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とまり木 常盤木 ごゆるりと

ひねもすのたのた

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カウントダウン、ひとつ、ふたつ

色んなことが起こりすぎて、色んなことが近づきすぎて。
もうもえぎさんの容量はげんかいを迎えつつあります。


お陰さまで日記もろくに書けていませんよ。
七割がたはモノリスさんの所為だと思いますほんともう困っただいすき。
あと二日。あと、二日……。
精神状態が良い意味で悪いです。
最も的確に現在のさまを表現できる言葉が、これしかありません。
あと。ふつか。

ぜのぶくろ中の日記どうしましょうね、つけましょうか……。
だいたいわたしのプレイメモ状態になるでしょうけれど。
きちんと書き残していたら、後で見直してあそべますし。
あくまで一応、レベルですけれど。書きたいとは思っています。
しかしプレイ中はネタバレ回避のため躍起になりそうです。
また前作のように月単位で半分くらいネット断ちモードになるのかしら。
完全に断つことは難しいので、ちょくちょく繋ぎはしましたけれどね。
いやもうほんとネタバレは避けたくて。
現時点で飛び交っているという話も聞きますし、こわいこわい。
ああ、さにわライフもあと少し……。


ブレイド隊員になる前に。
習作百話、最後のストック放出です。
これでかきためたものは、おしまい。
後は頓挫したのとか挫折したのが屍めいた累々とあるだけ。
……そっちも、ちゃんと、かたはつけます。
そんな四十六個目です。









『ニュートンも揺り籠なんて振りきって』

 ゆらゆらと、墨人は揺れる。厳密に表すと、墨人の頭が、揺れている。
 不規則な振り子じみて、深く、浅く。前へ傾いたかと思えば次は後方へ緩くのけぞり、かと思うと今度は頭頂で小さな円を描くように揺れ動いてから、また沈むように俯いてしまう。その動きに法則性はなく、ちっとも定まらない。机に向かう当人の、ぼんやりとした半眼の焦点もまた同じく、さっぱり定まらない。
 おかしな挙動を繰り返す少年の傍らで、黄色いこぶたは一定の間隔を保ったまま左右へ転がり、規則正しい律動を刻む。最大限に有効活用された円い体が、即席のメトロノームと化す。一分の間にどれだけ揺れているか分からない墨人より、余程正確な回数を重ねながら、ぶーちゃんIIは少年を見守る。
 黒いビーズの瞳が映すその姿は、次第に動きへ荒々しさを多く含みだす。先よりも振れ幅を大きく、規模も広げて、腰から上を全て動かすように。嵐に吹きまくられる笹舟じみて、前後へ激しく揺れ動くたび、手にしている鉛筆が持ち主の意図しない線をノートへ走らせ始める。
 墨人のノートは、授業の内容が要点をきちんと押さえた上で分かりやすくまとめられており、たまに借りる友人たちからは見やすいと大評判なものだった。しかしそんな、美しく整えられていたノートも今や、縦横に駆ける右手のお陰で非常に前衛的な書体が躍っている。腹筋運動にも似た上半身の動きへ引きずられ、こちらも勢いの止まらない鉛筆が、常人には理解の及ばない装飾じみたものさえページへ施しだしたところで、ぶーちゃんIIはおもむろに停止する。そうしてしげしげと、改めて墨人を見上げた。
「眠いの」
「ねむく、ない」
 疑問符のついた問いかけではなく、あくまで確認のため声をかけたぶーちゃんIIへ、虚ろな目をした墨人は否定で応じる。優しく、甘く、差しのべられる睡魔の手と半分以上は繋いでいた指を、掌中へ実際にある鉛筆をきつく握り締めることで引き戻した。


「眠いよね」
「ねむくなんて、ない」
「眠いでしょ」
「全然、ねむくない」
「眠いのに」
「ちっとも、ねむく、ない」
 押し問答というよりも、のれんに腕押し問答とでも呼ぶべきものを、一人と一匹は繰り返す。こぶたが投げかける言葉へ対し、確かに少年は答えている。けれど問いの内容が脳まで辿り着いているかどうかは、極めて疑わしかった。情報は脊髄で止められて、返しているのは単なる反射に過ぎないようでもあった。
 そんな惰性じみた遣り取りを交わす間にも、墨人の揺れはますます大胆に激しく、躍動感に溢れ、止まらない。まるで腕によりをかけるように、一層荒ぶってゆく動きに伴い、墨人の返事に宿る説得力も、いよいよ失われてゆく。
 視野は最も痩せた夜の三日月よりなお細くなり、少年の理性と下りようとする瞼の攻防は間もなく勝敗が決しそうだし、開かれたっきりの教科書は繰られる気配もなく同じページを晒し続けている。つまりは勉強など、これっぽっちも進んではいない。なのに墨人は頑として、曲芸の域にまで達するほど大時化に舟を漕いでいる自身のことを、認めようとはしなかった。

 実のない会話を幾度か繰り返してからこぶたは、ふむ、と動きを止めて考えこむ。なおも激しく揺れ動く無言の墨人を前にしたまま、しばらく天井を仰ぐように転がっていたものの、遂に何やら新たな策を思いついたらしい。
 円い体を起こし、その場に腰を落ち着けたぶーちゃんIIは、改めて墨人を見上げる。
「眠いよね」
「ねむくなんて…ない」
「眠いでしょ」
「全っ然、ねむくない」
 先程と、ほぼ変わりない不毛な質疑応答がまた再開される。どこまでも眠気に苛まれている事実を受けいれようとしない墨人は、もう指先に力すら入らないだろうに、それでも鉛筆だけは握り締めていた。ある意味、強靭な精神力だった。
 盛大に舟を漕ぎながらも机にかじりつく少年の根幹を目の当たりにして、こぶたは小さく笑んでから柔らかな声を、ころりと攻め口を変えて投げた。
「眠くないね」
「…………ねむ、い…………?」
 想定している場所へ飛びこんでくる打球を、頭脳でなく本能でもって打ち返し続けていた墨人が、予期しない変化球に空振りをした。いっそ、その手に握り続けていたラケットを、取り落としたようだった。見えないテニスコートで展開されていた、こぶたと少年による熱い打ちあいは、こうして幕引きとなった。
 ぶーちゃんIIに対する返答の中で、否定していた眠いという事実を自ら認めてしまったことで、糸が切れてしまったのやもしれない。その短い一言を発した途端に、墨人の体から明らかに力が抜け、前後の運動は振れ幅を縮小してゆき、やがて無言のまま前方へゆっくり上半身を沈めていった。
 机に向けてうなだれ、体に押される形で肘が、手首が、天板へぴたりと接する。そうして遂に、俯きすぎた墨人の額が、手にしていた鉛筆の平坦な端にぺたん、と触れ、とうとう得物は指の間から零れ落ちた。
 睡魔と切り結んでいた武器が放棄され、墨人の奮闘していた二つの戦場に、それぞれ愛用の品が投げ出されることになった。物理的な意味でも支えとしていた鉛筆を失うことで、少年の上半身はそのままいよいよ、机へと吸い寄せられてゆく。両腕は気怠げに伸ばされて、広げられていたノートや教科書に覆いかぶさり、交差した場所へ落ちてゆく額を受け止める。
 じりじりと机へ沈みゆく体が、やがて動きを止め、安住の体勢をみつける。そうして静かな寝息が聞こえ始めるのを確認し、こぶたの軍師は策が図に当たったことへ満足げに頷いた。
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