とまり木 常盤木 ごゆるりと
ひねもすのたのた
お誕生日の後はふたりのお祝い
バレンタインなので、短いお話を一つ、続きに置いておきますね。
イベントがイベントですから、誰の話だかお察し頂けると信じております(笑)
ええ、フェイエリィですよ。フェイエリィなのですよ。
十一年経って言うのも何ですが、どうしてわたしいまだにこのふたりを……?
全くもって飽きる気がしません。
そしてネタが枯れる気配すらありません。
まだまだ、書いていないことが山のようにあります。
不思議だと思います。
けれど同時に、このうえなく幸福なことだとも思います。
今日のお話、書いてから気付きましたが、別にチョコ出ていないのです。
バレンタイン違うやん、とつっこまれてしまいそうです。
まあ…元々、誕生日用に書いてたお話ですしね……。
お誕生日祝い話の、オチの役割でした。
が。内容が内容ですので、独立させて、バレンタインに回しました。
お菓子分の補充は、これ↓で何とかなりませんでしょうか。
十一回目のお誕生日に焼きましたー。ニサン十字に見えるでしょうか?
この写真だと分かりづらいですが、小さく切った苺で足りない模様足してます。
なかなか上手く、砂糖散らせたと思うのですけれど。
ただ問題は、これ、失敗してるんですよね。
……生焼けです。
ああでも。これだけは。これだけは弁解させてください。
今回は不可抗力だったのです。
生地の仕込み、気合い入れてとりかかりました。
蜂蜜とたまごを、温めながら綺麗に混ぜました。
ハンドミキサーも張り切って、ふわふわもったり。
引いたリボンの跡がゆっくり消えるくらいに。
時間は十一時半の少し前。三時には楽々間に合って焼きあがるでしょう。
自信作だったのですよ……?
けれど。
オーブンレンジ予熱。中に入れ。うきうきしながら焼成開始。
ところが開始数分後。家族がこう言ってきました。
『ちょっと早めにお昼ご飯食べたい』
それはつまり。
『レンジ使いたいから中身出せ』
ということで。
わたしに拒否権はありません。
内心泣く泣く焼きかけケーキを取り出して。
家族の用事が済むまで横で待ってて。
中途半端に熱を当てられた生地が、ぶつぶつ潰れてゆくのをただ見ていて。
やっとのこで元のレンジに戻しましたが、嫌な予感ばかりして。
結局。生地は膨らまず、生焼けとなって、おしまいでした……。
――書いてて段々かなしくなってきました。
三時のお茶は惨憺たるもの。
生焼けじゃない部分をこそげとって食べるようなありさまでした。
酷いお菓子を出してしまって、ほんとごめんでした紺堂嬢。
次こそはおいしいの、いっぱい作って、あげますから。
凹む話はこれくらいにしておきましょう。
ではでは続きに、お話一つ。
書いてる本人が我に返ってからはずかしくなった一品です。
何と申しますか、わたしにとっては、えらくはずかしいです。
甘いの苦手な方は、どうか退避なさってください。
ラブラブなのお嫌いな方は、どうかお戻りください。
そしてなにより。
フェイエリィが好きでない方は、進まれませんように。
バレンタインおめでとう。
いつまでもふたりがふたりでありますように。
あまく、素敵に、幸福でありますように。
『1=∞(十一番目のアルファベットへ至った道)』
「どうしようかしら」
「考え事か?エリィ」
「ええ。『うれしいこと』を数えていたの」
「……数えられるのか?」
「流石フェイ、話が早いわ。その通りよ、数えられやしない」
「だろうな」
「指の数なんて、問題外ね。すぐに足りなくなっちゃう」
「足の指は?」
「そんな行儀の悪いことしません」
「それは失礼。じゃあお詫びに、俺の指も貸そうか?」
「いいえ、それも結構よ」
「なら、どうやって数え……」
彼の問いが最後まで発せられ、形を取ることはなかった。強制的に続きは封じられ、もう永遠に出てくることもなさそうだった。何せ、もう答えを貰ってしまったのだから。
しばらく時間が経ってから、ふ、とふたりが離れると、ほんのり頬を水蜜桃に染めたエリィが悪戯っぽく微笑む。
「ほらね。これで、たくさんの『うれしいこと』、ぎゅっとまとめて、一つになったでしょう?」
形を変えて、ぎゅっとして。だからいくら『うれしいこと』が雨あられと降り注いでも、数えることができるのよ、と彼女は紫苑の瞳を嫣然と細める。その前で、フェイはやや紅潮した頬のまま片手を額に押し当てると、重々しく見える溜め息を落とした。
ああ。まるで、かなわない。
そんな声が聞こえた気がして、エリィはごめんなさいの意味も込め、もう一度『うれしいこと』をぎゅっとひとつにまとめてみせた。
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