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とまり木 常盤木 ごゆるりと

ひねもすのたのた

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『ドレスルームに輪郭ひとつ』


題名すんなり決まっちゃいましたよ。
ほんと何なのでしょう最近のわたし。


そういうわけで、モナドなお話できました。
メリアとシュルクのお話です。
メリアには、随分長いこと待ってもらってしまいました。
書き始めたのは、そんな遅くもなかったのですが。
なかなか上手くいかなくって、放置していたぶんです。
まあ短いものですから、筆が進めばすぐ終わる、ということでしょうか。
あ、今回は食べ物のお話じゃないですよ!
しかも内容にも全然絡みません。わあい快挙です。
そもそもわたしの書くモナド話は食べ物が出すぎるのです。
たまには、いやしんぼ封印で。
けれど、どう転んでもコレクションアイテムは出ます。
世界観を彩る小物類は、お話を書くのに大変助かる存在です。

プレイ当初に思ったこと、やっと形にできました。
他愛のないことですのに。どれだけ時間がかかったやら。
続きに格納しておりますので、よろしければどうぞ。
因みに墓所詣で終わった後、くらいのお話です。
あと仮タイトルが皇都ボーイズコレクションだったのはひみつ。
我ながらひどすぎます。


『ドレスルームに輪郭ひとつ』(ゼノブレ。メリアとシュルク)


 ぱちん、と何かの金具が留まる、軽快な音がする。それを生み出したのは、白い、細い、華奢すぎる指だった。
「うむ」
 メリアは彼女の指に似つかわしくない、厳めしい鎧の留め具をきちんとはめると、満足げに頷いた。その場から数歩後ずさると、自らの手で仕上げたばかりのものを改めて確認するためか、上から下までしげしげと眺める。そしてその出来は、薄く微笑を刷いた表情から察するに、至極、彼女の気に入るものであったらしい。
「これで良かろう」
「ありがとう、メリア」
 姫君からのお墨つきを貰い、ハイエンターの鎧に包まれたシュルクが、くるりと振り返る。笑顔で礼を述べるも、彼の意識は今、自分の身に着けている新しい装備に大部分が向かってしまっているらしい。話しながらも落ち着きなく、腕を伸ばしたり膝を曲げてみたりと、全身の確認に余念がない。それでも、元が好奇心旺盛な性質であるためか、こんな単純な動作さえ目を輝かせて行っている。
 そして上半身を捻り、つい先程メリアが留めてくれた、背中側の仕組みを見ようと試みる。
「こんな留め金になってるんだね、珍しいなあ、ハイエンター独特の仕組みなのかな。手は届くから自分で留めてみよう思ったんだけど、上手くいかなくって。ほんと、助かったよ」
「たいしたことではない。そのうちに、シュルクも慣れるだろう」
「そうだね。野営の後とか、自分ですぐに着けられるようにならないと」
 初めてまとう、ハイエンターの技術で作られた武具に、シュルクは興味が尽きないようだった。しかし彼は、これらを装備する前の段階で既に、手に取り、触り、矯めつ眇めつ観察に熱中していた。そのため、近くにいたカルナから「シュルク、調べるのは後よ!」と、早く着けるよう促され、慌てて袖を通しだしたという経緯がある。
 装着が終わり、これでようやく、ゆっくりと観察を続けられるのが、嬉しくてならないらしい。なおも盛んに全身を見て回る、どこかはしゃいだそのさまを、メリアはそっと目を細めて見つめていた。微笑ましいのか、嬉しいのか、彼女自身よく分からない。ただ、なんとなく。胸の中がほっこりと、あたたかなもので満たされてゆくような感覚だけを、おぼえていた。


 墓所詣でが終わり、立太子の儀を済まし、民へのお披露目もしたところで、ここ数日忙しく立ち働いていたメリアに、ようやく暫しの休息が訪れた。それはシュルクたちも同様であったため、ソレアンの厚意で、久し振りに全員が落ち着いて会えるように計らってくれた。しかも直々に命を下し、皇宮の武具庫を開け放つと、中身を自由にしてくれて構わない、とまで言い切った。親として、娘の恩人たちへの、せめての謝意の表れだった。
 気兼ねなく装備を見て回れるよう、人払いまでされている。もっともこちらは、メリアが仮面をつけずにいられるために、という配慮からやもしれなかったが。ともあれ一行は、その厚意を謹んで受けると、談笑しながらあれこれ装備を吟味していた。
 少し離れた場所では、やはり留め金に四苦八苦しているラインに、意外やリキが扱い方を指導してやっている。ハイエンターとの交流や交易があるため、仕掛けにも見慣れているらしい。苦戦するラインをまるで練習台のようにして、その傍らでカルナがリキの説明に聞き入っている。因みにダンバンといえば、何となく肌で分かってしまうのか、大体装備を整え終えかけていた。
 そして、メリアは。別に意識したわけではないのだけれど、いつの間にか、シュルクの装備について、面倒を見てやっている。
「やっぱり、軽い」
 手足を動かす程度では物足りなくなったのか、今度はその場で少し跳躍してみせたシュルクが、感嘆を漏らした。
「素材が違うのかな…それとも加工? 両方かもしれない。凄く強靭で、粘りのある金属なのに、びっくりするくらい軽いや」
 真剣な面持ちで様々な仮説を独りごちつつ、思わず小手を外すと素手になり、そのまま鎧の裾や肩の曲線に触れてみる。新しい玩具を得た子供のような、はしゃいだ風はどこかなりを潜め、真摯に未知の材質と向き合う。けれどそんな、研究者然とした発言や表情をしているというのに、メリアは唇を小さく、弓の形に引いた。
「そうだな。少なくとも、先日のように、シュルクが潰れてしまうことはあるまい」
「……あれは例外だよ」
 少しの沈黙の後、唇を尖らせるように漏らされた言葉に、くすくすという声を押し隠すべくメリアは口元を押さえた。

 皇都へ向けて、エルト海を旅していた頃。日が落ちたため野営となり、火を焚いてくつろぎながら、装備品の点検をしていた時だった。他愛のないお喋りをしているうち、シュルクがラインの装備を身に着けたらどうなるか、という話になった。ラインは無理だとからかい、シュルクがむきになり、親友愛用の重装備群をまとってみたところ。あまりの重みに圧倒され、その場に膝をついたまま、動けなくなったのだった。それを見た仲間たちの笑うことときたらなかった。
 この件で、シュルクはすっかりふててしまって。ようやっと笑いの衝動がおさまった面々が、身動きの取れないシュルクから装備を取り払い、救出してやっても機嫌はなかなか直らなかった。これには仲間たちも、流石にちょっとからかいすぎたかと反省したらしい。しばらく離れた場所でこそこそと話し合い、幾人かが夜のエルト海へ出かけ、戻ってくると残っていた者が交代で出かける。そんなことが数度続いた。
 焚火に背を向けたままのシュルクが仲間たちと顔を合わせ、にっこり笑うようになったのは、膝の上にお詫びのマリンマーブルと鋼鉄アウインが幾つもまとめて落とされてからだった。

 当時のことを思い出して気恥ずかしいのか、やや赤い仏頂面で、シュルクがメリアから目をそらす。その顔色の理由が、子供みたいに不貞腐れたことか、好きな贈り物でころりと態度を改めたことか、どちらが主たる原因かは分からなかったけれども。未知のもの、そして美しいものへ、たちまち心奪われてしまう彼のさまを思い出し、メリアは長い袖で口元をそっと覆いつつ、ますます笑みを深めた。
 が。そんなシュルクを眺めていた彼女は、あることに今更気づき、はっと目を丸くする。急いで視線を周囲の武具棚に巡らせると、ほどなく目当てのものを見つけ、安堵したように表情を緩め、そっと手に取る。
「すまぬ、シュルク。鎧にかかりきりで、兜のことを忘れていた。これを」
 さっきとは調子の違う声音に、シュルクも頬の色を落ち着けて、メリアに視線を戻す。すると彼の目に飛びこんできたのは、ひどく優美な武具だった。
 メリアが差し出したのは、鎧などと同じ意匠で装飾の施された、兜。頭の後ろから左右を優しい金属の指が包みこむような形になっており、滑らかな曲線を描く指の先端、位置で言えばこめかみの上にはマリンマーブルにも似た宝石が埋めこまれている。うなじの中央にあたる部分にも、輝石が一つ鎮座し、兜自体がそれを種に生まれ出たような印象を与えた。戦いに用いられる品とは咄嗟に思えない、あの清冽に美しい、空の写し鏡とも言える海と同じ名を授けられた、エルトギアだった。
 貴族の装飾品にさえ見える、繊細な手で丁寧に仕上げられた典雅な品に、シュルクは喉の奥で歓声を飲みこむと、きらきらしいほど顔を輝かせた。

 恭しい手つきで、声もなく、メリアから兜を受け取る。そして硝子の王冠だってこれほど丁重ではあるまい、というほどの取扱いでシュルクはエルトギアを観察する。様々な角度から眺め、嘆息とも歓声とも取れない声を発するさまを、メリアは微笑ましく見守る。彼女にとっては見慣れたものへ、シュルクは溢れんばかりの好奇心で向き合う。何のてらいもない、素直で、生き生きとした表情はメリアに眩しいほどだった。熱っぽく輝く花紺青の瞳を、まるで流星雨を受け止めるエルト海のようだ、とメリアは彼女のとても慕わしいものと同じに、見つめていた。
 そんな中。取り敢えず観察に一区切りがついたのか、ほくほくと満ち足りた表情のシュルクが自身の頭上に兜を装備しようと掲げた時、彼はあることを閃いた。すとん、と彼のふわふわした金髪に金属の指が滑りこむ。にこりとしてメリアに向き合うシュルクへ、彼女は何だろうと思いながらも、相手の反応を待つ。
「これで、メリアとお揃いだね」
 頭部を後ろから抱き締める形をしたエルトギア。そこへ左右対称に、耳の後ろあたりから、小振りな翼が張り出している。金属でもない、輝石でもない、不思議な素材でできた、昼の淡いエルト海色をした透き通る翼の意匠を、シュルクは指差して無邪気に笑う。
 メリアは、すぐに意味を理解できなかった。咄嗟に頭上へ疑問符を乗せそうになるも、突然、彼の人差し指が示すものに気づいた。シュルクの瞳と揃えてあつらえたような彩りの、小さな、翼。彼女の持つものに似た。それ。
 分かった途端、メリアはみるみる顔中の血色をよくしていった。ただでさえ白皙な面をしているため、一旦熱が巡りだすと、頬は紅を刷くというより朱に染め上げられてゆく。このままではオドリンゴにも負けない彩りになってしまうのも、時間の問題と思われた。
 しかし、そこは高貴な立場にある者の矜持で。傍目には分からない懸命な、悲壮なまでの努力で、必死に動揺を押さえつけようとする。長年、帝王学で鍛えられてきたメリアの底力、むしろ意地だった。ただし顔色まで制圧するのは不可だったらしく、答えながらも顔だけは全力で明後日の方向を向いていた。
「そっ、そうだな、おそろいだな!」
「うん。お揃いだよ」
 メリア本人は内心の取り乱し方をどうにか隠し通しているつもりだったが、気の毒なほど裏返った、すっとんきょうな声音は、どうしようもなかった。けれど、そんな音程が迷子になっている落ち着きのない声にも、新たな発見にすっかり満足しきっているシュルクは気づくことなく、朗らかに笑むばかりだった。
 そんな二人の遣り取りを、こっそり遠目に確認しながら、カルナは小さく微苦笑を浮かべた。
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