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とまり木 常盤木 ごゆるりと

ひねもすのたのた

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あれやこれやとごきげんさん


おかしいですね…熱っぽさはとっくに消え失せているのですけれど。
喉のイガイガと腕の気怠さがなくなりません。


取り敢えず前者についてはホットレモン続行の方針で。
何せ我が家であれが発見されて以来、ホットレモンがはかどるのです!
正式名称が分かりませんが…ほらレモンぐしゃーするあれ。
硝子製で尖ってて上から抉りこむように押しつけるやつ。
名前が謎なため、勝手にレモングシャーと呼んでいます。
ほんと何て名前なのかしらあれ……と思いつつ今夜もぐしゃー。

指の調子はすこぶるご機嫌です。
ここ数日、やーもー走ること走ること。
キィの上をリズムに乗って駆け抜けるようです。
少し前のスランプっぷりが嘘のようですね。
安定して速度を稼いでいます……今のうちに貯金しておかないと。
何せ今月半ばから数ヶ月は確実に時間が削られるのです。
甥っ子(ふたりめ)が来月やってくるため、姉が帰省するのです。
甥っ子(ひとりめ)と共に……。
あかちゃんさんの襲来はたびたびくらってますが、今度は本格的。
安定して書く時間が確保できるか怪しいものです。
別に相手をすることは構わないのですけれどね。
ただ、書けない時間の増大することが、少し、つらいです。
年内に最低でも四十個までは。
流石に五十個までは無理でしょうから……頑張って四十五個くらい?
そこまでは。やりきりたいものです。

あっそしてこの流れもどうなのかですが、動画できました!
動画が! わたしにも! でーきーまーしーたあー!!
うう、我ながら嘘のようです。まさかわたしに動画が作れるなんて。
がんばったよつくれたよ! と友人に報告したくてなりません。
や。でも。文章にとっても、非常に良い勉強になりました。
今までカメラワークについてなんて、ろくに考えたこともなくて。
どういう見せ方を、表情変化のタイミングや長さを、調節すべきかと。
以前に先生から映画的技法の話を聞いたりしましたが……。
こういったこと、だったのでしょうね。
もっと映画的な魅せ方も、勉強すべきなのでしょう。
本を読んだり、それこそ映画を観たりして。
でも映像を見ていると、つい内容へ必死になりすぎてしまって。
技術的なところに注意して見る、という習慣がついていないのです。
少なくとも映画館では無理そうなので、するなら自宅鑑賞時でしょう。
二周目くらいからなら、そっちに気を配れそうです。
しかしここまで考えて咄嗟によし観よう! と思ったのがパシリムて。
何なの。先日どういうわけだか夢にジプシーくんが出たからなの。
色々突っこみたいところですが、そもそもパシリム現在貸し出し中です。


そして、こそりと二十個目です!
現在三十一個まで完走しておりますので、少しリード気味。
やはり一回アップするのお休みすると余裕が生まれるようです。
いやあのうん動画も作ってましたごめんなさい。
し、しかしこの十一~二十個は題名で迷走しすぎでした。
考えすぎといいますか、考えた挙句迷子になって謎の着地点に。
その反省なのか、二十一個から次は、多少落ち着いています。
厳密に言いますと全体的に短くなっています。
題名は、短くまとめるべき……。









『枯れても飛んでも技術がひらく』

 眠れるわけがない。油断できるわけがない。さっきから青年の胸に繰り返し去来するのは、このたった二語だけだった。
 ただでさえ乾燥しがちな場所だというのに、青年は目を剥くほどに開け続けているものだから。眼球の表面はいよいよ血走って、ちりちりと焦がしてくるような痛みは視覚に関る器官だけでなく、その周囲にまで及んでいた、それでも青年は、断固として瞳を閉じようとしない。座席の肘掛けを握り締める手の平には既に、嫌な汗がじっとり滲んでいるにも拘らず、青年は強張る指へ更に力をこめた。
 そんな時、ふと、隣から低くいびきが聞こえてきた。ぎこちなくこうべを巡らせた青年が痛む目で見やった先では、でっぷり突き出した腹を存分に解き放った男性が、太平楽に眠りこけている。あらゆる意味でたるみきったその姿に、青年はこめかみを僅かにひきつらせた。青年の腹部には、危険に備えるベルトが指数本も入る余地なく、かっきり締められていた。
 空の向こうにある部屋。翼に運ばれる旅路。青年は飛行機の体内で、蒼穹よりも青褪めた雲上の人になっていた。


 多少なりとも危険がある可能性を示し、ベルトの装着を乗客に促す明かりは、とっくに消えている。それでも青年はへその辺りに鎮座するバックルを、決して外そうとしない。むしろ離陸前に自身の席へ腰を下ろした時から、腹が無防備になる瞬間など全くなかった。もう片手では足りないほどの時間を機上で過ごしているというのに、一度も手洗いに立っていないというのが、何よりの証拠だった。その裏では、極力水分を取らないよう、乗務員に飲み物を勧められても丁重に断ったり、食事でも乾燥したものしか口にしないなどという、涙ぐましい努力が払われていた。
 絶対に油断をしてはならない、という固い決意のもと、青年はひたすらに警戒し続けていた。
(だっておかしいだろ。これは鉄だぞ。いやうん鉄じゃあないかもしれないけれども、つまりは金属だ。金属が空飛ぶんだぞ。おかしいだろ)
 技術の発展は日進月歩、いまや人類は大気の薄い空を通り越して、真空の宇宙にまで同胞を送り出せるほどになっている。それは素晴らしいことだし、技術者の人々は大いに称賛されるべきだと青年も思っている。しかし同時に、それとこれとは別の話だとも思う。
 門外漢の青年には分からないし、仮に説明されても理解することはできない技術により、金属の塊は空を飛んでいる。塊は塊でも翼を持つ塊は特別なのだと、頭では分かっている。例えば天道虫だってああも硬質に見える体なのに、いざ翼を取り出せば軽やかなものだと、青年が経験に基づいて知っていた。
 とはいえ。心の深い奥の奥では、どうしても納得ができず、疑惑の金属に安心して体を預けることができないでいた。
(きっと飛んでる。かなり進んでる。だからこそ周りの人たちは順調な旅を信じて、のんきにぐぅぐぅ高いびきなんざかけるんだ)
 機内は既に照明を落とされ、自分の席に身を沈める乗客たちは殆どが静かな寝息を立てており、先程の男性が例外なわけではない。むしろ客席における例外は、圧倒的に青年のほうだった。
(寝てる間に落ちたらどうするんだよ。どうもできないよ落ちるだけだよ。だから俺はいち早く行動できるように眠らないし、仮に突然この天井が吹き飛んだとしても外に放り出されることがないよう油断せずベルトをしたままでいる。空の上にある今、できる限りの万全な対策をとっている。完璧だ)
 現在この飛行機の内側で、危急の事態にも落ち着いて即時対応できるのは、己か乗務員くらいのものだと青年は自負している。胸の中で。

 前方にある座席の背面に設置されている画面には、小さな飛行機が予定通りの航路を辿って進んでいるさまが表示されている。画面の端には、距離を現す数字も共に記され、それは刻一刻と変化していた。航空会社としては「これが飛んでいる、進んでいる証拠ですよ」と乗客に安心して貰えるよう、根拠として出しているのだろう。しかしどんな揺るぎない証拠であろうとも、決して納得のできない人はいる。
 青年は悲愴な眼差しで『到達までの残り時間』を示す画面に見入っていたが、やがておそるおそる手を伸ばすと、自身の隣にある窓へかけられた覆いを薄く開ける。細く現れる外の姿は予想していたよりも暗く、眠りこむ他の乗客に迷惑はかからないと安堵し、小さく息を吐く。しかし、もっと根本的な安堵は、青年からいまだ遠い。
 車や電車と違い、窓から覗く雲の上の景色は変化に乏しく、それが青年には酷く味気なく映る。確かに離陸した当初は大地や海が、普段では考えられないうねるような軌道で動いては、目を楽しませた。しかし高度が上がるにつれ、ちらほらと見えていたそれらとはすっかり縁が遠くなり、今は眼下に雲の絨毯を敷いた単調な光景だけが続いていた。青年がぼんやりと眺めやる中で、他の席との違いがあるとしたら、それは翼くらいのものだった。
 青年の座席からは、飛行機の翼が丁度よく見える。搭乗しているものの姿が一部とはいえ確認でき、しかもその下には視界の果てまで雲が横たわっているのが同時に見て取れるのだから、青年が現在ちゃんと空の旅をしているという磐石な証左のはずだった。しかし、これだけのものを目にしていながら、まだまだ青年は疑ってかかる。
 翼の下へ広がるのは一面の雲、翼の上に広がるのは一面の空。時間としては夜明けに近いのか、限りなく黒に近いインディゴの天球が裾を薄い朱のかかったライラックへしらしらと彩りを変えつつあり、時間経過が視覚的にとても分かりやすくなっている。なのに青年の疑念は変わらず天井知らずで、空よりもまだ果てがない。
(ああ確かに飛んでる、いや飛んでるんだろう金属の塊が。非常に不本意ながら。でも真っ直ぐに目的地へ向かってるだなんて、どう証明できる? 画面の表示なんて、いくらでも改ざんができる。そもそもこの夜明けらしきものだって、日付変更線の上をうろうろしてたら、時間も日にちも分かったもんじゃない)
 不承不承ながら空を飛んでいることは認め始めたものの、今度は時間や数字へ否定的な視線を向ける。地上にある時ならすんなりと、むしろ何も考えることなく受け入れるものも、空中にある時はあらゆるものが疑惑で塗りたくられてしまうらしい。
 そうしてまた、思考の迷路は入り口に戻る。
(俺はごまかされないぞ。落ちる時は落ちるんだから)
 脈打つように痛むこめかみへ顔をしかめ、僅かだけ目を瞑る。
(だから、絶対、眠らない)
 初心を新たに、ずきずきと熱をもって存在を主張する目がまた剥かれる。そうして酷使され続ける青年の疲れきった両眼に、黄色いこぶたの姿が映った。
 鈍く白銀に輝く、高速で空を舞う、翼の上に。

「!?」
 喉のすぐそこまでせり上がった叫びが、反射的に窓へ張りつこうとした動きで押し戻される。思わず身を乗り出した青年の体を、きついベルトが引き止めたためだった。しかしその制止は一瞬のことで、青年は咄嗟にバックルへ手をやり素早く外すと拘束から逃れ、額が硝子に押しつけられるほど顔を寄せる。釘づけ、という言葉がしっくりくるさまだった。とはいえ、そうしないでは、とてもいられなかった。
 青年が愕然としながら見守る前で、翼の上にこぶたはとどまる。突然に姿を現した彼は、その足場が思いのほか居心地が悪いと知らなかったらしい。その小さな体は、軽い上に、円い。恐ろしいほどの速度で大気を切り裂いている機体の上で、安定して腰を落ち着けるのは至難の業だった。
 はらはらと見守る青年は、目の痛みだとか、墜落の恐怖だとか、十年単位で再会した友人に対する感慨だといったものを、完全に忘れた。今はただ親しい旧友の無事を、祈る心地で見守るだけだった。しかしその目の前で、うっかり体を浮かせてしまったのか、こぶたが風圧に弾き飛ばされた。
 危うく上げかけた悲鳴は、どういう技術なのか名人芸なのか、こぶたが翼のどこかに細い尻尾を引っかけて、空をはためく光景で塞がれた。
 まるで、こいのぼりのように。こぶたは尻尾に支えられて中空を泳ぐ。耳を澄ませば厚い硝子の向こうから、「きゃー」などという、緊迫感の欠片もない声が聞こえてきそうなくらいで、思わず青年は軽く噴き出してしまった。
 はたはたと呑気に泳ぐこぶたの姿に、細く長い溜め息を吐いた青年は、全身から力を抜いて、座席の背凭れに思い切り身をゆだねた。困り果てたように眉を八の字に下げながらも、口角は緩やかに上げられていた。ただし、甘さと苦さのいりまじった、微苦笑であったけれども。

 幼友達の見せたとんだ曲芸に、すっかり毒気を抜かれてしまった。久し振りの再会がこんな形になったことも含めて、何だかこれまで気負っていたものが、急激に馬鹿らしさを通り越してどうでも良くなってしまう。
 飛行機が落ちる時もあるかもしれない、けれど今ではないかもしれない。ただ、夜と親しいかつての友人が、こうして姿を現したのなら、安心して落ちる先は眠りであるはずだと理由もなく思えた。しかし別に確証はなく、つまり何もかも適当であやふやなままではあったけれど、青年はもう議論を投げ出していたし、それで納得さえしてしまっていた。
 すぐ側に二つの技術があるということは明白で、詳細は分からずとも成り立っているのだから、じゃあもうそれでいいやと。
(ぐだぐだすぎるぜ、心の友よ)
 胸の内でだけ、くつくつと笑い声を漏らしつつ、長い付き合いのこぶたへ呼びかけてみる。ひとしきり笑いの衝動がおさまると、見回りのため近くの通路を歩いていた乗務員へ、片手を挙げてそっと呼ぶ。足音もなくやってくる女性に、小さな声でシャンパンと膝掛けを求めると相手はたおやかに微笑み、ほどなく両方の望みを手に戻ってくる。どちらも、眠りを招く罠だからと、青年が強固に拒み続けていた品だった。
 グラスに軽く唇を寄せると、口内が一瞬にして爽やかな芳香で満たされ、ちりちりとした眼球の痛みが僅かに散らされた。快い熱が胃の腑から全身へ緩やかに巡り、肌触りの良い布地に守られた膝や足元といった末端も温まり始めると、お呼びとばかり睡魔は即座に顔を覗かせる。
 青年がほのかに笑みをたたえたまま、重い瞼を満足げに下ろすと、膝に掛けられた毛布の上を、ころりと何かが転がったような。
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