に、すっとんきょうな声を上げる。不意討ちすぎたのか、今回ばかりは声を抑える配慮が行き届かなかったらしい。思わず叫び気味になってしまうと、すかさず廊下の向こうから「やかましい!」と、母が怒鳴る迫力満点の声が響いてきた。
 そっちの声のがでかいじゃねえかと、これを恐れていた良橘は避けきれなかったこにと内心でぐちぐちしながら、ぶーちゃんIIと相対する。抗議しつつも、きちんと音量を落とすのは忘れない。
「何でだよアドバイスになってねえよどーゆーことだよぶーちゃんII!」
「今まで通り、するのが一番だと思うな」
「ええー…」
 いくら補足説明されても、まだ不平不満を拭い去れない良橘が、唇を尖らせるのを隠しもしないでいるのに、ぶーちゃんIIは落ち着き払って続ける。
「じゃあ。もし、相手が明日、いつもと違ってさ。いきなり、”いただきます”って言わなくなったとしたら。どうするの」
「……嫌だ」
 低い声で、眉をひそめながら、良橘は呟く。僅かな沈黙のうちに、少し想像してみただけでも不快になったようだった。そんな表情に、ぶーちゃんIIは別の誰かを透かして見る。
「相手も、そうかもよ」
「そうなのか?」
「そうかもね」
「……そうなのか」
 どうも、自分に対して思い当たるところはないものの、先程の問いかけ自体はとても分かりやすいものだった。良橘が快いと思ったものを捨て去ったあのひとは、きっと、もうあのひとではない。ならば、あのひとにとって、良橘が良橘でないと感じられてしまうようなことは、したくないと迷いなく思える。
「ただ。いつも通りで。あとは、いつもしたくてもできなかったことを、したら良いんじゃないかな、と思うよ」
「やっぱ分かんねえよ!」
 ぶーちゃんIIの予言じみた表現は、良橘には奥歯にものの挟まった物言いとしか思えない。控えた音量の中で可能な限りの大声を出し、またも抗議してみせるも、そろそろ諦めが入り混じりだす。口をへの字にすると、丸めた布団に全体重を預ける。
「……いーよ、もう。ぶーちゃんII当てになんねえよ。せーぜー当たって砕けてきてやらあ」
 半ばやけくそ気味に投げ出された言葉に、円い旧友は小さく笑う。
「武勇伝、楽しみにしてるよ」
「覚悟してろよ!」
 そう捨て台詞を吐くと、良橘は寝転んだままでも部屋の灯りを消すことができるひみつへいきである、畳に届くほど長い、電灯へ至る紐を引っ張って枕も吹き飛ぶ勢いで寝返りを打つ。今度こそ、きちんと掛布団を体の上にかけて。

 しばらく、独り言じみた短い呟きが聞こえていたが、それもやがて寝息へとすり替わる。明るい星明りがカーテンの隙間から差しこむ部屋の中で、明日、僕を呼ぶのはどちらだろう、と彼はおぼろげに思う。そして、「多分、両方」と結論を出してから、薄く笑って、夜に溶けた。
 二人揃って、いただきます、と手を合わせる姿を、新月の夜空に彼は見たような。
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