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とまり木 常盤木 ごゆるりと

ひねもすのたのた

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いっそ放生月毛で凍った湖を駆けそうなくらい


来年の大河に絶望していることは最早言うまでもないのですが。
だからこそ。なのか。色々開き直りそうな自分が怖いです。


この夏に、初めて歌舞伎を観に行ったのですよ。
どうしてまた歌舞伎、と思われそうですけれど。
前々から行きたかったのですが、ようやく都合がつきまして。
しかも、観たくて観たくてたまらなかった演目がきまして。
なにせ上杉・武田がメインのお話ですからね!(笑)
ほんちょうにじゅうしこう。
ただ、メインとは言いましても、やはりそこは歌舞伎。
史実そのままであるわけがなく、相当にやりたいほうだいです。
設定だけ見てもはちゃめちゃすぎて、どうしようかと思いました。
軽く挙げてみるだけでも、こんなの。

・謙信さまにご実子がいらっしゃる
・謙信さまの頃なのに直江山城がいる
・謙信さまが諏訪法性の兜ぱくってる
・武田も結構ぐちゃぐちゃ(特にかんすけさん)
・将軍が思いっきり暗殺されてる

枚挙に暇がありません。
まあ…歌舞伎ですから、あんまり突っ込んじゃいけないのでしょうけれど。
それでも、一個目は突っ込みたくて仕方がありません。
あ。しかも、もしかすると景勝さまもご実子扱いですかあれは。
お話の主人公は、景勝さまの妹姫(!)さまですしね。
因みにモデルは妹姫さまでなく、奥方さまである菊姫さまだそうです。
確かにこのご夫婦は川中島ロミジュリご夫婦ですが。
きっと江戸時代でも、この辺りに人はロマンをおぼえたのでしょう。
次世代上杉ご夫妻ひいきのもえぎさんとしてはこのお話は狂喜乱舞です。
もう、姫さまの衣装が菊尽くしなだけで、嬉しすぎます。
豪奢なキモノの意匠が、ことごとく菊の図柄でした。
菊さまの一部が、こうしていきているのかと思うと、じんわりくるものがあります。
景勝さまも、菊さまも、お二人とも、とてもとても好きなのです。
ああ上杉ご夫妻だいすきだこんちくしょう。

ここでは、お話の細かな説明は致しません。
と、申しますか無理ですあんなややこしくて長いの。
わたしが見た段の、概要かいつまむのも大変です。
相当に略してるところもありますので、あまり信用なさらないで。
きちんとしたのが知りたいとお望みでしたら、どうぞぐーぐるさんで。

さてさて。
勝頼さまとヒロインたる八重垣姫は、お互い顔も見たことのない許婚。
けれどある日、勝頼さまがご自害されたとの報告が。
姫さまは夫の絵姿を眺めながら、菩提を弔いつつ悲しみ暮らします。
ところが一年経った頃、上杉の館に、絵姿にそっくりの青年が現れて。
実は勝頼さまはご存命、自害したのは影武者だったのです。
(この話、こういう展開が鬼のように多いのです)
で、変装されたまま、上杉に潜入。
手引きをするのは、姫の腰元である、実は武田サイドの人間、濡衣。
勝頼さまとひそひそ色々相談しておりましたら――
その姿を目撃した姫さま、これは夫であると直感で確信。
若干どぎまぎしてる濡衣を介して猛アピール。
この熱烈ラブアタック加減が大変可愛らしいのです。
で、この三人は結託みたいになりまして(厳密には少々違いますが)
ひとまず勝頼さまを甲斐へ帰還させることに。
けれども越後の龍はそんなのばっちりお見通しで。
勝頼さまへ討ち手を差し向け、濡衣を捕縛します。
さてさてどうなる彼らの運命はいかに――

だいたい、上記のようなのですが。
あのですね。その。姫さまがとても可愛らしいのです。
一途で真っ直ぐ、思い込んだら一直線、迷うことすらありません。
むしろ謙信さま蹴倒してでも己の恋を成就させそうな勢いで。
清々しくも微笑ましいアグレッシブラブです。
恋に落ちたら。自分に正直まっしぐら。脇目もふらず盲目に。
可愛いなあ可愛いなあとばかり思いながら観賞しておりましたら。
……どーいうわけだか、こんなことになりました。
色々鬱々としてたときに殴り書いたら、こんなことに。
全国の歌舞伎ファンの方ほんまごめんなさい。
心の広さに自信の方のみ、続きからどうぞです。

『そのやえがきを』

「何ということを仰るのです……!」
 絵姿でしか会うことの叶わなかった、会うことすらできずに果てたと聞かされた、許婚。しかしかのひとは身代わりを用い窮地を脱し、花作りに身をやつすと、長の年月因縁の深い敵国へ単身潜入を試みていた。それにより、期せずして姫は想い人との邂逅を果たすこととなった。しかし。それこそ、夢にまで見た夫を、奇蹟のようにして出会うことのできた我が背子を、父は家臣に『討て』と命じた。まだ見ぬ夫の死を告げられてより一年、香を絶やすことなく祈り続けてきた姫にとって、その言葉はあまりにも無慈悲だった。
 たまらず、声を詰まらせかけながら、父にすがりつく。
「父上様、父上様。どうか、かような命はお取り下げくださりませ!公方様のお計らいで、わたくしと勝頼様は夫婦となったのです。たとえ、一度たりとも、会うことがなくとも……けれど、ようやっとお会いすることができたのです!わたくしの愛しい方なのです!どうか、お願い申し上げます……!!」
 涙まじりに、悲鳴のように訴える。黙したままの父へなおもおいすがるも、越後の龍の決意は巌よりも硬く、決して揺らごうとはしなかった。しかも父は、愛娘の声を無視するように、敵と内通している姫の腰元をも捕縛しようとする。ほかでもない、潜入してきた勝頼に、引き合わせてくれた腰元の濡衣を。
 乱暴に衣を掴まれ、濡衣の憐れっぽい声が部屋に響く。姫の哀願も次第に声を落とし、父の袖へすがりついたまま、その場へ崩れ落ちた。
 ――が。
 まさに濡衣を、その手で引っ立てようとする父の側へ、ゆらり、と八重垣姫が立ち上がる。俯いたまま、肩を震わせている。先程とは打って変わった態度に、一瞬、父が動きを止め視線をやる。するとその前で、姫はゆっくりと顔を上げた。
 大きな瞳に設けられているのだろう、眼の堰、その限界へ挑むように、ふるふる震える巨大な涙の粒を両眼に宿す。悲しみと怒りが混在した表情のまま。
「父上様の…父上様の、ザ・AHOOOOOOぉおおおおぉぉ!!」
 叫び。床を蹴り、宙を舞い。とうとう大粒の涙をぼろぼろと落としながら、見事なクロスチョップを越後の龍へ叩き込んだ。
 それは最初から狙い定めていたかのように、的確に頸動脈を捉えた。

「意味が分かりませぬ何を考えておいでなのです一人娘の哀訴を退けるとは何事なのです!?濡衣はわたくしと勝頼様の間を取り持った、わたくしにとっては神使のようなもの!そのものを苛むわ、勝頼様に追っ手をかけるわ…まさに悪逆非道の数々。これをわたくしに対する挑戦と思わずしてなんとしましょう!!軍神が娘として、正面からお受けする覚悟は疾うにできております、父上様!!」
「や…八重垣……両サイドからきたからこれ……ダブルだから……」
「ひ、姫様…クロスチョップの真骨頂にございました……」
 愛娘からの思いがけない攻撃に、流石の軍神も首元を押さえてその場に膝をついた。それにより、濡衣を拘束していた手も緩まり、ついでに張り詰めていた緊張も緩んだのか、彼女も一緒にへなへなと座り込む。
 何とかこれで濡衣の連行は阻止し、よって味方も得たと判断したか。それとも単に、言い足りないからか、八重垣姫はなおも続ける。愛らしい面を、さんざ零れ落ちる涙に濡らしながらも、それでも可憐な菊花のごとき麗しさは微塵も損なわれていなかった。
「そもそもこたびの一件は、父上様と甲斐の虎による、長年の諍いが遠因にございましょう?むしろ諸悪の根源でありましょう!?後年散々『はかのいかぬ戦』だのなんだのと馬鹿にされた、同じ場所で四度も五度も繰り返し続けたあの戦!最終的に相撲で決着つけたりしたあたり、アホらしいにもほどがございます!!その所為でわたくしは婚約した後も一度たりとて勝頼様にお会いすること叶わず、絵姿に惚れ惚れと見とれるのみにございました。そこへきて、勝頼様ご切腹とのよし、わたくしの袖がいかに濡れそぼったか、知らぬとは仰いますまいな?しかも一年にございますよ一年!勝頼様の菩提を弔い続けたこの一年、そこへ現れたご健勝な勝頼様のお姿、……絵姿の数倍にもいや増して、見目麗しいそのお姿に、この胸がどれほど高鳴ったことか!それを……!!」
「や。その。八重垣。やめて、アイアンクローやめて」
「流石に危のうございます、姫様!……お屋形様のほうが!!」
「いーえっ!まだまだ聞いて頂きます!!」
 ついさっきまで己を捕らえていた相手を、濡衣がかばおうとする。アイアンクローをかまされた越後の龍が、危険な容態になりつつあるのを、敏感に察したがゆえらしい。慌てて腰を上げ、姫を止めにかかる。しかし姫の爆発した感情はなお衰えることがなく、がっちりと父を捕らえたその掌もまた、おさまる気配がない。
 そこへ、場違いなほど落ち着き払った、低い声が涼やかに響く。
「――戻った」
 その声に、場に居合わせた面々は、はっと一瞬平静を取り戻す。熱くたぎりはじめた場に、快い冷水でも浴びせかけられたようだった。面々はすぐさま視線を声の主へと向ける。ただ、意識が朦朧としかけている越後の主は別として。姫と腰元が見やった先には、龍を継ぐべきご嫡男、八重垣姫の兄たる景勝がいた。どうやら、何か父より与えられた命を果たし、館へ戻ってきたらしい。
 冷静至極の次期当主は、眼前で繰り広げられている情景を、何一つ驚くこともなく淡々と受け取る。静まり返った水面のような表情に、波紋が走ることはない。ゆっくりとほんの一つ、瞬きをしてみたばかり。いささかも動じず、ある種の修羅場を展開している父と妹のもとへとやってくると、姫に、す、と風呂敷を差し出した。
「土産だ」
 短い言葉が終わるか終わらないかくらいに、包みからぽこぽこと、新鮮なたけのこが幾つも溢れてくる。口角を僅かばかり上げる気配さえない、笑みの欠片すら縁遠い兄の様子に、姫の目元はまたじわじわと水をたたえ始め、ほどなく再び決壊した。床にちらばったたけのこを、意図せずぽけぽけと蹴散らす。
「うあああああぁぁぁん!お聞きくださりませ、兄上様ああああああ!!」
 泣きながら、わっと兄の胸元へ顔を埋める。それでもアイアンクローは、がっきと、獲物を捕らえたままだった。
「景勝様、どうか姫様をお静めください!このままではお屋形様が……!」
「八重垣」
 荒れ狂い、乱れる姫の心へ、ひたりと寄り添い、鎮めるような声音で妹の名を呼ぶ。兄からの呼びかけに、姫も声をぴたりと止めた。潤みきった、もうすっかり赤くなってしまった瞳で、兄を見上げる。くすん、と小さく鼻を鳴らす音が聞こえた。兄は、真っ直ぐに妹姫を見据える。
「Theの後が母音なら、発音は『ザ』ではなく『ジ』となる」
「いえ景勝様そっちではなく!」
 何処かずれた所でやたら冷静なご嫡男へ、思わず濡衣が突っ込む。むしろ、私がいなくてはこの家ツッコミがいないのでは、とそろそろ気付き始めた。
 しかし濡衣の心配をよそに、結果は良い方向へと転がり始めた。兄の言葉にどういうわけだか感極まったのか、姫は手の力を緩めると、筆より重いものなど持ったことのなさそうなその白魚の指を、そっ…と己のかんばせに添えた。むしろ、袖を目元に当てることを優先させたからこそ、拘束していた対象を投げ出した、とも言える。過程はともあれ、こうして越後の龍はやっとのことでやばそうな顔色から脱することができた。ぜえはあと荒い呼吸で、肩を大きく上下させている。酸素不足の所為か、世にも恐ろしい体験の所為か、顔色はやたらと悪い。何と言うか蒼白やら土気色を通り越して、どす黒い。その父の眼前で、八重垣姫は景勝の胸元にすがりつくと、すんすんとか細い泣き声を上げる。
「兄上様…なにゆえ、かようなことになったのでしょう?もとをただせば、我らの父上様と我が夫君の父上様が悪いだけですのに。次世代まで巻き込まないで頂きとうございますわ……きっと、勝頼様と兄上様の代となりますれば、両国に無益な戦などなくなりましょうに。あら?もしや……。父上様がお腹召しますれば、四方丸くおさまるのではありませんか?ご公儀への面目も立ちますし、円滑に世代交代も相成ります。なれば、勝頼様へ討ち手はかからず、道中つつがなく甲斐へ戻られ、近く家督を譲り受けられれば、すぐにわたくしを迎えにいらっしゃるはず。そしてわたくしは、甲越一の花嫁御寮!勝頼様と兄上様と共に暮らし、幸多き生涯を送るのです……!!」
「わしと勝頼殿は共に暮らさぬぞ」
「景勝様。訂正されるべきは、そこではないと思うのですが」
「……勝手に主君を殺す方向に定めるでない。わしは腹など切らぬ」
 まあ名案、とばかり立て板に水な妹姫の口上を最後まで聞いた兄の感想に、そろそろ手慣れてきた様子で濡衣が突っ込む。そこへ多少落ち着いてきた軍神が、若干息も絶え絶えに、これだけはと宣言する。今の姫の勢いでは、強制的にでも腹を切らされかねない。毘沙門天の化身と讃えられ、また同時に恐れられるもののふを、ここまで追い詰める八重垣姫の底力、侮りがたしと考えられた。

 結局。
 勝頼様も兄上様も大好きですのにああああああん!と、またも泣きじゃくり始めた姫君を、景勝は恐れることもなく受け止めた。そして、妹を胸元に取りすがらせたまま、てきぱきと指示を出してゆく。取り敢えず父は暫し休養、濡衣は詮議あるまで姫の下で待機…ついでに姫を落ち着かせること、などなど。理想の未来を思い描くあまり、当初の目的である『勝頼への討ち手を取りやめさせる』ということを、姫が忘れている間に。
 景勝は、義兄を『討て』とは言わなかったが、『討つな』とも言わなかった。敢えて父の出した命をそのままにしておき、密やかに実行へと移させたのだった。姫がこの事実に気付いたのは、自室で濡衣と二人きりになってからのこと。
 そして。姫は、部屋を抜け出した。かくなる上は、自らが勝頼のもとへ赴き、危急を告げねばと考えたからだった。側に腰元がいるから、と判断されたからか、監視はついていなかった。本来ならば、その腰元を監視しておかねばならなかったろうに。不思議と、姫と濡衣は誰に見張られてもいなかった。そのため、姫は楽々と部屋からも、屋敷からも、抜け出すことが可能となった。
 長い衣の裾をからげ、駆けるうち、『もしや、兄上様はここまでご存知だったのかしら?』と、寡黙な兄の胸中へ思いを馳せる。ひそりと、自然に、家中のものどもの注意を姫からそらし、その気があるのならやれば良いとばかりにお膳立てしてみせた。兄の思いやりか、それとも罠か。考えれば考えるほど、身動きが取れなくなりそうだったが、姫は絡みつく桎梏を、ぱん、とはねのけ嫣然と微笑む。その表情は、先に浮かべた童女めいた愛らしさの残るものではなく、酷く艶っぽいものだった。
 やがて、奥庭の社へ辿り着くと、迷うことなく中へ入る。そこに祀られているのは、父が決して返そうとはしなかった、武田の重宝諏訪法性の兜。ずしりと重い兜を押し頂くように手に取った姫の周囲に、無数の白狐が、瞬時にわっと現れ出ては群れ集う。
 その従者たちをみとめてか、にぃまり、桜桃の唇を弓の形に微笑ませると、そっと指を湖へ指し示す。瑕疵一つ見当たらない、人形めいて整った、白く透き通るような指だった。言葉はなくとも、それが合図。数え切れない狐たちが、我が先陣、我がしんがり、我が後詰で我は旗本、と即座に己の役目を理解し姫を取り囲む。吐息のように、声が漏れる。その姿は、皓く燃ゆる白菊のごと。
「さあ。」
 音もなく、凍て付いた諏訪湖へ飛びうつる。実際、足音一つ、立たなかった。そして。駆ける。白狐の軍勢を引き連れて。姫の足跡を隠すように、諏訪湖へぴしりぱしんとヒビが入る。それはやがて対岸にまで達し、一つの細い道となる。恋しい、愛しい、ただひとりへと続く、恋する姫の、おみわたり。
 夢見るように。熱にとろりとまどろむように、あだっぽく目を細めて、姫は囁く。
「恋しいお方に、会いにゆくのよ」
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