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とまり木 常盤木 ごゆるりと

ひねもすのたのた

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『轍も螺旋もうわばみの…(2)』



母の日過ぎても拙宅はまだ母の日話更新です。
しかもまだ終わりません。ひゃっはー。


でもわたし思い出しました。
かつての喫茶のことを。
わたし喫茶で、バレンタインに節分の話書いてました。
なのでまだ母の日話書いていても、何の問題もありませんね!
父の日までに終わっていれば全く問題ありませんねわーい!
わーい…。
………
すみません開き直りかけて我に返りました。
でも半分は本当です。つまり半開き直りです。
ええ我ながらだんだんよく分からなくなってきました
つまりは、早く書けということですね。ですね……。

不思議とイドは子供たちと一緒に書くことが多いですね。
喫茶に限った話ですけれど。
なぜだか、子供と絡むと、イドはよく動いてくれるのです。
書いているひとが意図しないくらい、とても。
それが何だか楽しくて、ついつい絡めてしまいます。
ほんと、わたし喫茶で遊びすぎですね。
けれど良い遊び場を…ごっこ遊びの場を作ったと思います。
ありとあらゆるだいすきなものを、まぜこぜにして。
そうして、遊ぶことができるのですから。

でもいーかげん、本編も書きたいものです。
モナドも、サーガも、ゼノも。みんな。
みんなみんな、大好きですよ。


『轍も螺旋もうわばみの…(2)』


「……で? どうした」
 あまり熱心とは言いがたい口調で、おさなごらを二つ並べたスツールに座らせて、イドは問う。態度の割りに、子供らの側には作りたての冷えたレモネードが、即座に置かれていたけれど。
 甘い飲み物にはしゃいだ風もなく、小さいアベルはなおもしゅんみりうなだれている。レモネードのグラスを膝に置き、背の高い椅子にありながら、足をぷらぷらさせて遊ぼうともしない。その様子に、これは重症だとイドは内心で顔をしかめる。
「お花を。買いに行ったんだ」
 イドの心理を読み取ったか、こちらはグラスに口をつけてから、大きいアベルが説明を始める。イドが無言の視線で促すと、少し年かさのおさなごは、相手から目をそらさずに訥々と語りだす。
「お祝い、だから。どうしても―…あかい、あのお花が、要るから」
「ああ。お前らの担当だったな」
「うん」
 立ったまま、キッチンの台へ軽くもたれかかるイドが相槌を打つと、大きいアベルがこくりと頷いた。
 『母の日』。何かを贈ろうとしても、贈りたくても、気持ちを完全に代弁してくれるようなものは、贈れない。あまりにも、こめるものが多すぎて。ありったけすぎて。だから喫茶に集う『ふたりたち』は、きちんとした形あるものでなく、『共に食事』という行為をそのまま贈ることにしていた。厳密に言えば『贈りあう』ことに。
 けれど、唯一形を伴って贈ることを許されているものがある。それが大きいアベルの言う、『あのお花』。仕事中で出かけることができない大人組に代わり、子供組が手配するように定められていたもの。言わずとしれた、カーネーション。
 そのことを今更のようにイドが思い出していると、突然、傍らからはじけるように声が上がった。
「かえなかったんだっ!!」
 悲鳴のように響く声の根源を、珍しく慌てた様子で大きいアベルが塞ぐ。表のホールに聞こえてしまうのでは、と危惧しての行動だったらしい。けれど、発言の張本人、小さいアベルは押さえつけられながらも、むぐむぐと押し殺した声でなおも続けた。イドへ向かい、今にも椅子から転げ落ちそうに、身を乗り出して。
「お花っ…もう、なくって。お店に行っても、ちっとも残ってなくって。いつものお花屋さんの、ピンクのリボンしたお姉さんもさがしてくれたけど、やっぱり、やっぱりなかった……!」
 声が徐々にかすれてくるにつれ、おさなごの顔が歪んでくる。瞬き一つもすれば、すぐさま決壊してしまいそうに、なみなみとしてきた眼を、飲みこむようにこらえている。しかし、そんな悲痛な子供の表情にも、イドは全く動じた様子がなかった。幼い二人がキッチンに入ってきた時から、様子をきちんと観察していれば、すぐさま分かることだった。腕組みをし、冷ややかにさえ見える金色の瞳で、さらりと問う。
「花がなけりゃ、描けばいい。得意だろ」
「だめっ!」
 目的の花が手に入らず悲嘆に暮れるより、早々に別の手段を取れば良い。実際、おさない子らには可能性を形にできる、掌があるのだから。そのことを思いながら、イドは至極真っ当に意見したつもりだったが、小さいアベルは激しい拒否を示した。イドの眉が、ぴくりと動いた。駄々っ子へ理詰めで迫るように、低く訊ねる。
「どうして」
「びんに、させないもの」
「びん?」
 すぐに意味が分からず、おうむ返しにするイドへ、小さいアベルは弱々しく頷いた。そして、のろのろと顔を上げると、子供に可能な限り悲壮な面持ちで、イドを見上げる。
「エレハイム…たのしみにしてた。朝から、ね、鼻歌なんてしながら、花瓶選んでたんだよ。どれにいれようかな、どれがいいかなって……」
「隣で、今日はエレハイムのお手伝いしてるネピリムと一緒に、歌ってた」
 小さいアベルの説明に、大きいアベルも加わると、二人は最初から打ち合わせていたようにして交互に続けた。それこそ、歌うようだった。
「おえかきも、考えたんだ。でも、そんな、エレハイムを見たから」
「きっとエリィたちは、お花の絵でも喜んでくれるよ。けれど」
「それじゃあ、させない。せっかく選んだ花瓶に、お花が入らないんだ」
「ずっと、ずっと、からっぽのまま――」
「そんなのいやだ。だから……!」
 感極まったのか、小さいアベルの目にまた、ぷわ、と大きな粒が盛り上がる。とっくにそこは、限界を迎えているだろうに、まだ溜めこみ続ける。ただ、そこに満ちているのは涙だけでないことを、イドには簡単に読み取れた。
 子供らの表情、言葉、そして眼差しから。得た情報を並べてゆけば、すぐに一つの答えが導き出される。呆気なく姿を現した答え、むしろ、子供らが望んでいることを理解すると、今度こそイドは本日最重量の息を、清潔なタイルの床へ落とした。
「―…お前らの、言いたいことは、分かった」
 一言一言を噛んで含めるように、ゆったりと告げるイドの声で、幼い子らの表情へ、さっと緊張が駆け抜ける。イドの返答次第で、子供たちの願いは絶たれるか否かという瀬戸際にあるのだから。しかしそんな反応を理解した上で、小さな苦笑を伴った返事は、間を置かず続けられた。
「なら。手伝えよ」
 そう言った途端、目を輝かせる、という言葉の意味を、イドは実地で知ったと思った。背の高い彼が見下ろした、スツールに座る子供の顔が、まさしくそのものだった。むしろ目どころではなく、顔中が照り輝くように表情を一変させた子供のさまに、彼はまなじりを僅かに強張らせる。目元を緩めようとして失敗したような、眩しさに目を眇めたような。どちらにせよ、ぎこちない、不慣れさが滲み出た動作だった。
 そんなさまを自覚しているのか、イドは心して表情を奥へ引っ込めようとし、わざとらしくならないよう細心の注意を払いながら顔を子供らから背けた。
 こちらの動作は自然であったらしく、幼い二人は何も気づかず、素直に元気な返事の声を上げた。
「うんっ! いっぱい、お手伝いするよ!!」
「イド、ありがとう」
「――でもな」
 咲き零れるように破顔する小さいアベルの隣で、実はずっと思い悩んでいたのだろう、大きいアベルが、声へ明らかに安堵したものを含ませる。悲愴な子供らが一転して、きらきらしいほどに喜びはしゃぐ。お互いに顔を見合わせて笑み交わすおさなごらを前にして、イドはおもむろに、ひょいと軽く腰を屈めた。なんだろうと顔を上げてくる子供らに、目線の高さを合わせてやりながら、緩く握っていた右手を上向けて、人差し指をちょいちょいと動かす。そんな仕草で無言のまま、子供らを招く。思わず誘われるままに、椅子から僅かに腰を浮かして身を乗り出す二人のアベルに向かい、ひそり、と世界の秘密を明かすように、イドは小さな声で囁いた。
「あと、他にも手があるってことを、教えてやる」
 きょん、と大きく見開かれた、二対の黒曜石の瞳。そこへ映る青年は、その場へ居合わせた誰よりも、悪戯小僧の笑みを浮かべていた。
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