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とまり木 常盤木 ごゆるりと

ひねもすのたのた

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今日もわたしのガソリン(=チョコレート)はたっぷり


よ…四十五個目、完走……。
もうペースが速いのか遅いのか全く分かりません。


今月から来月にかけては、少しペースが落ちるはずなのですけれど。
ええ今のうちから準備しておかないと、お祝いに間にあいませんよ!
何て過酷なの二月! でもだいすき! ……過酷な上に寒いですが!
もう、モノリスさんたらほんと二月がお好きなのやから……。
困った方。はい、だいすきです。

今日からやっと、結婚記念日祝い話にかかれましたー!
しかしこれ別にご結婚祝いでも何でもないのですけれどね。
ただ単に、ご夫婦に歴代主人公たちと面談して頂きたいだけで。
部の区切りぶっちぎりも良いところです。
まあその…部まぜこぜゲームまた出るみたいですし、ご容赦を。
しかしわたし趣味丸出しで今度もヴィクトリア朝資料たっぷりです。
はあ、資料読みこむのたのしい。
ジェネレーションギャップと異文化交流を同時に楽しんで欲しいです。
因みに面談順は部の順と同じですので、先鋒はジョセフさんです。
個人的に一番書きたいのはジョルノくんなので、道は長いです。
一ヶ月に一本書けたら理想的ですけれど、さあどうなるやら。


そして今度は二十五個目です。
この題名はいつか何かで使いたいと思っていたのですよね……。
あしながおじさん続編の題名素敵すぎます。









『親愛なる敵へ』

 妙に遅々とした動きでページを繰っていた指が突然、本を投げ出す。力なく横臥していた紫野は身を起こし、無言のままベッドの側にある棚へ手を伸ばすと、大きなクッキーの缶を取り出した。ばくん、と蓋を開けつつ布団の上へ座りなおす。薄い金属の容器に詰まっていたのは、たっぷりの甘いものではなく、どっさりの糸や布だった。
 やりかけだった刺繍に向きあうや、黙々と針を進める。つばの広い帽子をかぶった娘が持つ花籠を飾り始めた糸が、生地から引っ張られるたび、しゅっしゅっという規則正しい音ではなく細い悲鳴じみた音をきりきりと立てた。けれど手の主である紫野は気にかけた様子もなく、険のある顔つきのまま作業を続ける。けれどその荒っぽい扱いに、針は反撃に出た。
 少女は小さな痛みに顔をしかめると、見る間に赤い真珠をこしらえ始める指先を忌々しげに見つめてから、針が刺さったままの布を放り出した。

 いかにも苛々とした足取りで、腕組みをしたまま室内を往復する。やがて思い切って灯りを消し、ベッドへ再び横になってみるものの、まるきり覚めきった目はちっとも瞼を下ろそうとしない。いくら部屋の中が暗くても、胸の中でちろちろと赤く息づく怒りの熾火が、いつまでも変わりなく紫野を照らしているようだった。
 遂に舌打ちまでしながら少女は寝床から飛び起き、観念して電灯のスイッチをぱちんと鳴らした。そうして明るく照らされる室内で三度、ベッドに身を預ける。全身から発される、それこそ針のように刺々しい気配は、そう簡単に先端を鈍らせない。眉間に皺を刻み天井と睨みあう少女は、身の内で溶岩じみてどろどろとする、触れればたちまち火を点ける感情と、真剣に取っ組みあいを演じていた。
 けれど、ふと。枕の側へふわりと生じた気配に、鋭利な棘が、僅かに丸みを帯びた。この世の何よりも円い存在に、ついつられたようだった。
「酷く、腹立たしいやつがいるのよ」
 燻りすぎて、とうとう焦げついたような声音で低く、紫野は呟く。不機嫌が極まってはいるものの、どこかで気恥ずかしさもあるのか、頬を膨らませた様子は途方に暮れているようでもあった。
 そっと頭だけを動かすと、視線の先でぶーちゃんIIは、いつもと変わらずふわふわと佇んでいた。


 紫野は自分が気づかないうちに体を横向きにして、最初から待ち侘びていたように、真正面からこぶたと向きあう。もし正座で相対していたら、膝を進めて前のめりになっているだろうほどの、力のこめ方だった。
 とはいえ冷静さを失うことはなく、ぶーちゃんIIへきちんと経緯の説明を始める。その、根本のところから。
「私は同年代の子たちに比べて、世界が見えているほうだと思うわ。別に自慢でも何でもなく、客観的な事実としてね。場の空気、言葉に隠された意図、態度の裏にある本音……そういったものは、いくら覆いをかけようとしても、ちょっとした所作なんかに現れてしまうものだから」
 普段、滅多に激することのない紫野が、今回は心底から怒りをおぼえているのだろう。順を追って説明を重ねようとする間も鼻息は荒く、それでもって熾きに風を送っているようだった。
 その風圧に煽られたわけでもなく、こぶたは相手へ同意を示してゆらゆらと頷く。
「うん。それは本当だと思うな。きみは昔から、周りのことを、とてもよく見ていた」
「小さい時みたいに、『私はなんでもしっている』なんてことは、流石にもう思ってないわよ」
 僅かに笑みを含んで返すと、口の端が緩み少女の表情が和らぐ。まだ正確に自身の心情を言葉のみで表すことができなかった、うんと幼い頃を、こぶたはきちんと覚えていてくれる。自身の幼さを思い出すのは面映いものがあるけれども、その一方で、思い出を共有できている相手との親密な会話は快くもある。
 しかし、そんな楽しさも、これから語らなければならないことの内容を思うと、途端に拭い去られてしまう。ごつり、と岩の塊じみた胸のつかえが蘇り、その不快感に紫野は眉をひそめた。
「……ぶーちゃんIIは、そう言ってくれるでしょう。なのに」
 紫野の声が、ゆらりと陽炎じみた怒気を孕む。
「なのに、私はよく見えているのに、分かっているのに、『君は知らない』なんて言うやつがいるのよ!」
 何て屈辱かしら! と紫野は憤懣やるかたない様子で吐き出す。怒りに熱されて体温も上がってきたのか、非常に血色の良くなった顔でなおもぶーちゃんIIに言い募る。最初に心がけていた落ち着き払った説明など、とうに吹き飛んでいた。
「自画自賛じゃあないのよ、私はとてもよく観察しているのよ! ふと強張る指先には本能的な怯えがあると思うし、嘘をつく時は妙に饒舌な人もいて、怒りをごまかすのにお追従みたいな笑いを張りつける人だっている。勿論、癖は誰だって千差万別よ。でも私はそれを見抜いているの、分かっているの! なのに!!」
「観察という行為は、きみにとって譲れないものなんだね」
 爆発する感情を、ぶーちゃんIIはいつもと同じのんびりとした声で受け入れる。やんわりと相槌を打つようなさりげない物言いは、紫野の意見を遮るのではなく、抱き止めながら手を取るようだった。
「世界や、周囲と繋がるための手段であり、自信を持って誇りすら抱いているもの。きみの根幹をなすもの。それを否定されたことが、腹立たしくてならない?」
「……」
 ころ、と転がり、横たわる紫野と同じ角度を取って顔を覗きこむ。真っ直ぐに優しく問いかけられ、少女は咄嗟に目をそらした。それと同時に、ああこれでは図星を指されていると白状しているようなものだ、と思う。こんな態度は肯定したくないけれど否定しきれず結果として肯定を意味していると、ずっと紫野は見抜いてきたのだから。
 これまでに学んできた法則が自分へ当てはまってゆくのに、不服と照れがないまぜになった様子で、少女は年相応に唇を尖らせた。

 そんな中。再び転がり角度を変えると、こぶたはふと思いついたように天井を仰ぐ。
「誰かさんがきみを『知らない』と言ったのは、きみを観測して、そう見えたからじゃないかなあ」
「?」
 地団太を踏むようにして方向転換をし、意見を求めて視線を投げてくるぶーちゃんIIに対し、紫野は即座に返事ができなかった。こぶたの言うところが、咄嗟には呑みこみ切れなかったためだった。
 頭上に浮かんだ疑問符が、表情にも張りつけられていたのだろう。ぶーちゃんIIは寝転がる紫野へ正面から向きあうと、彼の推論を少しずつ話しだす。
「きみが、世界を『観察』しているように、相手も世界を『観測』しているのかもしれないよ」
「……観察と、観測って、どう違うの?」
 うっすらとぶーちゃんIIの言わんとしていることを察しながらも、紫野は素朴な疑問を口にする。この問いがくることは承知の上だったのか、ぶーちゃんIIはうーんと低く唸りながら、そして転がりながら答えを捻り出す。
「僕も、きちんとは定義できていないけれど……何となく、方法の違いかなあ、とか思うね。勝手な印象だけで言うなら、観察は虫眼鏡でまじまじと眺めていて、観測は望遠鏡で時間や角度なんかを計算に入れながら眺めているような」
 あ、でもきみは双眼鏡と虫眼鏡の二刀流かな、と思いついてこぶたは付け足す。転がるのをやめ、その場へ渦を巻くようにぐるぐると回りながら、ぶーちゃんIIはなおも言葉を捜し求める。
「どちらも世界を、見つめているよ。しかも、とても真摯に。片方が優れていてもう片方がいけない、とかではなくて、ただ手段が違うだけなんだ。それで」
 初めて耳にする新鮮な考察と、目新しい視点に、紫野は相槌も忘れて聞き入る。そんな少女を横目にして、回転を続けていたこぶたはようやく答えを捕まえたのか、ぴたりと動きを止めて紫野へ向かって円い体を捻る。
「望遠鏡が、虫眼鏡を手にしたきみを、レンズにみつけたのかと思って」
 真っ黒いビーズの瞳に映されて、その只中に自分を見つけて、紫野は大きく目を見開いた。彼の小さな瞳こそがレンズのようだと、少女には思われた。そこまで考え到ったところで、ずっと彷徨っていた焦点が、目も眩むほど鮮明に定まった気がした。

 虫眼鏡は前を見る、双眼鏡だって同じこと。だからどちらも、大きなレンズを覗きこむ己を見ることはできない。けれど望遠鏡はレンズの手前を最初に意識して、自身の立ち位置を把握してから、対象へ視線を向ける。
 ただ、と紫野は更に思考を巡らせる。
 望遠鏡は、蝶の繊細な羽の透明感や、雨上がりの庭で花弁へ宿る露の一雫をつまびらかに見ることはできない。勿論、逆も言えて、双眼鏡や虫眼鏡で夜空を眺めるのは無理がありすぎる。どちらも、どちら。ぶーちゃんIIの言う通り、甲乙をつけるものではなかった。
 だから今回は、たまたま。
「……望遠鏡が、私を見かけて、声をかけてみただけ」
「どちらかといえば、挨拶かな。同じ、世界を眺めている仲間として」
 偶然、二人が同じ庭を実践の場に選んで、かちあってしまった。とはいえ手近なものへ集中している紫野は、自分以外の誰かが庭にいることへ気づかず、いつも通り一人で観察を続けていた。そんな少女を、開けた場所で望遠鏡を設置しようしていた誰かさんが見かけて、話しかけた。
 相手はその挨拶に、親しみをこめていたのやもしれない。だとしても他に言い方があったでしょうに! と、紫野は密かに憤慨する。けれどそれすら、物事には別の手段があるのだと、別の見方があるのだと自分へ気づかせるための誘いだったのでは、とさえ思われてくる。だとしたら相手は少女に対し、紫野なら気づくはず、という信頼を勝手に抱き、敢えて投げてきた可能性がある。
 ここまで考え到ると、ふつふつと胸の裏で、また熱が蘇り始める。
「―…舐めた真似をしてくれたじゃない」
 揺らめく夏の逃げ水めいて立ちのぼる気配は、先に漂わせていた硫黄まじりの蒸気じみた怒気とは様子を異にする。とはいえ、朗らかとは到底いえない空気をまとう少女を、ぶーちゃんIIは見上げる。
「どうするの」
「決まってるわ。観察し返してやるのよ」
 ぶーちゃんIIの眼差しを何らかの懸念を含んだものと受け取った紫野は、慌てた様子で「血なまぐさいことなんてしないわよ!」と付け加える。ただし、やられた分をやり返す、という意味で考えれば、それは報復と同義だというのは口にした紫野が誰よりも一番自覚している。物理的な要素が関っていない、というだけだった。
 こんな言い草ではいかにも弁明じみていて、かえって疑いを深めてしまうと、長年に渡り世界や人間を観察してきた紫野は分かっている。だからどうにかこれ以上、誤解を招かないためにも落ち着いて呼吸を整え、感情の流れと共に今からなすべきことを整頓して並べてゆく。
「よくも私に見えないだの、知らないだの、好き勝手に言ってくれたわね。その台詞を後悔させてやるべく、私のほうからもやつを観察してやるの。虫眼鏡と双眼鏡の本気を思い知らせてやるわ」
 立ちはだかる誰かさんへ、見えない得物を両手に構え、総力を結集した二刀流で少女は挑もうとする。肌の裏で燃える血気に奮い立つさまは生き生きとして、まるで好敵手を見つけたように、紫野は不敵に笑った。
「みてらっしゃい」
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