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とまり木 常盤木 ごゆるりと

ひねもすのたのた

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おかえりなさい


お還りなさい。おかえりなさい。
わたしの、みんなの、愛しい翼。

あの子が還って、もう、一年。


『愛された子供』

 ふとした瞬間、何気なく空をおもう人がいる。

 端末を片手に、遠い誰かと他愛のない会話をしながら、ちらりと頭上に向けた目を細める人。目的地を手早く入力すると、即座に答えを示してくる画面の縁を、慈しむように軽く指で叩いてやる人。
(くすくす)
 宇宙から聞こえてくる賑やかなお喋りへ、笑みを浮かべながら耳を澄ます人。仕事や学業に追われながらも、ちらちらと落ち着きなく時計を盗み見、後でニュースを確認しては『無事』の二文字に胸を撫で下ろす人。
(ふふふ)
 突如、途絶えた声に青くなり、咄嗟に悲鳴を押し殺す人。どうかもう一度お話を聞かせて、応えてみせて、と祈りのように願う人。我が子へ必死に呼びかける、数多くの父や母たちの眠れない夜を思い、我がことのように胸を痛める人。
 その人々は、ごくありふれた日常の中で、いつも何かが繋がっていることを、知っている。遥かな空から降り注ぐ、目に見えない流星群が長い尾を引くように、碧落を埋め尽くすほど縁の糸が張り巡らされているのを瞳へはっきりと映している。触れられずとも確かにある、無数の紐帯は常に傍らへ。
 そして、傍らを通り過ぎるほのかな大気の揺らぎさえ、たっぷりと糸をまとった錘だとも、知っている。
(僕の)
 とある微かな粒子を含んだ大気は、地上のあらゆる場所を吹き渡り、時に低く、時に高く、見上げ、見下ろし、睥睨し。かつて彼が繋ぎ、今もまだ繋がっているあらゆる縁を撫でて回る。彼は多くのものを繋げたけれど、それはまた同時に、彼自身もそれら全てと繋がることができた、ということでもあった。
 音もなく、風は鳴る。溜め息より微かで、すさびになど遠く及ばないそれでも、やはり、気づく人はいる。だから彼は、にこりと囁く。
(僕のたまごは、孵りましたか?)


 ――とおく、小さな、鼓動が聞こえる。
 

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