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とまり木 常盤木 ごゆるりと

ひねもすのたのた

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けれどもやはり万能の妙薬第一位の座はホットレモンのもの


ホットミルクによる口内炎掃討戦展開中。
いやほんとてきめんに効くのですが何なのこの新手のエクスポーション。


仮にポーションだとしても、どっかのトリイさん製ではあるまいと。
でしであ版はだいぶ味マシになってましたが、初期ときたらもう。
漢方とハーブが夢の邂逅を経て奇跡のようにおいしくなくなった一品でした。
ああ、瓶は綺麗でした。瓶は、瓶は……。
しかしこのホットミルク大作戦にも、問題が一つ。
早く治したくて機会があるたび飲みまくっておりましたら。
いっぺんに胃へもたれるようになって、うおおおとなっておりました。
……何事も程度ものですね。
普段、お茶ばっか飲んでるわたしには、過度の牛乳が重すぎるようです。
しばらくはホットミルクとの駆け引きを演じつつ、口内炎と戦う所存です。
まあ腰も口内炎も、既にかなり良くなっているのですけれどね。
うう、ほぼ普通に歯磨きのできることが、こんなに嬉しいなんて。
あとごはんがおいしいです大変おいしいです今夜のおいもごはんなんて絶品。

こんないやしんぼ完全復活を目論みながら、久し振りに習作百話です。
何かもう名前ネタに困り果てているので、縛りを解禁しました。
暖色であろうと色名入ってるならいいや!と開き直りました。
そのうち、しれっと使っていそうですが、見逃してやってください。
そして、今回の子も、名前の読みがまたやや特殊。
本来の熟語とは読みが違うことになってしまいました。
よろしければ、茶菓と同じ読みで、見てやってください。
ほんと人名考えるのって難しいですね!


『攻防しつけ糸(百夜白夜)』

 明かりもつけないままの部屋で、どう、と前のめりにベッドへ身を投げる。即座に、スプリングが反動で中空へ押し返すも、抵抗は一瞬。茶花の細い体を寝床は軋むこともなく受け止め、すぐさま少女を包みこむ。
(眠い)
 今にも緞帳じみて下ろされそうな瞼に、疲れ果てた茶花は逆らおうともしない。視界が閉ざされると同時に意識も手放してしまいそうだったが、茶花の中で「掛布団もなしで眠っては体を壊す」という良識的な声がかろうじて踏みとどまらせ、もう感覚すら失いかけている両腕に力をこめさせる。むりやり上半身を僅かに浮かせると、布団の表を這うようにしていた指先が端を捉え、敷布団と掛布団の隙間へ残る体を引きずりこんだ。
(重い)
 うつぶせになっている体の大半が温もりにくるまれ、茶花は今度こそ、意識を放り出そうとした。暗い視界と柔らかな布団が相俟って、少女は自身の体が深い泥沼へずぶずぶと沈んでゆくようだと思った。それは大層、心地よい罠だった。けれど罠は、彼女の体を飲みこんでなお、茶花を埋めようとはしなかった。
(―…重、すぎて、しずめない)
 忌々しげに、眉をひそめる。じわじわと滲み出るように湧き起る苛立ちが、意識のみを鮮明に導いてゆく。茶花は疲れていた。疲れすぎているほどに、疲れ切っていた。四肢は”鉛のような”という表現がしっくりくる程度に重く、むしろそこのみ重力が過剰にかけられている印象さえあった。茶花自身、手足が沈みこんでいる、と感じていた。しかし、だからこそなのか、思考だけが冴え渡っていた。
 茶花が皮肉っぽく口元を歪める。腹立ちも一周回って、何だかおかしくなったらしい。
(両手足に、重石でもつけられたみたいなのに。くたくたで、休みたくて、たまらないのに。意識は重くなってないから、かえって体から浮いちゃうのか)
 体と中身が分離してしまう。肉だけが重くなり、心のほうはふらふらと、迷い出るように軽い。それこそ、重い体を脱出して、それを俯瞰で眺めているような気にさえなってくる。
(私と私が離れている)
 こんなにちぐはぐだから眠れないのだ、と鮮明すぎる意識の中、茶花は結論づける。
 と。

 ころころ。ころろ。何かが闇夜に、転がってゆく。
(――?)
 暗い部屋で、目を開けようともしない茶花に、何が起こっているのかは分からない。けれど、少女の上で、厳密に言えば少女の上にかかった布団の上で展開している出来事は、薄い掛布団を通して感じることができる。
 転がる。滑る。落ちてゆく。小さな円い存在は、どうやらその限りなく球形に近い体で、茶花の四肢の上を、移動しているようだった。細い手足は道路というより川にかかる丸太橋じみているが、掛布団という土を盛られることで、なだらかな丘陵地帯になっているらしい。その上を、円い誰かさんは、転がってゆく。たまにうっかり、転がり落ちながら。
 指先から肩口。肩口から指先。今度は爪先から膝裏。膝裏から爪先。たまに背骨を伝わって、今度は首筋、と見せかけてやはり腕。四肢を中心にしながら、全身を縦横無尽に転がられる。それを不思議に思いながらも、なぜか不快感はなかった。見知らぬ相手ではあるけれど、虫が這うわけではないし、また時折。
「うんしょ、うんしょ」
 と、控えめな声が漏れ聞こえていた。その柔らかな音吐が布団越しに伝わる感触とよく合っていて、また更に時折、誤って滑り落ちたのか「きゃー」という、まるで危機感のない悲鳴さえ聞こえてくるものだから。ついつい口元はおかしげに緩んでしまう。
 誰かさんが転がることで、茶花の四肢の重さ、だるさが消えることはない。魔法ではないのだから、当たり前だと茶花は思う。けれど、その誰かさんが茶花を気遣い、思いやり、少しでも楽になるようにと願いをこめて行動してくれているのは何となく分かった。
(離れそうな私と私を、張り合わせてくれているの?)
 訊ねたくて。話してみたくて。少女は口を開こうとするが、そうする前に、茶花と茶花は、”張り合わされた”ようだった。これまで重力から突き放されていた意識がふいに抱きとめられ、体諸共に、深く暗く快い眠りの沼へと沈みこんでゆく。それでも、この眠りに寄り添おうとする丸々としたものを、やはり知っている気がして。思い出そうと、名を呼ぼうとするも、唇も舌も喉も甘く痺れたようで、声らしきものは一息も発せられない。
 無理にこじあけられた片目の、糸のように細い視界に、黄色いふわふわとした影が見えたような。
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