忍者ブログ

とまり木 常盤木 ごゆるりと

ひねもすのたのた

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

構成やバランスや作業用BGMについて模索する日々


お送りするのは十四個目。
そして、走行は二十四個目に入りました。


いーかげん普通の日記書けや、と思われそうですけれど。
こちらにのせてゆくのは、バックアップの意味もありまして。
……いっぺん、二個ほどお話消失させてしまったのですよ。
しかも、書きかけとかじゃなく、書き終えてたやつ。
運悪く謎のPCクラッシュがありまして。
や、きちんとデータはとっておいたつもりだったのですよ。
けれど、二つだけ、どうしても救出できませんでした。
できているとばかり思っていたので、気づいた時は真っ青です。
きちんと複数バックアップとっていたはずでしたのに!
そのショックが長引きすぎて、数年再開できないでいたくらいで。
取り返しがつかなくなる前に、保存しておきたいのです。
バックアップなんて幾つあっても良いものですし。
そういう意味で、ここにあるのは保険でもあります。
あと、書くにあたって、良い区切りにもなるのです。
一応お見せする相手はいるのですけれど。
ある程度の数がたまってから……と考えておりまして。
その前に、整頓する機会を得るのは良いこと。
持久走らしく、一定のペースやテンションを保つ要素にもなります。
なのでしばらくはこんな状態が続くと思います。
今はゲームもあまりせず、マンガもさほど読んでいないため。
つい意識が書くほうへ書くほうへ回りがちなのやもしれません。

や、でもゲーム何もしてないわけではないのですよ!
数日に一回はスマブラやって日々元気に落下しています。ちくしょう。
それに延々一次創作していると、二次創作もしたくなってふつふつ。
現在かなりジョナエリが書きたくてふるふるしているのです。実際。
けれど、習作再構築がもう少し軌道に乗るまでは……! と我慢中。
だってもえぎさんこれ書きたいジョナエリなんでまたオムニバスなの。
しかも1~6部主人公全員とか絶対大変ですよ……。
でもヴィクトリア朝関係とかおんなのことか紳士面談とか書きたい。
それら全てを詰めこもうというのですから、だいたい無謀です。
ともあれ、せめて、文庫版の1~2部揃えてからにしようと思います。
そして、そのためには置き場所確保もしなければで。
嗚呼。遠い。わたしの本棚もうほんと限界。


こんなだらだらとした流れのまま、再構築習作百話の十四個目。
以前にお見せした先生から『もっと動きを出してみては』
というご助言を頂いたので、それなら、と考えてみたもの。
こういうアプローチもありなのね…と一人で納得していました。
そして書くのも楽しかったという。
平坦なだけではなく、たまには波をつけなくては、と思いました。
どうしたら眠りと動きを共存させられるか試行錯誤中です。
なにせ題材が題材だけに、基本的に進行がベッドの上ですから。
ええ全く清々しいほど艶っぽい意味ではなく!









『若き悩みは英雄と語れ』

 ひや、と頬を撫でたそよ風に、目覚まし時計で指定していた時間よりもやや早く、青年は目を覚ます。低い位置から忍び寄ってくる冷えた気配に、夕下風ってやつはこんな高地だと容赦なしに早くやってくるんだな、と寝ぼけ頭を即座に覚醒させながら青児は毛布から体を引き抜き、薄いベッドを下りた。
 長く空にあり続けた太陽も、今は煮詰めた杏のようなその姿を、水平線の向こうへ半分以上沈ませている。いよいよ天球も彩りを変える頃合いで、それこそを青児は待っていた。口に含めばきっと燃えるように濃く甘いだろう太陽を薄い微笑で見送って、青児は「さて」と短く呟くと、残照を頼りにてきぱきと立ち働きだした。

 目覚めた時には既に、小振りのテントや、さっきまで足を伸ばしてくつろいでいた組み立て式のベッドなどが設置されていた。眠る前にあらかたの準備は終わらせていたため、これから行うのは『その瞬間』に向けての最終確認も兼ねた用意だった。
 ベッドの傍らに据えた小さな卓の上へ、魔法瓶や何かしらの機械の部品、そして地図らしきものを広げる。更に取り出した円盤状の道具をいじりながら望遠鏡の向くべき方角を調整し、太陽の残滓も消え去り手元が怪しくなると、慌てず懐から小さな赤い電灯を滑り出させ、慣れた様子で照らしては作業を続ける。
 そうして今夜の寝床兼天文台が完成すると、青児は正面に回って全体を見やってから、問題なしと頷いた。けれど青年のするべきことは、まだ残っている。
 テントに戻り携帯型のガスコンロと鍋を持ち出すと、あらかじめ道中で水筒に汲んでおいた湧き水をざあっと中に注ぎ、沸かし始める。静かに底から生じてくる湯玉の音を聞きながら、鼻歌まじりにブリキのカップへ味噌汁の素を開け、ベッドの下へ押しこめられていた鞄から銀紙に包まれた大きな塊を取り出す。夜通しの楽しみに備えて、腹ごしらえをする構えだった。
 しょわしょわと音を立て始めた鍋をコンロから下ろすと、闇に慣れ始めた目のために、すぐさま火を消した。
「よし」
 寝床、星空、望遠鏡。食料、飲み物、おみおつけ。夏とはいえど山の上では欠かせない防寒具に、筆記具の類、小腹が空いた時のおやつまでも完備している。これで迎撃態勢は万全だ、と頭の中で指折り数え、満足げに目を細めると青年はベッドへ振り返った。
 新月の夜は星明りのみで、天体観測には最適で、そのためいくら空気の澄んだ山腹でも人の目にとっては光源に乏しい。そんな中であっても青年の瞳が明瞭に捉えた、ベッドへ転がる先客の姿に、青児は思わず顔をほころばせた。
「こんな夜の、こんな場所に、かい?」
「こんな夜の、こんな場所、だからだよ」
 問いかけられた円い旧友は、ベッドにくつろぎながら悪びれもせず答える。
「きみのところが一番、綺麗に見えるだろうから」
 その場で軽く体に角度をつけ、同意を求めて小首を傾げるようにして、こぶたは青児を見つめる。ぶーちゃんIIが、さらりと寄せてくれた自分への信頼が、何だかこそばゆいような誇らしいような気がして、青児は笑みを深めると頭上を仰いで低く笑った。
「まあ、ね。こんなに豪華な天幕、俺の独り占めじゃあもったいないや」
 光の強さを問わず、比喩抜きに数え切れないほどの星々が露を帯びた霞草じみて散りばめられた満天の下で、青児は夜空を抱き締めるように両腕を広げた。


「ペルセウス座流星群は期待を裏切らずに毎年きてくれるもんだからさ、肩肘張らず、のんびり観測できて良いんだよな」
 ふうふうと息を吹きかけてから、湯気を立てるカップへ唇を寄せ、青児は味噌汁をすする。もう片方の手には銀紙から取り出したローストビーフやレタスが幾層にも重ねられた分厚いサンドイッチがあり、双方へ精力的にぱくつきながら、ベッドで並んで腰かけるぶーちゃんIIへ今夜の天体ショウについて説明をする。
「それに今年は月がないし、天気も上々。文句なしの条件だ」
 この間、こぶたから寄せられた質問は「その食べあわせはどうなの」だの「随分と欲張って具沢山にしたねえ」といった、主に青児の夕食についてだった。青年はそれらの問いに口角をにやりと上げて「インスタントのポタージュ切らしてたんだよ」や「食べ盛りですので」と悪戯っぽく応じた。
 食事を始める前に、ぶーちゃんIIも一緒にどうかと誘ってはみたものの、丁寧に辞退された。別に嫌な気はしないものの、そういえばぶーちゃんIIが飲み食いしている光景は見たことがないな、と今更のように青児は気づいた。
「なかなかない好条件に加えて、きみが今いるのは、とびきりの特等席だしね」
「ぶーちゃんIIも相席してるだろ」
 すぐ隣で防寒具にくるまることなく、毛布の作る波の上に円い体を落ち着けたまま呟くぶーちゃんIIへ、青児は小さく笑って指摘する。
 特に天体観測を目的として作られたベッドは、青児が長い足を投げ出して横たわっても、充分に余るほどの大きさだった。傍らに小さなこぶたを一匹伴うことなど、造作もない。別に自身の腹の上にでも乗せて、文字通りの同席にしても良かったのだが、何となく横に並んでみた。かつて頼り切っていた旧い友人と、肩を並べられた気がして、密かに嬉しく思えたのやもしれない。
 ややからかいを含んだ青年の声音に、こぶたは軽く転がって体勢を変え、相手を見上げる。
「確かに、この床はとても寝心地が良い。でも、僕の言う特等席は、この場所全体のことだよ」
「ああ」
 控えめな称賛を送られ青児は目元を緩めると、座ったまま改めて周囲を見渡した。

 一人と一匹だけが星空を占有している場所は、山の中腹にあった。敢えて山頂にまで到ることなく、途中で鬱蒼とした木々に覆われた細い道へそれて進み続けると、突然ぽかりと空間が開ける。
 森を抜けた先に待っているのは、丈の低い草のそよぐ狭い野原だった。
 テントやベッドを設置するだけの平坦さや広さは確保されているし、それなりの高度も維持され、何より穴場すぎて訪れる者が殆どない。青児がここをみつけたいきさつは単純で、以前迷子になったから、というだけのことで、辿り着いたのは全くの偶然だった。しかし青年はその出会いを喜び、天体観測の条件が合うたびに秘密の観測所として利用していた。
「今回は特に、季節が夏の真っ盛りだろ。そこらの観測に適した場所は、自由研究の小さい子供たちでいっぱいなんだ」
 ぺろりと夕食を平らげて、指についたグレーヴィーソースを行儀悪く舐め取りつつ、今度は魔法瓶からその蓋へと食後の熱いコーヒーを注ぐ。
「別に子供が嫌いなわけじゃないし、賑やかな観測ってのも楽しいもんだよ。けど、ゆったりくつろぎながら、一人で空を眺めたい時もあるんだ」
 たまたま今回がそうだっただけさ、と、いつの間にか手にしていた小さなチョコレートを一粒、薄いフィルムの包装を開けて口に放りこんだ。続けてコーヒーを口に含む青児を、ぶーちゃんIIは黒いビーズの瞳でじっと見つめる。
「お邪魔、だったかな?」
 先程の台詞に出た『一人で』という文句が気にかかったのか、夜の来訪者は静かに問う。しかし青児はおどけるように片方の眉をひょいと動かして、こぶたを横目にする。
「ぶーちゃんIIともあろうものが、野暮なことを言うね。意識的にだか無意識的にだかは分からないけれど、どこかで俺が望んだからこそ、きみは来たんだろうに」
 口内で緩やかにまざってゆく、温かなチョコチーノの香気が快く鼻腔を満たし、青児は空を見上げて表情を和らげる。

 体も心も成長するにつれ、内側には複雑にもつれ絡みあう事情も増えてゆく。別に青児はそれを厭うつもりもないし、きちんと誠実に向きあう腹でいる。けれど、ふと考えこみたいこともあり、そんな時に悩みを共有する対象として星空はうってつけだった。ただ今夜の話し相手である空の英雄は、音として鼓膜を揺らす言葉を返してはくれない。
「一人にも色々あって、何となく、隣に誰かいて欲しい一人ってのもあるんだよ」
 短い相槌だけでも良い、箴言や天啓など与えてくれなくても良い、ただ隣で耳を傾けてくれる、形ある存在が欲しかった。青児自身が言ったように、それは本人にも意識したのかどうか分からなかったけれど。傍らの旧い友人が、何よりの証拠だと青年は思った。
 いつだって彼は、求めた時に、来てくれた。
「お相手が一匹のこぶたでよければ」
「最良だね」
 どこか芝居がかって恭しく言うこぶたに、青児は喉の奥で笑って、手にした魔法瓶の蓋をぶーちゃんIIに向けて軽く捧げた。音のない乾杯のつもりだった。


 満足げに笑みを深める青児へ、ぶーちゃんIIはひそめた声で、こっそり魂胆を明かす。
「きみが思っているよりも、僕は我が侭だよ。呼ばれたから、という理由もあるけれど、僕だって素敵な天体ショウは、とっときのアリーナ席で観たいものさ」
「その観覧席に俺を選んで貰えただけでも光栄だよ」
「――ああ。この場所は、本当に素晴らしい」
 こぶたは感嘆の声を漏らし、ころん、と仰向けに転がる。コーヒーの湯気をくゆらせていた青児も、卓へ蓋を置くと、つられたように背中をベッドへ預けた。誰一人として邪魔する者も、星より他に余計な光もない場所で、旧い友人同士は特に語りあうこともなく、天空の英雄と向かいあう。
 そんな中、ふと。緑深い山の中で、頼りになるのはお互いだけという状態へ今になって気づいたのか、青児はこうべを巡らせると、隣のこぶたに告げる。
「もし俺が遭難したら、その時も、どうかお相手よろしく」
「そんな機会が来ないことを祈っているよ」
 低く笑い声を交わす一人と一匹の頭上で、星降る夜の先触れが一雫、夜空に撒かれた。
PR

この記事にコメントする

Name
Title
Mail
URL
Comment
Pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
792 |  791 |  790 |  789 |  788 |  787 |  786 |  785 |  784 |  783 |  782 | 

カレンダー

03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30

最新コメント

[08/27 watch news]

最新トラックバック

ブログ内検索

アーカイブ

<<
04 >>
Script:Ninja Blog Skin:Shining D
忍者ブログ [PR]