二十一年目に辿り着いた、とびきりの事象

昔話をいたしましょう。
わたしにとって、二十一年目のはじまる、こんな日に。


ゼノギアス発売二十周年アニバーサリー。
わたしだけは、それが、昨日まででした。
拙宅のながいお客さまなら、ご存知やもですけれど……。
わたしがゼノギアスを初プレイしたのは、発売日ではないのです。
約一ヶ月遅れの、中途半端なこんな日。
けれど大切な記念日です。わたしだけの。
なので、毎年毎年、この日に言うている気がしますが。
堂々と胸を張って申しましょう。
愛を貫き、二十一年となりました。


ところで皆さま、お手元にはもう届いていらっしゃいますか。
ええゼノコンBDですよ。神の贈り物ですよ。ゾハルの尽力ですよ。
黄金の光輝がなんやかんやしてくれた影響ですよ。
可能性事象がどうにかこうにかなってくれた賜物ですよ。
光田さんはじめ、発売に関わられた全ての方々に感謝と敬意を。
それも、ありったけ！

ないものだと、思っていましたから。
最初から円盤化はされない、したくないとお望みでいらしたから。
諦めるしかありませんでした。
己の欲望のために、光田さんのご意志を曲げようとしてしまうなら。
そんなものは望んではないと。
けれど、わたしは、おそろしかった。
おそろしくて、おそろしくて、たまらなかった。
あんなにもうつくしいものをみたのに。
頭から爪先まで、肺の奥すら、音に満たされて。
音の一音、光の一粒までおぼえていたいのに。
記憶は薄らいでしまう。時間は遠ざかる。わたしはわすれてしまう。
こんなにも、こんなにも、おぼえていたいのに。
おそろしい！！ と。

その、おそれに衝き動かされて、ペンをとりました。
どうしても耐え難くて。
また、無理だと分かっていても、ただ願うだけではなくて。
だらりと寝そべったまま、希望をだらだら垂れ流すよりも。
かなわないことへ悪口雑言を撒き散らすよりも。
わたしは、きちんと、お伝えしたいと思いました。
何もしないで後悔などしたくはありません。
できるだけのことをして、それでだめなら、諦めもつきます。
なので、お手紙を出しました。
感謝を綴り、おそろしさを告白し、どうかご一考をと祈るように。
ただの一通の手紙です。うすっぺらい紙切れです。
けれどそれが、BD発売へ至る後押しのほんの小さな一欠けになったなら。
これほど嬉しいことはありません。
迷いながらも書いて、悩んで、送って、良かったです。

ふふ。色々、選んだのですよ。
プロキオンさんにお送りするものだから、星が良い、と。
封筒は星座。万年筆のインクは『暁の紅』気分。文香を忍ばせて。
確か切手は、マリオにしたのではないかしら。
ゲームに関することですもの。ミスター・ビデオゲームに願いを。
いやあ、特に意味なく、レターセット集め続けていてよかったです。
あ、そして。
BD発売決定後に、改めてお礼をお手紙で差し上げられたのも嬉しい。
こちらは郵送ではなく、手渡しとなりましたが。
……まさか、ゼノブレ2イーラサントライベント当選するとは。
直接、言葉でも伝えられたことのよろこび。
どれだけ言葉を尽くしたら、万分の一でも伝えられるでしょう。
わたしの胸にあるものすべての。

ありがとうございます。心より。
もう、おそれる必要はなくなりました。
お陰さまで連日ぽろぽろないてないてめがいたいですうれしい。


そして、唐突ですが。
通販をはじめることにいたしました。
ゼノ二十周年祝いの、フェイエリィ中心接触者対存在小説本。
わたしの二十年。
愛はすべて、あなたたちにさしあげました。
ひよはね

農具をふるう指には筆まめ

昔話をいたしましょう。
畑仕事と、その収穫について。


サイトの構築を、建築に例えましたけれど。
できてからの心情は、どちらかといえば畑仕事のが近かったです。
先日、申しました通り、フェイエリィ界隈は主流ではありません。
供給だってそりゃあ、ありましたけれど。
強欲なわたしは、もっともっとほしかった。
だから自分で鍬を振るい、痩せた土地を耕そうとしたのです。

遥か彼方から殷賑極まるジャンルの話など聞こえてきても。
一人で黙々と、己の手で、荒れた地から一つ一つ小石を取り除いて。
硬い土をほぐし、種を撒き、水をやって、肥料も少し。
そうして得た粗末で僅かな収穫で、細々と暮らしてきました。
たまに、よそさまのくださった見事なごちそうに目を輝かせて。
目も眩むようなありがたさに、身を震わせたものです。
とはいえ普段は自給自足を旨として、つつましく過ごしてきたのです。

結局、最後まで、そんな流れでしたね。
けれどわたしのお城らしい、とも思います。
最初から満たされることは求めていないから。
だからこそ、稀に下賜される佳肴で、飛びはねるほどに喜ぶのです。
その貴重なうつくしいものを、少しずつ、少しずつ、頂きます。
とびきりのチョコレートを、毎日一粒ずつ味わうように。
まるで噛み締めるようにして。

決して豊かな土地ではなかったけれど。
わたしはわたしのわたしだけの荒野を愛しておりました。

おもちゃで、積み木で、きのこな我が家

昔話をいたしましょう。
さまよいさすらい辿り着いた空き地へ、最初の柱を立てようとした日の。


ゼノ、というジャンルの中でも。
接触者対存在、フェイエリィというものは、決して主流ではありません。
今はそうでもないのやも、しれませんけれど……。
冷や飯を食い続けた時期は、それなりに長い気がします。
とはいえ、わたしも発売直後の空気は知らないのです。
ネット環境整ったのは、発売後一年以上経ってからでしたので。
絶頂期の世論（世論……？）は想像するしかありません。
が。薄々、察することはできます。
ネットの反応は分からずとも、ゲーム誌での反応は見ておりました。
ありがとうザプレ。ありがとう箱えれ、そしてゼノリス……。
でも百人委員会の暴論な輩はいまだに恨んでおります滅びよ☆

そして、一年少し遅れで覗いた、ネットに溢れるゼノギアス感想。
フェイとエリィの扱いは、まあ、ひどいものでした。
エリィに対する批判も多かったですが、フェイのも酷かった。
丁度、FF7の後ですしね。
裏FFという（不本意な）肩書きもありましたし。
クラウドから続けてのネガティブ主人公、というような論評。
当時のわたしはそれらの意見にとても衝撃を受けてしまいました。
わたしがああもうつくしくいとおしく感じたものがこんな、と。
ああ、今ならにこにこしながら聞き入れて「そうですか、生爪剥がれろ」
って返せますので、だいじょうぶです。もえぎさんちょうおとな。
のんきな話なのですけれど、わたし最初。
フェイエリィサイトが二百くらいあると思っていたのですよ。
あんなにうつくしいものだから、きっと誰もがすきなはずと。
とんでもなかったですね。

それでも、素敵なサイトさんはありました。
数の多寡は問題ではありません。
接触者対存在好き界隈は、今も昔も一騎当千が家風にございます。
（勿論、個人的見解です）
メインで取り扱わずとも、理解を示してくださる方は多くいらした。
ノーガードネットサーフで放浪していた身が、どれだけ救われたか。
たくさんの方の善意や、厚意や、熱意に包まれて。
ああわたしもサイトを持ちたい、となったのです。
どなたかのお宅へお邪魔して、お話するだけではなくて。
わたしはわたしの家がほしくなりました。

そうして作りあげたのが、この小さなお城。
家具も、壁紙も、彩りも、みぃんなわたしが施工したもの。
地鎮祭も起工式も振り下ろした鍬も全部わたしの指でなしたこと。
楽しい、たのしい、建設工事でしたよ。

石ころであっても、硝子の欠片であっても

昔話をいたしましょう。
今も昔も変わらない、ふ、とした感慨を。


わたしは何かを残せたのでしょうか。
いえ。拙宅は、過去も未来も荒野の辺境で。
よそさまの華やかなさまや、賑わいとは縁遠い地にございます。
メインジャンルは一貫してゼノですしね。
ちょくちょく浮気もいたしましたが、根底は変わらず。
その上男女カプで。成人指定のものも一切ない。
メジャーという言葉の、対極にあるようなサイトです。
けれど、わたしは書き続けてきました。
わたしはわたしのお城でひとり、遊び続けていました。
そうして築き上げてきた、幾つもの、幾つものお話たち。
わたしの愛しい、もうすぐ消え去るものたち。
時折、訪れてくださった方々。
皆さまの中に、わたしは何かを残せましたか？

あと少しでなくなるもの。
遅かれ早かれ、いつかは忘れ去られていっても。
ほんの僅かであっても。何かを、名前のないものでも構いません。
『何か』を。残すことができていたら、わたしは幸福です。
ただ勿論、忘れて頂いても、問題ありません。
いつの日かきっと、必ず、そうなるものでしょうから。
とても傲慢な願いなのでしょうけれど。
残せていたらいいなあ、と。思います。

全身全霊で磨き上げたものもあれば、力及ばず荒削りのものもあります。
この程度のもの、と鼻で笑われるようなものも。
それでも全て、わたしの愛しいものなのです。
傍目には玉石混交でも、わたしには唯一無二な宝石のお城です。

彼らと、彼女らと、ふたりたち

昔話をいたしましょう。
わたしが何より愛するものを。


フェイエリィがすきです。
接触者対存在がすきです。
一万年の恋人たちが、多くのふたりたちが、すきです。
ああ、二十一年が経つといいますのに、まだ書き尽くせない。
いまだに抱くおもいは、二十一年前と同じ。
『あんなにうつくしいものをみて、なぜ、なにもしないでいられるの』
『もう一度、恋をしましょう』
『どうか一万年分の恋を』
特に一つ目。いやほんと、煽りとかではなく純然たる疑問です。
傲慢な意見だとは承知しておりますが、不思議でなりません。
ゼノギアスをプレイして。クリアして。
あれだけのものをみせられて、体験して、貫かれて。
なぜなにもしないでいられるの。
体外に何らかの形で吐き出さないと爆発してしまいませんか。
友人からは「本編でおなかいっぱいでは……」との意見も貰いました。
が。納得できません。できませんとも。
なにせ彼らと彼女らが通ってきたのは一万年の長い道ですよ。
ようやっと結ばれたとはいえ、欠落はあまりにも莫大なもの。
なんとかかんとか埋めたくなる、使命感のようなものさえ生じて。
わたしは書き続けてきました。
まだ一万年には、とても及びませんけれど。
ふふ。届く前に、わたしのお城のほうが終焉を迎えてしまいました。

覚悟、しておりましたのに。
わたしは最後の一人になっても良いと。
誰も彼もがジャンルを離れ、ゼノが遠くに過ぎ去って。
フェイエリィがすきだと声を上げる最後の一人になっても良いと。
最後のサイトになっても良いと。
それも全て消え去ります。

色んなものをつくりました。
つくっても、つくっても、あなたたちのくれたものにおいつかない。
書いても。縫っても。お菓子を焼いても。ちっとも。
ただ、わたしのお城が消えてしまった後も。
わたしはたぶん、つくりつづけているのでしょう。


あっ因みに近年ですと。
わたし大逆転裁判2で、爆発しそうになりました。
凄かったです大逆転2……アホみたいな勢いで猛然と書きましたもの。
腹の底から、危機感すら抱いて思いました。
「はきださないと、ばくはつしてしまう」と。
何が火種となって、導火線となって、引火してしまうのかはまちまち。
分かっていはいるのですけれど、ついつい求めてしまいます。
なぜかかないの、なぜつくらないの、さあうみだしてどうぞ！ と。
そんな、うみゃうみゃした願いや思いも皆、もうすぐ全て電子の塵。
なんだか結局なにを書いても、そこへ帰結してしまいますね。