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とまり木 常盤木 ごゆるりと

ひねもすのたのた

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あんなに讃えたくなるいもけんぴは初めてです


習作百話を懲りもせずに書いてましたらオチを忘れてウボァー。
ま、まあまた寝る前にでも思い出すでしょう……。


ちゃんとメモとってないからこうなるのです。
いつまでも覚えていられるなんて、酷い驕りです。
記憶力はずんずん悪くなるものなのですから!
しかし、人名ストックがもう尽きそうです。
もえぎさんあなたまだ一割も済んでないのですよ?
一応、『夜っぽい色を含む名前』縛りだったのですけれど。
流石に寒色と白黒のみだと、ネタもすぐ底を見せて。
こうなったら、暖色は無理としても、中間色は許可で。
暗みの強そうな色なら、ごめんしてやってください。
因みにどうしてこんなややこしい名前縛りしてるかと申しますと。
わたし自身、壊滅的にネーミングセンスがないからです。
ので。百人分も考えたら、少しはマシになるかなあ、と。
ええ凄く思慮の浅い理由ですね。

あと、名前といえば。
色で縛ると、どうしてもいきおい、おんなのこの名前にお花が多用されて。
花の名前と色の名前は、切り離せないものですもんね……。
できれば『色一文字+別の一文字』という、二文字で構成したいのですが。
お花となると、それだけで二文字になってしまいます。
うう。これもひとえに、ひとえにわたしの語彙力のなさが。

秋だからでしょうか。
またも続きに、置いてます。どうもついつい、書いてしまうのです。
秋だからですかね。
お話が書きたいし、本が読みたいし、あとおやつがくるおしくたべたいです。
いもけんぴおいしい。でも、あなたはもういないのね。
嗚呼、いもけんぴ。わたしのいもけんぴ。
仕方がないのでおまんじゅうです。薯蕷まんじゅうおいしい。


あと。物凄く、おこがましいことなのですが。
くにとりものがたり読んでるせいで、文章の出だしが。
しばせんせいに、引っ張られかけました。
……ごめんなさいごめんなさいあほなこと言いました!


『筆硯の戦い(百夜白夜)』


 その部屋は明るい。
 室内に人の姿はある。やや猫背気味の背中がある。時折、てきぱきとページを繰る音や、かしゅかしゅと細い黒鉛の先端が何かを書きつける音も聞こえる。それでもやはり、時間は真夜中だった。厚いカーテンに閉ざされて見えないものの、窓の外には練り上げられたような闇が確実に横たわっていた。にも拘わらず、墨人は背後に位置する寝床を振り返りもせず、ひたすら机に向かい続けていた。
 黙々と、夜へ同化するように目と指と頭脳だけを働かせていた墨人が、ふと眉根を寄せる。口が曲がったのは、奥歯を少し噛み締めたためらしい。それと同時に、シャープペンを操っていた手も止まった。
 墨人は呼気のような短い溜め息を一つ、は、と落として頭を巡らせた。
「僕は眠れないんじゃないよ」
 大きく開くと痛むのか、細めた両眼で見やった先には、今にも机から転がり落ちそうな、真ん丸極まりない黄色いこぶたのぬいぐるみが佇んでいる。黒いビーズが縫いつけられただけの瞳で、じっと墨人を見つめている。
「うん」
 幼い頃から何度も聞いてきた返答に、墨人は僅かに眉をひそめる。そして、思わずまた落としかけた溜め息をぐっと堪えて呑みこむと、上半身をゆっくり動かして、正面から円い友と向き合った。
「眠れないんじゃない。眠らないんだ」
「うん」
「僕の意志で決めている」
「うん」
「眠るわけにはいかない……まだ、自信のない箇所を潰しきっていないんだ」
「うん」
 ちらと視線を動かして、机の上に積まれた様々な教科書を示してみせる。教科書だけでなく、資料集や参考書が含まれているとはいえ、一、二教科ではすまない。その上、やるべきことやらなければならないことが、墨人の鞄の中には、たんと詰めこまれていた。
 これら全てを片付けてしまうまで、寝るわけにはいかない。幼い相手へ言い聞かせるように、墨人はぶーちゃんIIへ丁寧に話しかける。けれど返ってくるのは、分かっているのかいないのか判然としない相槌でしかなかった。苛立ちを押し隠しきれないのか、墨人の顔がしかめられる。
「なあ。ぶーちゃんII、分かってくれよ。そこで延々見られてると――監視されてると、落ち着かないんだ。僕は勉強に専念しなくちゃならない」
「うん」
「そもそもぶーちゃんIIは、眠れない子供のもとへ現れるんだろう? なら、僕は該当しないはずだ。最初に言ったように、僕は自らの意志で眠らないことを選んでいるんだから」
「そうかな」
「そうだよ」
 やっと少しばかり変化してくれた返事に、墨人はちょっと唇を尖らせ気味に応えた。昔に比べて多少は図体が大きくなったとはいえ、その不貞腐れたような仕草は、まだまだ子供っぽさを色濃く残していた。ぶーちゃんIIがそっと目を細める。
「ふぅん」

「ナポレオンは一日に三時間しか眠らなかったんだ。天才でさえ、そうなんだよ。なら、僕みたいな凡人は、もっともっと頑張って、血反吐を吐くくらい努力して、やっと追いつけるかどうか」
 墨人の答えに疑惑を持っているらしい相手に理解させるべく、懸命に説明を試みる。舌を動かす間、今夜想定している、為すべき予習復習の山を頭の中で思い描くと、何故だがこめかみが痛むような気がした。
「ふん」
「僕より、頭が良い奴は、いくらでもいる」
「うん」
「だから僕はもっと、学んで、知って、詰めこまなければならない」
「うん」
「時間が足りないんだ」
「うん」
「僕は――」
 声が詰まることに、墨人は自分でも少し驚いた。しかし、後の言葉は、のろのろと勝手に零れ落ちてくれた。
「僕は、こわい。夜が来るのを恐れ、朝が来るのに怯えている」
 どうしてこんなことを口にしているのか、自分でもよく分からない。けれど、実際に言葉という形にすることで、目の前にその恐怖が確かな存在感をもって現れだしていた。知らず、寒くもないのに自分で自分を抱き締めるような体勢をとる。ぶーちゃんIIはビーズの目を瞬きもしない。
「――そう」
「眠れば、その間に追い抜かされる。追いつくためにはまた余分に時間がかかる。その無駄を省くためにも、僕は眠らない。眠るなんて、ただ恐ろしいだけだ」
「そう」
 墨人の言葉を、全ては肯定していなさそうな相槌にも、少年は気づいていないらしかった。ぎこちなく笑みを浮かべると、この夜初めて、ふかふかした友人へ親しげな視線を向けた。胸の前で交差し、二の腕を掴む手へ更に力がこめられる。
「僕が望む夜は、眠れる夜じゃなく、明けない夜だ。ずっとずっと夜のままなら、いくらでも机に向かうことができる」
「うん」
「もし、どうしても眠らなきゃいけないのなら、もう二度と目覚めないほうがいい」
「それにはまだ早いよ」
「だね」
 ぶーちゃんIIの指摘に、墨人はさも面白げに吹きだしてみせるが、面に浮かんでいるのは今にも泣きだしそうな笑顔だった。問答の最初とは打って変わって、人が違ったように明るい声を、どこか芝居がかって絞り出す。
「さあ。これで分かったろ。ぶーちゃんIIは眠れぬ子供の友人だ。僕だって小さい頃は、うんとお世話になった。でも今は状況が違う。僕は自分の意志で、眠らないことを決めた。もし仮に、これが僕の本当の意志でなく、どっちゃり積まれてる勉強の山に強制されているからだとしても、ぶーちゃんIIには、どうすることもできないだろう?」
 相手を糾弾するわけでなく、揺るがしにできない事実を突きつけることで、ご退散を願う。しかし墨人自身、最初に考えていたほど、ぶーちゃんIIの視線を不快には感じなくなっていた。それでも、初志は貫徹すべき、と妙なところで真面目だった。
 投げかけられた問いかけに、円い彼は、僅かに体を揺らすようにして、頷いた。
「そうだね。僕じゃあ、あの勉強の山を、やっつけることはできない」
「だろう?」
 ぶーちゃんIIが己の無力を認めたと思った。さしものこぶたも太刀打ちできず、元から短い手足が更に出ない事態を前に、退却するのだと墨人は判断した。瞬き一つの合間に、消え去るものと。かつて心から頼りにした存在の敗北に、後ろ暗い喜びと吐き気がしそうな悲しみを同時におぼえる。
 ぶーちゃんIIは、くっと体をチロルチョコ一つぶんほどそらし、墨人を見据える。
「でも僕は、ここにいるよ」
 不格好な笑みに歪められていた顔が、表情を拭い去られたように、さっと純粋な驚きに変わる。咄嗟に目を見張った墨人から、ぶーちゃんIIは視線を外そうとしない。
「夜は眠らないもの。君がそう決めた。でも、本当にそう決めたのなら、なぜ、夜が来るのを恐れたのかな」
 問い返されて、そういえばどうしてなのだろう、と墨人は言葉もなく考えこんだ。我が発言ながら、改めて考えると不思議なものだった。ただ無意識に溢れた表現でしかなく、その成り立ちにまで理性が及ばない。あれこれと思いを巡らせていると、彼の思考を代弁するように、すらすらとぶーちゃんIIが語りだす。
「成る程、朝が来るのに怯えるのは道理だ。君が望むのは、明けない夜。夜が続けば続くほど、机に向かう時間は長くなり、いくらでも貴重な時間を勉強へ捧げることができる。なら、君は夜を喜ぶはずだ。勉強に耽ることのできる刻限が迫ってくる。喜ばしい到来であるはずなのに、君は朝と同様に、夜さえも恐怖の対象にした」
(夜も、朝も、恐ろしいものならば、それは時間の経過そのものを恐ろしく感じている?)
「かもしれない。でも、知っているのは君だけだ。僕がおぼろげに思うのは、眠らずの夜を選んだ君が夜を恐れるのは、”眠れない夜を恐れているから”なのかな、って、ことだよ」
(自分で自分を怖がらせている)
 おばけ屋敷のおばけが、鏡に映った自分の姿へ、きゃあと悲鳴を上げるさまを想像して、墨人はへにゃりと笑った。

 声を途切れさせた墨人の前で、ぶーちゃんIIはゆさゆさと球形の体を左右へ揺らす。方向転換を試みているらしい。相手が何をしているのかが分からず、きょとんとしている墨人へ向けて、ぶーちゃんIIは声の調子も左右へ揺らしながら、しずしずと回り始める。
「だからっ、僕はっ、君のっ、ところ、にっ、きたんだっ。君がっ、僕のっ、視線がっ、嫌ならっ、背中っ、向けてるっ、ねっ」
 平坦な机の上で、いつもの転がる移動法を採用すれば、あっという間に床へと転がり落ちてしまうのが目に見えている。そのためぶーちゃんIIは今回、別の方法で体勢を変えようとしているらしい。えっほえっほと盛んに掛け声を出し、どこかの小人たちの歌と同じような節をつけて地道に僅かずつ自転を続けるさまに、墨人は顔をくしゃくしゃにした。眠れぬ夜に、恐怖と子供の間へするりと割って入り、その柔らかな体をもって緩衝材となす。ぶーちゃんIIは、昔と何一つ変わらず、そんな存在だった。
 墨人はたまらず組んでいた腕をほどくと、よちよち歩きよりまだ危い動きのぶーちゃんIIを、両手でそっと包んだ。そのまま、目の前まで親しい友を導くと、顔を合わせる。
「嫌じゃないよ」
 恐れながらも、やはり、眠ることを選ばない。墨人の決意は固い。その恐れさえ乗り越えようとする。でも。
「昔みたいに、眠れない僕の近くにいてくれたら、とても嬉しい」
 告げた声は、まだ少したどたどしくはあったけれど、むやみと依怙地に凝り固まったものはなかった。ぶーちゃんIIは目を細め、小さく「うん」と答えた。

 夜はまだ明けない。
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