とまり木 常盤木 ごゆるりと
ひねもすのたのた
やっちまった…とうとうこのひと、やっちまった……
友人がインテに出かけるというので、PSPを託しました。
ええ、でしであのすれ違い通信目当てです。そして彼女からメールがきました。
五十人以上はすれ違いすぎだと思うのですけれどね。
恐るべしでしであ。むしろ皆やりすぎですでしであ。
や。プレイ時間が百九十時間越えてる人が言っても説得力ないですが。
半日ちょいで五十人以上とは……想定外にもほどがあります。
良いすれ違いができてれば嬉しいのですが。
レアアイテム持ってて。レアアクセサリ持ってて。
レベル低くて。いやレベルが高くても、ランクが低ければ構いません。
そしてできれば装備アビリティの数が凄く少なければ完璧です。
だって強い相手と戦っても、アイテム欲しくても、勝てやしないんですから。
ヘタレはへタレなりに頑張っても限界があります。
ですので、弱い方歓迎してます。イエー。
因みにうちのすれ違い設定ティナもレベルは100ですがランクはA。
攻撃アビリティは少なめで、補助系アビリティも削りまくってます。
ただ装備品とアクセサリは良いものを。
すれ違われた方、じゃんじゃん剥いでやってください。
驚いたこと。
今日の大河が、割とおもしろかったこと。
まあ、掛け値なしに楽しめたわけではないのですけれど……。
これまでに比べると、『まし』でした。
ちっとも感想、書かないでいましたしね。
……書くほどの内容が無…げほんごほん。
多分、OP見てテンションが上がった所為もありましょう。
やっとこさ御館入りましたし、そろそろかなあとそわそわしてたのですが。
もうちょい先だと思っていました。
菊さまが…菊姫さまのお名前が出ましたよ……!
お名前見た瞬間、思わず『っしゃあ!!』とガッツポーズでした。
お待ちしておりました、姫さま。それはもう。長いこと。長いこと。
まあ本編で見た感じ、ちょっとお船さまとかぶりそうで心配なのですが。
これはあれですか。ツンデレですか。ご結婚されたらデレに入るのですか。
わたしいまだにツンデレの定義よく分かってないのですがこんな感じですか。
素敵なご夫婦なら良いのです。貶められることがなければ。
殿と仲良く、幸福でいてくだされば。
それだけでこの数年、上杉夫婦を好きでいたわたしはしあわせです。
勢いあまって、菊姫さま記念に。
――小話を。
あ。でも大河小話ではないのです。
大河関係なく、わたしが勝手に妄想していた理想の上杉家です。
上杉夫妻と直江夫妻はこういう関係だと大好きです。
因みに主君夫婦は総ボケで、家宰夫婦は総ツッコミ希望です。
大河が始まる前に書いていて、それはもうノリノリで書いていて。
ふと我に返り、お蔵入りさせていた小話。
菊さま並びに殿、いやもうこのご夫婦好きすぎて、開き直りました。
続きにこっそり、隠しておきます。
ああ、大河。どうか、どうか。菊姫さまを悪く描かないで後生です……!
『かごぞあれ』
場所は越後が春日山城。数年前、乱を制して軍神の衣鉢を受け継ぎ、この地の新たな主となった若き殿を囲み、とある重大な軍議が開かれておりました。秘密の、機密な、実に重要な軍議でございます。その場に居並ぶ面々の豪華な顔ぶれが、それを裏付けておりました。
静かな部屋に、見える姿は、四つ。
「新たな旗でございますか」
主の言葉を、若き家宰が反芻するように口にすると、景勝は無言のまま頷いた。表情には殆ど動きが見られない。しかしそこは、長い年月、共に過ごしてきた家臣として、すぐさまその意を察することができる。直江家の跡を継いだばかりの青年は、秀麗と評判の顔をにっこりさせて、はきはきと言い当ててみせる。
「成る程。景勝様は確かに、新たな越後の主となられた。不識庵様の正統な後継者であることは、内外に対して明白となりました。上杉の旗のもと、多くの将士が景勝様に従いましょう。それだけ、不識庵様の求心力、またその旗の力は絶大でございます。しかし毘の一文字や、懸かり乱れ龍は、上杉の正統を表すものであっても、景勝様ご自身全てを表しはしません。ゆえに、ここで一つ、景勝様の旗を、新たに作られるべきとのお考えなのですね」
「既に用いられている、二種の旗とは異なる、新たな意匠を講じるとなると、なかなかもって難解にございますわ」
立て板に水とばかり、すらすらと澱みない夫の言葉を、少し年かさの妻がひたりと止める。更に口上を続けるつもりだったのか、家宰は若干不服そうな顔をするが、お船はあだっぽい笑みでばっさりそれを封じる。
しかし、まだ祝言を挙げてから日も浅い夫婦の小さな闘争をよそに、こちらもまだまだ妻になりたての、むしろ越後に来たばかりの姫が、小首を傾げる。
「なれど、いかなる意匠が良いのでしょうか?」
ぽろりと素直に零れる菊姫の言葉に、四人だけの軍議が、また集中を取り戻す。どちらかといえば、四人中口を動かしているのは主に二人だけであったけれど、評定はぐんぐんと進んでゆく。
「不識庵様の面影を感じさせながらも、殿の独自性を前面に出して」
「とはいえ、長尾の九曜巴はなりませんことよ」
「そのようなこと、言われずとも!清楚にして流麗、清廉にして泰然自若たる…!」
「ごてごて飾り付けすぎても、景勝様にはそぐいますまい」
「戦場にあっては味方を鼓舞し、敵に畏怖を抱かせる、かような意匠こそが殿には相応しい」
「ですから、具体的に仰いなさいませ」
熱く激論を交わす直江夫妻を前に、菊姫はしばらくその様子を、夫と共に無言で眺めていた。しかしふと、何か思いついたのか、しゅるりと衣擦れの音をさせて膝を動かすと、殿に向かって問うてみた。
「殿は、いかがお考えにございますか」
緩い笑みと共に放たれた問いかけに、火花散る丁々発止を繰り広げていた直江夫妻が、はっと口を止める。その前で、景勝はやはり無言でいると、菊姫が傍らより文箱を寄せると、中からかたん、と筆と紙を取り出した。ゆっくりと丁寧に墨をすってから殿に差し出すと、皆が注目する中、景勝がそっと筆を取った。
そして。
「毘(これ)を」
しゅるりと、端正な文字が記される。
「田(↓)比(こう)して」
文字がひょこり、と下ろされる。
「田比(こう)し」
新たに形を整えて。
「田北(こう)」
ぴしり、と一つの形が生み出された。
そして、場に暫しの無言が満ちてから。
「何と申しますか、その、革新的、かつ前衛的な……」
「確かに、不識庵様を継いだとは、一目で分かりますが……」
先程までの、鋭利な舌鋒はいずこへか。急に夫妻は揃って、微妙な顔でごにょごにょし始める。ところがそこに、別の感想を持つものがいた。
「まあ、素敵!とても景勝様らしゅうございます。真っ直ぐで、裏表がなく、そこはかとなく凛然たる趣が感じられます」
「む」
胸元で手を合わせて、感激した声を上げる妻に、夫もまんざらでもなさそうに応じる。普段、ぴくりとも動く気配の見えない表情が、僅かに緩んで見えるのは、きっと気のせいではない。
そんな夫に、菊姫はなおも、にこにこと笑顔を向ける。
「我が兄も、己の旗には大の一文字を用いております。お揃いにございますね」
「む」
互いの間に介在する言葉は少なくとも、ふんわりとした柔らかい空気を漂わせる主君夫妻に、思わず直江夫妻も和やかな気持ちにさせられてしまう。
「流石は我らが殿、始めからこうも完成された意匠をお持ちでいらしたとは!まったくどこにも手を入れる必要がございません、すぐに手配を致します。城下の指物師へ総動員を」
「手が足りなくば、城内の女も針で助けとなりましょう。――それにしても、菊姫様。見事な機転にございました。甲斐御寮人の手も加わった旗印となれば、家中の結束もいやますこととなりましょう」
「殿以上の主君はございません」
「姫以上の御方様はございませぬ」
たった四人しかいない、この場においてすら、既に結束は強くきつく、いやまし始めていた。さあこれからが本番とばかり、慌しく席を立っては御前を辞し、動き回り始めた家宰夫妻の姿が見えなくなってもまだ、言葉の少ない越後の若きご夫婦は、穏やかな空気の中にいらっしゃったそうな。
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