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とまり木 常盤木 ごゆるりと

ひねもすのたのた

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体言止めから抜け出せる豊富な語彙がほしいです


久し振りの二次創作が楽しすぎて指がひゃっはーしています。
まさかここまではっちゃけるとは思いませんでした。


一次創作と続けざまに…というか同時並行で書いていますので。
それぞれの違いがよく分かる気がします。
いや、それにしたって、こうも指の動きが変わるとは。
理由はなんとなく分かるのですけれどね。

一次創作、今書いているものは、なにせ本数が多いので。
お話を一本、完成させるまでの日数を多少厳しく設定しています。
そのため見直しにもやたら時間を割くわけにもいかず。
初稿の時点でそれなりの精度をもたせておかなければなりません。
お陰で見直しの際に、あまり言葉の廃棄物が出ないのですよ。
冗長になりがちな癖もあるので、それを排するには良いのやも。
意識して無駄な言葉を省いているようなものですから。

で、二次創作。
こちらは一応、来月のお祝いに間に合わせたいなーと思うくらいで。
残り三日で仕上げろ、とかそこまでの制限はありません。
なので多少は気持ちが緩み、その分だけ精度が落ちているやも。
……後の見直しで苦労するパターンですね。
ただ一次創作の時ほどのぎりぎり感がないので、たっぷりは書けます。
調子に乗ってほとばしらせているだけとも言います。
でも約一時間で1800字程度を書いたのはアホだと思いました。
わたしどれだけ書きたかったこれ。


四十六個目を走行しながら、本日載せるのは二十六個目です。
ここ数日書いているお話が短めなので、さくさく進んでいます。
なので設計図のほうが追いついていませんギャー。
あとゼノお誕生日のお話もまだ構想すら。
が…がんばる……わたしがんばる……。
今月の月産何本くらいになるのかしら。









『天から降るのは百億の管弦楽団』

 音が溢れすぎていて聞こえない。逆に何も、聞こえない。

 雨の友人としてお馴染みの顔ぶれである風や雷が、今夜はつきあいを断ったらしい。ただ雨は雨として、ふらりと、一人で現れた。ただしその気紛れな足取りは、とびきりの土砂降りであったけれど。耳をつんざく雷鳴や、雨戸を揺さぶる嵐がないぶん、より一層この豪雨の凄まじさが際立って、青児には感じられた。
 もし寝床を抜け出し、閉ざされたカーテンを掻き分けて窓の外を覗いたとしても、目に入るのはきっと街灯にぼんやり透かされた水のカーテンだろうと少年は思う。暗い部屋の中、瞼を上げても、下ろしても、積み重なる雨粒の重低音がひたすら体へ響いてくる。五線譜も和音も何もかも無視して、腹の底から震わせる律動だけを、ひたすらにぶつけてくる。
 滝の裏側だってこれほどの住環境では、というほどに重厚な音が場を埋め尽くしてゆく。大粒の雨は時に、砲弾じみて叩きつけられることがあるけれども、今夜は鋼でできた無数の槍が、空から間断なく大地へと突き刺されてゆくようだった。そんな只中にあって、布団におさまった少年の表情は五月の空よりも爽やかに晴れ渡っていた。
「やれやれ。篠突く、どころじゃおさまらないね」
 自分の鼓動さえろくに聞こえないほどの雨に囲まれているにも拘らず、彼の言葉はすんなりと耳へ届いた。微かに円い上体を起こして、窓の外を見やるこぶたを認めて、青児は声も出さずにただ清々しい笑みを深めた。
「おや。随分と楽しそうだ」
 少年の表情に気づき、ぶーちゃんIIもつられたように声の端へ笑みを含ませる。
(やあ。こんばんは)
「こんばんは」
 胸の内で口にした挨拶へ、すんなりとぶーちゃんIIは答える。音を介さずとも意識を通わせることができるのを、もう青児は驚くことすらなく受け入れた。


 全身を、外側からも内側からも満たしてゆく音のありさまが、青児には心地良くてたまらなかった。いくらこれが眠れない夜であるとはいっても、今夜はどの方向へ寝返りを打とうとも、常に喜びだけが青児に寄り添う。
(瞼を下ろすと、真っ暗な世界へ、より鮮明に重低音だけが響くんだ。ぞくぞくする)
「うん」
(瞼を上げても、真っ暗な部屋で、闇に慣れてきた目に普段と同じものがうっすら映る。なのに空気をぎゅうぎゅうに占めてる音は、いつもとはてんで違うものだ。それが何だか、面白くってならないんだ)
「うん。分かる気がするよ」
 豪雨に妨げられることもなく、一人と一匹はごく自然に遣り取りを交わす。窓外の荒れた天気について話しているはずなのに、その口調はうららかな春の日和について語りあっているような穏やかさだった。
 青児は自分でも、どうしてこうも暴れる雨模様に安らぎや、いっそ昂揚すらおぼえてしまうのかが分からなかった。ぶーちゃんIIを相手に、文字通りの暗中模索を続け、思いつくままに胸の内で考えを浮かべてみる。
(旅行なんかで出かけたら、そりゃ環境は変わるよ。景色も、色も、もしかしたら音だって、日常の慣れ親しんだものとは違っているのかもしれない。そこに面白みを見出すのは、当たり前のことだと思う。あらゆるものが新鮮に五感へ突き刺さってくるんだから。けれど今みたいのは、普段と同じものに囲まれていながら、普段とは明らかに違っている。そこが楽しいのかな)
「枕元のこれは、いつもと違うもののようだけれど?」
 真面目な顔をして深く考えこむ青児の頭上方向へ、ぶーちゃんIIは僅かなからかいを含んだ声を撒きながら転がってゆく。ぶーちゃんIIが言葉と体で指し示す、枕の側へしっかり据えられているものについては、思考を巡らせる必要もない。青児は照れたように少しはにかんだ。
 すぐさま手の届く場所で準備万端に構えているのは、いつでも紐を掴んで素早く持ち出せる、目いっぱいにものが詰めこまれ、ぱんぱんに膨らんだ鞄だった。

 しかつめらしく考えへ耽っていると見せておいて、その実、密かにうんとはしゃいでいたという証拠を晒してしまっていた。自分で自分の不注意さに、少年は思わずくすくすという声を漏らす。もっともその声は、屋根を叩きのめす雨粒たちにはたき落されて、誰の鼓膜にも届きはしない。
(あはは。もし、避難しなくちゃいけないような状況になったら、と思って、遠足気分で準備しちゃったよ)
「日常の中の非日常を、存分に楽しんでいるね」
 長いつきあいの友人同士が気さくに笑いあう間も、遠い彼方の天水は途切れることなく、大盤振る舞いに落とされ続ける。とぷとぷに満たされている空の桶がからっぽになるほど大胆に引っ繰り返されたのでは、というくらいの轟音をがなり立てているのに、少年とこぶたの会話はどこまでものんびりしたものだった。
 けれどそんな中で、ふと青児が声をひそめる。あくまで心の中の声であるけれども。
(―…うちはそもそも頑丈な造りの上、場所は高台で浸水の心配はしてない、近くに山もないから土砂崩れの不安もない。でもそういう被害に遭う家もあるだろうし、今頃は堤防の決壊に備えて、夜通し警戒している人だっている。―…花だって散るだろう。でも)
 落としかけた溜め息をぐっと呑みこんで、重々しく寝返りを打つと、青児は妙に神妙な面持ちでぶーちゃんIIに向きあう。さっきまで漂わせていた弾んだ気配が、いつの間にか緊張感を孕んで引き絞られ、目元を僅かにしかめた少年は独白する。
(それでも。うきうきしてしまうんだ。楽しくて、胸が躍って、どうしようもない)
 安心と安泰に満たされた、温かな寝床の中で雨音を面白がりながら、まどろむ。それはまるで、うっすらとした悪甘い蜜のような感覚に浸っているようで、気づかないふりをするには濃密すぎる罪悪感が、青児の内側にある柔らかい部分をちくちくとつついてくる。そのこそばゆさにも似た微かな痛みが酷く鮮明に思えて、少年はどこか思い詰めた眼差しでこぶたを見やる。
「これって、暴力的な考えかな?」
「本当に暴力的な人は、そんなこと言わないよ」
 微かな声音で囁かれた悩み事は、即座にあっさりと切り捨てられた。その渋滞のないあまりに鮮やかな返し方に、青児は一瞬あぜんとしてから、ほころぶように相好を崩した。微かな笑い声の欠片を布団の中に漏らすと、心底から安心したように目を瞑る。
(なら、安心だ)
 夜において誰よりも信頼に値するこぶたにそう言い切られて、少年はぬくぬくと快い温もりに包まれた。
 雨の音色は鳴り止まない。けれど、一人と一匹の言葉を遮ることはなかった。
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