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とまり木 常盤木 ごゆるりと

ひねもすのたのた

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未知なる星の開拓しつつ心は馳せる新世界

モノリスさん、あなたは。あなたというひと……いや会社は。
なんてことを。こんな、短期間に。


謎の新世界疑惑サイトが明確に新世界となり混沌としております。
衝撃と動揺と歓喜と体育館裏でもう。
今年、モノリスさんはどれだけこちらの懐と時間を奪うおつもりか。
わたしこれで次にバテン新作きても驚きませんからね!
ほんとあなたは! もう! だいすき!!
けれど今度こそシオンさん参戦しなかったら最早問答無用体育館裏です。

新世界はきっと、参戦枠発表を待つ間が、素晴らしく楽しい。
あれやこれやと枠の予想や希望を考える時間の心浮くさまときたら。
お陰で、これからしばらくは楽しみが尽きそうにありません。
もうすぐ始まるミラの開拓に走りだしても、新世界も胸の奥に。
何せ、映像の最後にあった、あの後姿。
あの二人がいてくれるのです。これほど安心することはありません。
早く会えるように、触れられなくとも、せめて声が聞けますように。
密かに胸を高鳴らせながら、お待ちしています。
そして飛竜さん復活おめでとうおめでとう!!


テンションの落ち着かないまま、ストック終盤習作百話。
「だからわたしにSFは無理だと」と言いながらの第二段です。
この子については、もう二回ほど書けたら良いなあ……と思います。
なんちゃってSF。いっそこれ、すこしふしぎ? な、四十五個目。









『黎明の昏迷』

 硬質なベッドからぎこちなく起こされた右腕を、ぶーちゃんIIは黒いビーズの瞳を輝かせて見上げる。こぶたのきらきらとした熱視線を浴びながら、娘は確かめるように肘から先を垂直に近く曲げ、やがて指を端から順に折っては伸ばす動作をゆっくりと繰り返し始めた。
 ぶーちゃんIIは唸るように感嘆の息を吐く。
「指先まで、指になったね」
「はい。マニピュレーター部の被覆は完了しました」
「動きも滑らかだ」
「はい。プログラムが更新されました」
 以前の訪問時と異なる点を、あれこれと見つけだす好奇心旺盛なこぶたに対し、夜明けの名前を持つ娘は以前と同じく淡々と応じる。
 調整槽に横たわるDAWNはやはり上半身のみの姿で、下肢があるべき場所は金属の蔦や部品で占められている。無数の計器に繋がれ、相変わらず身動きの自由とは縁が遠い。けれど情熱と夢に突き動かされる多くの人々が腕を揮う中で、目に見える形でも目に分かりにくい形でも、娘は日々成長していた。
 特に顕著なのは、前腕とその更に先の部分だった。かつては鋼の骨格や、配線という名の神経が剥き出しになっていた箇所も、今は柔らかな皮膚に包まれている。妙齢の女性と比べても全く遜色のない、健康的な、けれどやはりほっそりとした腕と指をDAWNは自身のものとしていた。
 更に、その繊細な部分が示してみせる挙動ときたら、初めてぶーちゃんIIが娘と出会った夜のことを思えば格段に自然なものだった。こぶたがどこか昂揚気味に左右へ揺れ動くのも、無理はない。
 とはいえDAWNには、むやみと性能をひけらかす指示など設定されていない。こぶたの前で見せた色んな動作も、単なる確認作業に過ぎなかった。ハードを細かな要求のもと制御しながら、ソフトは本来の役割である会話をこなし、ぶーちゃんIIに接しつつ多面的な進行を実現させる。誰かが意図したわけではない稼動実験を続ける娘へ、ぶーちゃんIIは更なる追求を繰り出す。
「顔つきも、違う?」
「いいえ。躯体頭部の換装は行われていません」
 じりじりと相手を見据え、名探偵こぶたの眼力がはじきだした答えを、機械の娘は右腕を元の位置へ戻しながら眉一つ動かさず切り捨てた。


 これぞ、と思い指摘した点を見事なまでにばっさりと否定され、ぶーちゃんは円い体が楕円になるほど力をこめて、その場へうずくまる。別に失望のあまりくずおれたわけではなく、力をこめて真剣に、深く考えこんでいるためらしい。人間でいうところの眉間に皺を寄せる、や肩に力をこめる、に近い反応のようだった。
 眉も肩も見当たらない球形の彼は、むむう、と難しげな声を漏らしてから、軽く体を左右に揺らした。かぶりを振ったらしい。
「いけないなあ、きみといると、つい質問攻めにしてしまう」
 その呟きのどこに彼を悩ませる問題があるのか、またその問題を見出すことができずとも、どのように会話を進めれば本人――こぶたではあるけれども――が自ら明かしてくれるのか。他愛のない発言からも多くの情報を収集し、蓄積し、過去の例と照らしあわせる流れを、娘はほんの一瞬で行う。
 そうして、最も適切と考えられる言葉を選びとる。
「興味が、おありなのですね」
「うん! あ、勿論、少しは調べてきたんだよ?」
 DAWNの計算通り、話を促されてぶーちゃんIIは力強く答えてみせると、更に勢いづいて話そうとする。どこかはしゃいださまで調整槽の縁から、うきうきと身を乗り出す。
「例えば、きみが男性型ではない理由だとか」
「ヒトを模して製造されたロボットは男性型がアンドロイド、女性型がガイノイドと呼称されます。昨今は特に区別もなく、双方アンドロイドとされることが一般的になっていますが、わたしはあくまでガイノイドとして設計当初から統一されています」
「女性型であることに、意味があるからだね」
「はい」
 自身の設計思想や、プロジェクトの基本理念について語ることは、慣れている。加えてこぶたはついさっき、予習の実行を口にしていた。そこから娘の有する卓抜な頭脳がはじきだし、構築すべきと判断した言葉は、相手が一般向け広報誌などから得たであろうDAWNに関する情報の補強と補完だった。
「わたしの開発に関るチームはおおまかに、科学班と工学班の二つに分類されます。どちらが欠けても成りたたず、車の両輪に例えられます」
「うん。科学班はきみが稼動する過程で得る様々なデータから、分析して、裏づけを取って、世界の謎を解明したくて。工学班はそんな科学班の要望から、設計して、製作して、時には新たな技術を生みだしたりしているんだよね。願いがなければ作られないし、作られなければ願いは叶わない。確かにどちらも、欠けられないや」
「はい」
 彼曰く”付焼刃”の知識をすらすらと述べるぶーちゃんIIに、DAWNは相手の理解している深度について、素早く再計算を始める。専門家でない人々に興味を持って貰えるよう、分かりやすい言葉で概要を記してある数ページの小冊子を眺めた程度では、なかなか手の届かない範囲までぶーちゃんIIは読みこんでいる。彼がしてきたのは明らかに、”少し”どころの予習ではなかった。
 こぶたが持つ知識量の認識を改めながら、DAWNは用意していた説明の過程を大幅に短縮し、更に微調整まで加えつつ組みたてなおす。専用データベースの情報だけでなく、これまで得た経験を貯めこんだ内部記憶装置にも走査をかける中で、現在の状況について”舌を巻く”や”謙遜”という関連語が、かすめては通りすぎた。
「わたしの躯体が女性型であれば、工学的に制限をかけられることとなり、そこから更なる技術革新を促す狙いがあります」
「制限?」
「はい」
 細い縁からますます身を乗り出し、熱心に耳を傾けるこぶたは、悪い足場にも拘らず調整槽の内側に落ちることは奇跡的に避けている。それが偶然の賜物なのか、深遠な計算によるものなのか、DAWNは優先順位の低い考察を切り捨てた。
「わたしの体格は成人女性における、平均的な数値に基づいています。そして女性は一般的に男性よりも筋肉量が少なく、小柄です」
「うん」
「体が小さく、細い、ということは、積載容量が少ないことを意味します」
「ああ、そうか! 腕が細ければ、そこを通れる配線の本数も減ってしまうし容量に限界がある、体格に合わせて機材の小型化が求められるんだ!」
「はい。具体的に例を挙げますと、間接部の駆動を司るモーターは小型化・軽量化が特に試みられました」
「成る程ー!」
 介護されるひとが女性の担当者を希望するような、会話相手に求める心理的要因は何となく察せたけれど! と付け足して、ちっとも気づかないでいた工学的な理由に、ぶーちゃんIIは感心するばかりだった。
 娘が計算し、検索し、精査し、そうして提示した情報を得て、こぶたは声をあげてきゃっきゃとはしゃぐ。楽しくて仕方がないのか、溢れる喜びを動きにこめて、細い足場を器用に転がっては勢いよく往復する。自身の手渡したものを笑顔で受け止められて、そのさまを横たわったまま眺めるDAWNは、己の内側に流れる0と1の羅列が少し、速度を緩めたのを記録した。
「わたしを構成する全てに理由があります」
 淡々と、DAWNは話を集約しようとする。人類の進歩と調和のため、科学技術の発展に対する理解を一般に広めるのも、娘に課せられた役割の一つだった。聞き手に分かりやすく、総評をまとめる能力にも、対人会話特化型ガイノイドは磨きをかける必要がある。
 美しい帰結を導きだした娘へ、ぶーちゃんIIは小首を傾げて問いかけた。
「じゃあ、きみの名前も?」
 暁子の中の0と1が、明確に滞った。

 このこぶたは、いつも、最高難度の設問を軽やかに投げてくる。
 そのたびに夜明けの名を冠する娘は、計算が乱れ、頭脳には異様なまでの過負荷を抱えた。けれど暁子とて、いつまでも翻弄されるばかりではない。稼働時間が長くなるほど手に取れる情報の範囲は広げられ、かつ経験の集積も一層進むことにより、娘は多くの難問を迎え撃てるだけの実力を蓄えている。
 ぶーちゃんIIの指す”名前”が、己の正式名称についてであれば、思考に何の渋滞も発生しない。娘の名前はそのまま、開発プロジェクトの理念なのだから。しかし以前に交わした会話から、彼が言外に示しているのが、非公式に自身の名乗った”暁子”であることは即座に読み取れた。だからその名前についての理由を、用意すれば良いだけの話だった。
 検索に分析、情報の取捨選択。相応しい会話を成立させるための行動を、娘は的確に取ってゆく。これまでも定められたプログラムの中で繰り返し続けた、慣れきった流れだった。
 情報の内海である、専用データベースを瞬きの間もなく泳ぎきってしまうと、荒波うねる外部ネットワークという外海へすぐさま両手を広げ飛びこむ。今の暁子は、外部へ接続するのに足枷をはめられることなく、思うままに振舞うのを許されていた。
 自由な両足で溢れる情報の中から無用なものを蹴り飛ばしては、叡智の海に身を躍らせる。遠浅から深海まで、また離岸流をも乗りこなして、探し、巡り、求め。そうして、はじきだされたのは。
「さ……あ、どうでしょう」
 どこかためらいがちな答えを自分で放ってから、暁子は後へ続ける言葉を失った。
 ”暁子”という名は、娘が最初にこぶたと出会った時に叡智の海をがむしゃらに奔走した果て、水底に沈んでいる宝箱から偶然に見つけたものだった。つまり”暁子”は、その蓋を開けて取り出したに過ぎず、宝箱が誰かの持ち物であったかどうかすら分からない。
 更に情報を辿ろうとするのなら、残された宝箱から何かを読み取るという手段もあった。けれど中身を失った箱はただの器で手がかりはなく、仮にあったとしてもそれは、泡となってぷかりと浮かんでいってしまったようだった。水底だけでなく、いつかは空にも到らなければならないのか、と娘は咄嗟にトビウオの姿を検索した。
 こぶたの求める答えを、見つけ出すことはできなかった。けれど、分からないものならば、そのまま「分かりません」と答えれば終わるはずだった。娘の成長度合いを越え、頭脳へ過剰な負担をかけてしまう問題が投げかけられた際は、自己防衛のため分からないと回避する道が用意されている。なのに暁子は言葉へ含みを持たせ、答えをぼやかした。
 娘がこんな表現を用いたのは、初めてのことだった。暁子自身にも、なぜこのような言葉を選択したのか、原因を即座に突き止め処理することができない。カメラアイが焦点を求めて、細かな調整を繰り返しては微細な稼動音を響かせる。
 かつてのように、黄色いこぶたがレンズの真ん中に映る。
「どう、なのでしょう」
 答えることに秀でた娘が、ぎくしゃくと下手くそに、答えを求めて問いかけた。
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