とまり木 常盤木 ごゆるりと
ひねもすのたのた
二月大生誕祭第九夜
ギャー。見直しが足りないミギャー。
や、何度も見てはいるのですけれど……。
何となくまだ表面がざりざり粗いです。
もうひとけずり、ごしごしすべきですね。
うっかり手芸に時間をかけすぎました。
そして手芸に疲れたからといって作業後DVD鑑賞してしまいました。
見直しなさいなわたし。
こんな状態で申し訳ありません……。
本日のへなちょこけいかく。
元ネタは『人魚のワルツ』。
題名だけで、もうこれはゼボイム組だろう! と即決でした。
ゼノ世界で人魚といえば該当するのは一人だけです。
実は本編設定でゼボイム組って、相当に難しくて。
ゼノのお話を書き始めた当初、途方もなく苦労した経験があります。
いまだにあれは最難産の座にいるのではないかしら、とさえ思えます。
あの頃に比べれば、少しは書けるようになったのでしょうか?
ふふ、そう思うと何やら感慨深いですね。因縁深い、かもですが。
書いてておや、となりました。
前回のゼボイム組のお話と、明らかにエリィが違います。
自分でも書いていて意外でした。彼女がこんな風に動くとは。
変わった、というより、元に戻った、のやもですね。
『娘』を切っ掛けにして本来の彼女へ……のような。
そんなことを思いながら、指を動かしてました。
わたしの計画性のなさについては突っこまないでやってください。
しかしこれでへなちょこけいかく、残るは一つです。
八つもありましたのに、人間がんばればできるものですね。
や、何度も見てはいるのですけれど……。
何となくまだ表面がざりざり粗いです。
もうひとけずり、ごしごしすべきですね。
うっかり手芸に時間をかけすぎました。
そして手芸に疲れたからといって作業後DVD鑑賞してしまいました。
見直しなさいなわたし。
こんな状態で申し訳ありません……。
本日のへなちょこけいかく。
元ネタは『人魚のワルツ』。
題名だけで、もうこれはゼボイム組だろう! と即決でした。
ゼノ世界で人魚といえば該当するのは一人だけです。
実は本編設定でゼボイム組って、相当に難しくて。
ゼノのお話を書き始めた当初、途方もなく苦労した経験があります。
いまだにあれは最難産の座にいるのではないかしら、とさえ思えます。
あの頃に比べれば、少しは書けるようになったのでしょうか?
ふふ、そう思うと何やら感慨深いですね。因縁深い、かもですが。
書いてておや、となりました。
前回のゼボイム組のお話と、明らかにエリィが違います。
自分でも書いていて意外でした。彼女がこんな風に動くとは。
変わった、というより、元に戻った、のやもですね。
『娘』を切っ掛けにして本来の彼女へ……のような。
そんなことを思いながら、指を動かしてました。
わたしの計画性のなさについては突っこまないでやってください。
しかしこれでへなちょこけいかく、残るは一つです。
八つもありましたのに、人間がんばればできるものですね。
『揺り籠ゆらすワルツ』(ゼボイム組)
画面と睨み合っている間、自身の表情が酷く冷ややかなものへ研ぎ澄まされていることを、キムは知らない。目の前に表示される厳然たる事実と、彼の俊秀な頭脳から怒涛のように溢れ出る知識が互いに高め競い合い、計算が飛び交って理論が構築されてゆく。そんな時の彼からは、一切の感情らしきものが拭い去られ、思索に集中するあまり半眼になってしまった眼鏡越しの双眸は、冷徹な威圧感すら醸し出す。
実際、彼がこのような作業に没頭すると、大抵の者は気圧されてしまい、近くへ誰も近寄ろうとしなくなる。怯えるような、忌むような、奇異なものを見る眼差しだけが、時折投げかけられるだけだった。だが彼はそんな余人の目など、側に誰がいようといまいと、一切気にかけない。そもそも彼が現在身を置いている場所には、彼一人しかいないのだから、気にする必要もない。めまぐるしい速度で流れる数字の羅列と対峙しながら、それに負けない速度で、キムは手元のパネルに浮かび上がる平坦なキィを叩く。
しかし。ふと、周囲を満たす電子音の中に、微かな旋律が混じっているように聴こえ、運ぶ十指の動きがやや鈍った。反射的に耳を澄ますと、あまりに溢れすぎて最早音とも認識できなくなっている、機械類の低い稼働音にまぎれて、確かに一繋がりの、細い旋律が聴こえてくる。
遂に彼の手が止まる。音の根源を探るため、自身が作業をしている室内をざっと見回そうとするが、そうする前に彼は奏で手をみつけた。厳密には歌い手であるその姿は、キムが画面から顔を起こし、正面の窓から見える隣室のリアクタールームを覗くだけで発見できた。
新たなる魂の器。キムが全てをかけて実現させようとしている存在が、その部屋の中央にある、細い筒状の装置に眠っている。まだ目覚めは遠く、幼子のようにまどろむエメラルドの娘へ、透明な壁越しにエリィが微笑みかける。彼女の唇が動き、リアクターの表面へ添えられた細い指が、小さく拍子を取りながら撫でる。それらの動作全てが、隣室の音声をことごとく拾うスピーカーから流れる、秘密の旋律と一致していた。
歌いかけているのか、それとも単に言葉遊びでもしながら話しかけているのかは、旋律がか細すぎてよく分からない。ただ、彼女があまりにも幸福そうに、満ち足りた表情をしているものだから。いつの間にか冷え切り、強張りきっていたキムの顔に、ぎこちない笑みが浮かんだ。
やがて、ほどなくしてエリィは、彼が『娘』の調整をしている管理室に戻ってくる。隣室で母娘二人きりだった時に比べると、やや落ち着いた面持ちでいるが、それでも朗らかにほころんだ雰囲気はそのままだった。
すっかり手を止めてしまったキムは、椅子ごと彼女のほうに向き合うと、眼鏡を外しながら問うてみる。
「あの子に、何をしていたんだ?」
少し目を休めるように、瞼を軽く押さえると、こめかみが痛いということにキムは初めて気がついた。本人は全く分からなかったが、酷く張りつめていたものから、解放されたようだった。
地味な痛みへ一瞬だけ顔をしかめたキムに、機嫌が上々のエリィは、やや悪戯っぽく微笑む。
「子守唄をね。ちょっと私も、夢を見ながら」
予想外の答えに、珍しくキムが目を見開く。どこか得意げなさまさえ漂わせたエリィは、余裕と自信に溢れているようだった。ついぞ見たことのない彼女のさまに、彼は思わずおうむ返しにしてしまう。
「夢?」
「夢よ。いつか、あの子が恋をして。そして、それを私に相談してくれたら、どれほど嬉しいことかしらって」
立て続けに彼女が発する、思いもよらない言葉たちに、とうとうキムは目を丸くしてしまう。そんな、きょとんとしたキムの前で、エリィはくすくすという微かな声を撒きながら嫣然と微笑む。桜色の唇が再び動き、残る音色を歌いだす。
「いつかおちる恋の夢をみて……」
画面と睨み合っている間、自身の表情が酷く冷ややかなものへ研ぎ澄まされていることを、キムは知らない。目の前に表示される厳然たる事実と、彼の俊秀な頭脳から怒涛のように溢れ出る知識が互いに高め競い合い、計算が飛び交って理論が構築されてゆく。そんな時の彼からは、一切の感情らしきものが拭い去られ、思索に集中するあまり半眼になってしまった眼鏡越しの双眸は、冷徹な威圧感すら醸し出す。
実際、彼がこのような作業に没頭すると、大抵の者は気圧されてしまい、近くへ誰も近寄ろうとしなくなる。怯えるような、忌むような、奇異なものを見る眼差しだけが、時折投げかけられるだけだった。だが彼はそんな余人の目など、側に誰がいようといまいと、一切気にかけない。そもそも彼が現在身を置いている場所には、彼一人しかいないのだから、気にする必要もない。めまぐるしい速度で流れる数字の羅列と対峙しながら、それに負けない速度で、キムは手元のパネルに浮かび上がる平坦なキィを叩く。
しかし。ふと、周囲を満たす電子音の中に、微かな旋律が混じっているように聴こえ、運ぶ十指の動きがやや鈍った。反射的に耳を澄ますと、あまりに溢れすぎて最早音とも認識できなくなっている、機械類の低い稼働音にまぎれて、確かに一繋がりの、細い旋律が聴こえてくる。
遂に彼の手が止まる。音の根源を探るため、自身が作業をしている室内をざっと見回そうとするが、そうする前に彼は奏で手をみつけた。厳密には歌い手であるその姿は、キムが画面から顔を起こし、正面の窓から見える隣室のリアクタールームを覗くだけで発見できた。
新たなる魂の器。キムが全てをかけて実現させようとしている存在が、その部屋の中央にある、細い筒状の装置に眠っている。まだ目覚めは遠く、幼子のようにまどろむエメラルドの娘へ、透明な壁越しにエリィが微笑みかける。彼女の唇が動き、リアクターの表面へ添えられた細い指が、小さく拍子を取りながら撫でる。それらの動作全てが、隣室の音声をことごとく拾うスピーカーから流れる、秘密の旋律と一致していた。
歌いかけているのか、それとも単に言葉遊びでもしながら話しかけているのかは、旋律がか細すぎてよく分からない。ただ、彼女があまりにも幸福そうに、満ち足りた表情をしているものだから。いつの間にか冷え切り、強張りきっていたキムの顔に、ぎこちない笑みが浮かんだ。
やがて、ほどなくしてエリィは、彼が『娘』の調整をしている管理室に戻ってくる。隣室で母娘二人きりだった時に比べると、やや落ち着いた面持ちでいるが、それでも朗らかにほころんだ雰囲気はそのままだった。
すっかり手を止めてしまったキムは、椅子ごと彼女のほうに向き合うと、眼鏡を外しながら問うてみる。
「あの子に、何をしていたんだ?」
少し目を休めるように、瞼を軽く押さえると、こめかみが痛いということにキムは初めて気がついた。本人は全く分からなかったが、酷く張りつめていたものから、解放されたようだった。
地味な痛みへ一瞬だけ顔をしかめたキムに、機嫌が上々のエリィは、やや悪戯っぽく微笑む。
「子守唄をね。ちょっと私も、夢を見ながら」
予想外の答えに、珍しくキムが目を見開く。どこか得意げなさまさえ漂わせたエリィは、余裕と自信に溢れているようだった。ついぞ見たことのない彼女のさまに、彼は思わずおうむ返しにしてしまう。
「夢?」
「夢よ。いつか、あの子が恋をして。そして、それを私に相談してくれたら、どれほど嬉しいことかしらって」
立て続けに彼女が発する、思いもよらない言葉たちに、とうとうキムは目を丸くしてしまう。そんな、きょとんとしたキムの前で、エリィはくすくすという微かな声を撒きながら嫣然と微笑む。桜色の唇が再び動き、残る音色を歌いだす。
「いつかおちる恋の夢をみて……」
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