忍者ブログ

とまり木 常盤木 ごゆるりと

ひねもすのたのた

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

おっはなっし、ひゃっぺん、かっけるっかな?


唐突に何か書いています。何してるのでしょこのひと。
唐突にもほどがありますし、創作ですし、なので隠しておきます。


いやその。なんだか、言葉がずんずん歪められてゆくようで。
言葉に血が通わなくて。ひどく、きもちがわるいのです。
そうこうしているうちに、なんだかお話も書けなくなって。
にっちもさっちもWOーな感じで、悩んだ結果がこれです。

短編を百。書けやしないかと。

同じ題材。同じ状況。それで百。
短編なら負担は少ないですし、いけなくも、と思いまして。
見切り発車もたいがいですが、はじめてみました。
どうにも最近、寝つきが悪くって。
ならばこの状態をお話に出来やしないかと企んだのです。
眠れぬ夜の小さなお話。
習作な上創作なので、続きに隠しております。
サイトのジャンルをほっぽったままで、申し訳ありません。
たまにこうして遊びますので、どうかご容赦ください……。

『なにもない(百夜白夜)』


(わたしは何でも知っているのよ)
「うん」
(子供だからって、あなどらないで)
「うん」
(おふろから上がった後、電気を消すでしょ)
「うん」
(くるっと背中を向けたしゅんかん、そこはハブとマムシとガラガラヘビがいるの)
「へえ」
(それで、急いで走るでしょ。そしたらね、暗い廊下のすみには、タランチュラがいるの)
「へえぇ」
(わたしは何でも知っているのよ)
「うん」
(だから、わたしはベッドの中で目を開けないの)
「うん」
(でも、頭からおふとんをかぶったりはしないわ。逃げるものですか、負けるものですか)
「うん」
(せいせいどうどう、目を閉じるだけよ)
「うん」
(まぶたを開けたら、部屋中に、きみのわるいものが満ちているの)
「うん」
(しかも。うんと、わるいものよ。どろどろのゾンビだとか、首のない青白い女だとか)
「うん」
(胸にのしかかる隙をねらってる、目をつりあげた、コンクリートみたいなチョコレートだっているかもしれない)
「うん」
(だから。わたしは、目なんて開けない。そんなのいない、なんて言われても、だまされない)
「うん」
(子供だからって、ばかにしないで)
「――僕は、君を、ばかにしたかな」

 円い声が、夜の子供部屋へ静かに響いた。響く、というよりも、神経質なほどに凪いでいた空間へ、そっと小さな一滴を落とし、水面に波紋をもたらしたかのようだった。
 相手へ問うでもなく、自身を責めるでなく、ぽつりと独り言じみて放たれた声だった。けれど、”何でも知っている”と自負していた紫野は、その言葉に思わず目を剥くと、相手へ食らいつく勢いで詰め寄った。
「そんなわけ、そんなわけ、絶対にないわ!!」
 草木も眠る深更のこと。引っくり返りそうなほど声を荒げたくても、常識的な彼女は、どうにか喉を押さえつける。それでも、反論したい気持ちだけは自制がきかず、ずっと胸に抱き締めている相手を、更に握り潰してしまいそうなくらい、きつく体に押しつける。
 いくら夜目がきかないとはいえ、指や体を通して、彼の感触は闇の中でもよく分かる。ソフトボール大の体を覆う、短い毛足はややくたびれて。それでも、夜に灯台じみて柔らかく灯る、蝋燭の火に似た淡い黄色い毛並みは、ぼんやりと浮かび上がって見える気がした。指で探っても、なかなか見当たらない手足は申し訳ばかりで、絡んでくるしっぽだけがいやに存在感を主張する。
 そして何より、光のない中、限界まで拡大された紫野の瞳孔に映る深遠な黒い瞳と、愛嬌のあるぶたの鼻が、彼を彼たらしめていた。その愛すべき鼻を確かに認めると、紫野は少し泣き笑いじみて表情を緩め、彼を見つめる。胸元へ向けた声は、やや掠れていた。
「ぶーちゃんIIは、いつだって、わたしをばかになんてしなかった」
 紫野の言葉に、ぶーちゃんIIと呼ばれたぬいぐるみは、安心したように軽く微笑した。
 彼がいつからそう呼ばれていたのか、そして、そもそもIがいたのか、明らかにされていることは殆どない。けれど確かなのは、彼がかつてもこれからもぶーちゃんIIであり、眠れぬ子供の隣へ寄り添い続ける、ということだけだった。
「良かった」
 彼は、その体格と同じように円い、棘のない声音で、どこか溜め息を織り交ぜたように漏らした。
「僕が知らない間に、君をばかにしてしまったのかと思った」
「ちがう。絶対に、そうじゃないの。ぶーちゃんIIでない、他の大人が、そうするのよ」
 肌触りも輪郭も柔軟な相手の拘束を緩め、ぶーちゃんIIと顔を合わせたまま、紫野は言う。誤解がとけた安堵もあってか、そのさまはどこか楽しげだった。心の声だけでなく、実際の声も、饒舌になる。
「自分がちょっと長く生きてるからって、こっちの意見なんて聞きゃしないの。ただ、下品に押しつけてくるだけで、まるで耳がないみたい。どうしてあんなことができるのかしら。誰もが自分と同じだと思っているのかしら」
「君を、相手を、分かろうとしない?」
「うん、そう!」
 こちらの気持ちをすぱりと言い当ててくる、ぶーちゃんIIの反応に、紫野は大層満足したらしく、にっこりと満面に笑みを浮かべた。そのまま、かさにかかって、なおも大人への不平不満をここぞとばかりに披露し続ける。立て板に水の独演会を繰り広げるのに夢中になりすぎて、相槌も打たず、ただ目を細めて彼女を見つめるだけのぶーちゃんIIの様子に、紫野は気づくことができなかった。やがて喋り疲れた紫野が、重たくなった瞼をとろとろ下ろし、穏やかな寝息を立て始めるようになっても。ちっとも。
 拘束の緩んだ紫野の腕から、転がるには最適な体格をした彼は、ころりと抜け出ると、魑魅魍魎のしっぽも見えない夜の部屋をしげしげと仰いだ。そして、何か幸福な夢でも見ているのか、眠りの中でも薄く微笑む紫野のさまにそっと目を細めた。
「おやすみ」
 その声へ応えるように、少女の寝息が一瞬不規則になり、すぐ、元に戻った。
PR

この記事にコメントする

Name
Title
Mail
URL
Comment
Pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

この記事へのトラックバック

この記事にトラックバックする:
478 |  477 |  476 |  475 |  474 |  473 |  472 |  471 |  470 |  469 |  468 | 

カレンダー

03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30

最新コメント

[08/27 watch news]

最新トラックバック

ブログ内検索

アーカイブ

<<
04 >>
Script:Ninja Blog Skin:Shining D
忍者ブログ [PR]