とまり木 常盤木 ごゆるりと
ひねもすのたのた
かなうものなら、ありったけの花束と花吹雪を
準備が、できているやら、いないやら。
バレンタイントキオなことばかり、考えがちですけれど――
今日だけは、ちょっと離れようかと思います。
どうしてもお祝いしたいことがあるのです。
長年、どうしても、真正面から祝うことができなかった。
そのことへ。ようやく、向き合えそうな気がするので。
大好きだけれど、喜べない。
大好きなのに、祝えない。
そんなどうしようもない感覚から、ほんの少しだけ、解放されて。
今年こそ。
お誕生日おめでとうございます。大地の名を持つ花のひと。
昔からずうっと、あなたがだいすきでした。
昔からずうっと、やり場のない感情に苛まれました。
様々なものがぐちゃぐちゃになりましたけれど。
最終的に一つにまとめてしまえば、『ずうっと、かなしかった』。
悲しくて。かなしくて。祝うことさえできませんでした。
大好きなひとに、しあわせでいてほしいと。
そんな当たり前の願いさえ抱くことができませんでした。
想像すら、禁じられたようなものですから。
なので、もう、触れることさえ諦めていました。
けれど……。
何がどうなるやら、分からないもので。
ようやっと、おそるおそるながら、指を伸ばし始めました。
ふと油断すれば、すぐさまおぞましいものへ呑まれてしまいそうですが。
そのまま手を引っこめるのではなく、近づこうとしています。
とても、ゆっくりではありますけれど。
かつて、あなたはわたしの世界をくるんと百八十度ひっくり返しました。
シーツを新しいものへとっかえるように、鮮やかな手つきで。笑いながら。
ピンクも。リボンも。スカートも。みんなみんな、だいっきらい。
なのに今やごらんのありさま。
それはそれは胸躍る、知らない世界を知るはじまり。
お誕生日おめでとう。うまれてくれて、ありがとう。
素敵な世界へ続く空中階段、その最初の一歩をくれたのはあなたでした。
ぽんと軽い足取りで、飛び石でも渡るように、色んな世界を渡る術。
あの、見えない翼でも踝に生えたような足をくれたのは、あなた。
ありがとう。だいすきです。
どうか、あなたが幸せでありますように。
エアリスさん。